王子の生活



これでも神経質なほうだから、自分の噂ぐらいは把握している。
だから当然のことだって一笑に付す予定だった。
それが。
意外なことに。


俺は、彼女から寄せられた恐怖のにじむ愛想笑いに、割合本気で腹を立てていた。


「私ならきっと大丈夫だよ…何があってもくんのこと好きでいられるもん」
「…本当に?」
「うん。私は絶対、くんのこと裏切らない」


あなたの心の闇ごと愛するわ、みたいな陳腐な台詞。
そんなものにまたしても(ほんの数日とはいえ)揺らいでしまった自分に腹を立てる。
ネット上の日記で俺を「寂しがり屋の我侭坊主」なんて罵るような女だと見抜けなかったのがそもそもの失敗だ。
本人は俺に見つかってないと思っていたんだろうけど。
もちろん速攻で捨てた。
それでも腹の虫の収まらなかった俺は(もちろんこの短気が自分の欠点だってことは承知している)できるだけあの女の行動範囲から
離れた場所で手頃な女を探すために廊下を歩いていた。


たまたま見かけた「女」は、学校でも塾でも見かけたことがある奴だった。

特別頭がいいわけでもなく、顔も特別いいわけではなく、確か部活もやってないんだか幽霊部員だかそんな感じで。
正直目立たない人間だと思う。
性格的にも多分おとなしめで適度な友達付き合いがある程度だろう。
実際には塾も学校も同じだから行動範囲は似通っているはずなのに、特に目立つ話も聞かない。

ああ、でもそういう奴のほうが次に捨てたときの面倒が少ないかもしれない。

半分ぐらい自棄になってそんなことを考える。
少しからかってみて簡単に調子に乗るような女だったらさっさと帰ろうと決めて、俺はが一人でいる教室に踏み込んだ。
何気なさを装って、なれなれしく声をかける。
舞い上がるか俺のことを知らなくて首を傾げるか、俺はそんな反応を予想していた。
…だから、自分でも意外なほどショックを受けた。
今まで口も利いたことのないような人間に、恐怖とそれをごまかすような愛想笑いを向けられたことに。


たどたどしくてぎこちない返事。
どう考えても俺を恐れて機嫌をとろうとしている。
考えてみれば、行動範囲が似ているってことは俺の噂(それも、俺が捨てた奴らが流した噂)ぐらい知っていて当然だったんだけど。
ほぼ面識のないような奴に露骨に恐怖を示されれば、それは当然いらつく。
露骨に、というかむしろ、自分の感情を隠すことが上手にできないらしい。
少しからかうとものすごく困惑して、あわてて返事を返す。
…悪く言えば、単純。よく言えば、純粋。
今まで俺がしてきたことに比べれば随分と甘いレベルのからかいにどう対処していいか分からない、
悪ふざけを繰り出しているうちに、ふと頭に浮かんだことがある。

これくらい馬鹿な女なら、上手くしつければ俺の思い通りの人形になるかもしれない。

別に俺は支配欲が強いわけでもなく、女は少しくらい馬鹿なほうがいいなんていう時代錯誤な考えの持ち主でもない。
若干世間一般に言われる倫理観とかそういうものには欠けているかもしれないが、狂気にとりつかれていることもないだろう。
だから、彼女に近付いたのは完全にこの間の女に知った振りをされたことに対する腹いせでしかなかった。
後先を考えない、恐らくはまた数日で飽きてしまうような遊びとして。
俺はに奴隷にならないかと持ちかけた。


「俺の奴隷になりたかったら、明日もこの時間まで教室に残ってて」


彼女はきっと明日、一人で教室に残っていることだろう。
俺には確信があった。
本気なんて出さなくても、は簡単に陥落して俺の奴隷になることを選ぶだろうと。



「…見てろ」



呆然とする彼女を教室に放置したまま、俺は塾に向かう足を速めた。


途中まで書いた時点でじゃぬだるく様のぶらっくじゃっくなる曲を知る。
とたんに相手キャラのイメージソングに決定。

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