098:賭け




それは、ほんの数時間前のこと。


「………じ、自習…?」
「だねー」


黒板に書かれた字を見て呆気にとられたままの、わたし。
平然としてる、クラスメイトの


「………ありえない」
「いや、ありえてるじゃん」


目の前に広がる光景を信じられない、わたし。
笑顔でツッコミを入れる、


「だって…だって、どうしてそんなこと分かるのよ!?
 さてはアンタ、先生の飲み物に毒入れたとか…」
「いーや?」
「じゃあなんで授業が自習になるかどうかなんて分かるのよっ!
 絶対イカサマだよ!決まってるっ…」
「イカサマなんかしてないって。
 …ま、どっちにしろ俺の勝ちは勝ちだろ。
 
放課後…第2教材室の前ね。待ってるから


絶対に負けを認めないわたしの耳元には、容赦ないの発言が残って。

そして…今に至る、ってわけだ。


現在時刻は4時半。場所は人通りのない教材室前。
逃げようと思えば逃げられるんだけど…そこまで卑怯な真似、したくないし。
まあ相手はだし、そんなメチャクチャな要求されることもないだろうしね。


「はぁ…」


思わず、ため息。
同時に昨日のとの会話が、頭の中に蘇る。


ー、賭けしよ、賭け。」
「賭け?」
「そ。明日ひとつでも授業が自習になったら俺の勝ちね?
 俺が勝ったら、は俺の言う事ひとつだけ聞くの。分かった?」
「はぁ?」
「その代わりお前が勝ったら何でもおごってやるからさ。どう?」
「えー…なんでもおごってくれるの?じゃあやってみよっかなー」
「そう来なきゃ!」


…あの会話さえなければ、わたしはこんな場所で不安そうな顔しながら突っ立ってなくてもよかったのに。
自分が恨めしいわ。


「あ、いたいた。ちゃんと来てたんだねー」
「一応約束じゃん?」
「律儀だなー、。」


不意にかけられた声に振り返ると、そこにいたのは案の定、
いつもどおりに制服を適当に着くずしたあいつは、特別美形ってわけじゃないけど
それでもなんとなく様になってるから不思議だ。
汚れたカバンを肩にかけてる、ダークブラウンの髪のあいつはいつもと全く変わらない。

…言う事聞け、なんていうから一体何言われるのかと思ってちょっと不安だったけど
そんな心配要らなかったみたい。だって、いつもどおりだし。


「で、言う事聞けってなに?」
「ああ…あれね。んー…そうだなー……」
「何?」


ちらっと辺りに目をやる
この時間は先生たち会議中だし、誰も通るはずがないんだけどね。
ふらふら廊下をさまよってたの視線が、不意にわたしに舞い降りた。


「…決めた。」
「何?」
「………あのさ、
「!?」


の雰囲気が、突然変わった。
いつものなんとなくダルそうなどこにでもいる高校生じゃない。
真剣な目。怖いくらいの。
両手が、わたしの肩を軽くつかむ。
至近距離にあるの顔。

…やだ、どうしたの、わたし?
なんか…ドキドキする………。



「!」
「はい、終わり。…いくら賭けの賞品ったって、いきなり唇にキスしたらマズイでしょ?」
「……!」
「あ、赤くなってる。」
「あ、当たり前でしょっ!こんないきなり……!」
「いいじゃん、ほっぺたにキスしただけなんだから」
「だけじゃないっ!!」


突然わたしのほっぺたにキスして、平然としてる
わたしは…多分、顔がすごく赤い。火照ってる。
それに混乱してる…どうして、どうしてはこんなことしたの?
からかうため?それとも、何?


「あーあー、そんなはずかしがらなくてもいいじゃん。ま、そーいうのも可愛いけど。」
「なんで…」
「え?」
「なんではこんなことしたの?」
「え?
 なんでってそりゃ…のこと好きだからだけど?」
「え……?」
「まさか気づいてなかったとか?…俺がに惚れてるって、クラスでも結構有名なのに」


さらっと、とんでもない事を言われて。
余計に顔の赤いのが収まらなくなった。


「そ、そんなの知らないっ」
「えー、知ってよ。てかさすがにキスしたら分かったでしょ?」
「………バカっ!」


もう、どうしてくれるんだ。
驚いてるのか嬉しいのか、わかんなくなっちゃったじゃない。
…そんなことをうっかり口走りそうになったわたしは、あわててそっぽをむいた。


その昔リクエストいただいて書いたお話です。
知らない、に対して「知って」って発言する人が書きたかっただけとも言う。
私の妹はその昔親に怒られたとき本気で「知って!」っていって親の怒りを萎えさせた伝説の持ち主です。

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