094:夏休み
勉強なんか、大ッキライ。
早起きなんか、めんどくさい。
クーラーのきいてる、涼しい部屋で
ゆっくりテレビが見られるなんて、最高じゃん。
今年は宿題も少ないし。
受験も関係ないから復習なんかしなくてもいい。
最高の夏休み…の、はずなのに。
なんか、足りない!
そんな気がし始めたのが、8月の最初の月曜日。
「じゃあ、お昼適当に作って食べてちょうだいね」
親は共働きだから、昼間は家にアタシ一人っきり。
「ごめんねー、うちら明日から合宿なんだー」
仲よしの友達は部活の合宿。
…そう。
、16歳。
アタシ、ハッキリ言ってヒマ人です…!!
ピピ…
お気に入りの着メロの最初の方が流れて、ケータイにメールが来たのを教えてくれた。
誰だろう。
麻奈美たちは合宿中ケータイ禁止だって言ってたし…
「…?」
メールを開いて、アタシは首をかしげた。
確かににはアドレス教えたけど…、普段メールするほど仲良くはない。
それがどうして「今電話していい?」なんてメール、来るんだろう。
「いいよ。どうせヒマだし」
って返信して、1分もたたないうちにから電話がかかってきた。
「よっす、ヒマ人」
「うるさいわねー、だってヒマしてたんでしょ?」
「まーな。あ、でさー。明日登校日じゃん?」
…忘れてた。
ウチの高校、登校日があるんだ。
麻奈美たちは合宿で山梨にいるからこれないって言ってたけど。
「うん、そーだけど?」
「明日ってなんか提出物あったっけ?」
アタシは答える前に、思わず笑っちゃった。
「あ、なんだよお前今笑っただろ?」
忘れ物大王のが、提出物のこと気にしてるなんて珍しい。
「だってさー、いつも提出物なんか全然気にしないじゃん?」
アタシがそう言うと、はちょっと怒ったような声を出した。
「うるせーな、俺二学期から生まれ変わるんだよ。優等生。カッコイイだろ?」
「マジで?っていうか2学期からじゃないの?
まだ夏休みじゃん」
「いーの。夏休みの提出物も2学期の成績にはいんだから」
ホントに珍しく、がマジメになってる。
だって忘れ物大王にして自称赤点予備軍のが、提出物気にして電話してくるなんてさ。
「えーとね、明日提出なのは英語のプリントだけだよ」
「そっか、サンキュー。」
そこで一度、会話が途切れた。
…なんだろう、このヘンな間は。いつものなら、さっさと電話切っちゃいそうなのに。
「もしもし?」
不思議に思って、声かけてみる。
「あー、さぁ。明日登校日のあと、ヒマ?」
「え?」
「あのさ、明日ヒマなヤツに声かけてみんなで遊び行こうと思ってんだけど、
も来ない?」
ちょっと、意外だった。なら、男子だけで盛り上がるほうが好きだと思ってたから。
「いいの?」
アタシが確認すると、がなんだかちょっとマジメな声で
「当たり前だろ。他の女子にも声かけていいけど、
…俺が誘ったって、バラすなよ」
っていったんだ。
「どうして?」
アタシが即聞き返すと、が電話の向こうで大きなため息ついた。
「、お前ってホント鈍い!なんでこんなに俺が一生懸命なのに気付かねーんだよ!」
…どうしたんだろ、。最近毎日暑いから、おかしくなっちゃったのかな。
あ、アイツが変わってるのは前からか。
「…一生懸命って、何が?」
アタシがもう一度質問すると、はまたため息をついた。
何が言いたいんだか全然わかんないんだけど、きっと今頃は電話の向こうで頭を抱えてるんだろう。
ホント、ってヘンなヤツ。
「いいか、。よーく聞けよ?」
「なになに?」
「俺は、1学期からずっとの事好きだったの。だからわざわざ口実作って電話したりしてんの。分かった?」
「へえ、そうだったんだ…って、えっ!?」
頭、真っ白。
今、…何言った?
1学期からずっと、どうしたって?
「え、ちょ…ちょっと、今なんて…」
「バカ、何度も言わせんな! の事が好きだって言ったの!もう繰り返さねーぞ」
クーラーが効いて閉め切った部屋の中に、
急にまぶしい太陽が飛び込んできたような気がした。
「…ありがとう!すっごく、嬉しい!」
アタシの声にがちょっと怒ったような声で言った。
「彼氏にむかって苗字で呼ぶのやめろ…」
ああ、分かった。
アイツの怒ったような声って、いつも照れ隠しだったんだね。
すました顔して、ホントはすっごく照れ屋さんなんだね。
「うん、分かった…って呼んでいいんだね」
「当たり前だろ」
。
アタシの本当の夏休み、今から始まるんだね。
「、やっぱり明日他の女子呼ぶな」
「え?」
「二人だけでどっか行こう」
「それって、デートって事?」
「言わなくても分かるだろ!」
の照れた声。
そんな恥ずかしがり屋さんなところも、すごく好き!
アタシは笑顔で、カーテンを開けた。
まぶしい太陽。
どこまでもつながってる、大きくて青い空。
それに、。
今年の夏休みは、アタシにとって…完全無欠なんだ!!
差し替え候補。
あれだ、古い作品は口調というか文体というかそういうものが辛い。
改変したところでなおらなそうなのでいっそ削除で。