ソノカタワラデ。




「…もう、わかんないんだもん。好きかどうかなんて」
「…紗織…。」


目の前で疲れたような表情を浮かべる、クラスメイトの紗織。
付き合って3ヶ月目は倦怠期ってよく聞く話だけど…、紗織も見事に例外じゃないみたいだった。
告白する前はあんなに楽しそうに、時々顔を赤くしたりしながら今の彼氏の話をしてたのに…、
それが今じゃ、メールを返すのさえ面倒って口ぶりだ。
いったい何が、こんなに紗織を変えちゃったんだろう?


「…少し、距離おいてみたら?私にはよく分かんないけどさ」
「…うん…」


元気のない、紗織。
あんなに幸せそうだったのに…。




「なーにヘコんじゃってるの?」
「あ…君か。別に大したことじゃないよ。」
「でも元気ないよ?」
「別に私は平気だよ。それより紗織が…」
「ああ…彼氏と上手くいってないの?紗織ちゃん。」
「みたい。」
「そっか、紗織ちゃんの彼氏独占欲強いとかって話だしね」
「うん、なんか部活と俺とどっちが大事なんだ、みたいなこと聞かれたらしいよ」


昇降口でたまたま会ったのはっていうクラスの男子。
優しいし誰とでも仲良く話すから、女子の間では結構人気がある。
確かに…他の男子みたいに苗字の呼び捨てじゃなくて名前にちゃん付けで呼んでもらえると、
少しだけ嬉しかったりするんだけど。


「難しいよねー、恋愛って。ちゃんもそう思わない?」
「…うーん…あんまり恋愛とか関わった事ないからわかんないけど、今の紗織見てるとそんな気がする…」
「あれ、ちゃん彼氏とかつくらないの?」


意外そうな表情の君。
…私に彼氏がいないのがそんなに意外なんだろうか。
どう見たって、そんなにすごくモテる子じゃないのにな。


「相手してくれる人もいないしさ、たとえ付き合っても紗織みたいになっちゃうのかな、って思うと…」


私の言葉が全部終わらないうちに、君の大きな手が私の肩をつかんでいた。
いつもの優しい笑顔のかわりに、真剣で、なんだか少し切なそうにも見える表情を浮かべて
君は私をじっと見ている。


「…ねえ、ちゃん。俺は3ヶ月やそこらでずっと好きだった子を飽きさせない自信、あるよ。
 紗織ちゃんの彼氏みたいに束縛するつもりもない。
 だから俺と付き合って。」
「え…」


あまりにも唐突過ぎる展開に、頭がついていけなくて。
間抜けに聞き返した私を、君が優しく…優しく、抱きしめた。


「!」
「…嫌なら逃げてくれればいい。でももしちゃんが俺の事少しでも好きになってくれて、
 付き合ってみようって思ってくれるなら、逃げないで」
「それはっ………逃げないけど、でも場所が!」


誰かに見つかったらどうしよう!
そんな気持ちで一杯になる。
簡単に抜け出せるくらいそっと抱きしめられたまま慌ててわたわたしてる私の姿はきっと人が見たら笑えるだろう。
でも昇降口の下駄箱の前で、よりによって女子から人気のある君に抱きしめられてるなんて!
なんとか君の方から解放してもらおうとして説得を試みたら…不意に、君がいつもの優しい笑顔を見せた。


「…ありがとう、ちゃん。逃げないでくれて」
「あ…」


君が私を解放してくれた瞬間、なぜか私は「名残惜しい」って思ってしまったみたいだった。
ほんの少し前まで、恋愛の対象としては意識してなかったのに。
今はもう…ダメみたい。
目が合うだけでも、ドキドキする。
誰かに見つかるのは恥ずかしいけど、でももっと抱きしめていてほしい気がする…。


「…君」
でいいよ」
「……………
「うん。…今から、俺の彼女だからね、。…よろしく」
「こちらこそ…」


紗織には少しだけ申し訳ない気がしたけど。


まるで魔法みたいに突然訪れた【恋愛】を、…私は、試してみることにしたんだ。


…リハビリで書いてます。最近ずいぶん書いてなかったもんなぁ…。
束縛の加減って難しいよね、って話を書こうとしたら話がずれました。
しかもどうやら甘さ加減が全く分からなくなってしまった模様です。参った参った。
今現在せっかくBBSにリクを頂いているので、ちゃんと書けるようになったらやりたいのですが…
この撃沈具合だと、どうしたものか…(遠い目

読んでくださってありがとうございました。
ちなみにヒロインの友人の名が黒川の本名だったりするあたりはスルーでお願いします(笑

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