友達以上 恋人以下。
「明日さぁ、試合なんだけど」
「ああ、そうだったよね」
いつもと同じ、放課後の光景。
あたしも、も自転車に乗ってて。
くだらないおしゃべりをしながら、途中まで一緒に帰る。
別に幼馴染じゃないけど、去年クラスが一緒になってから、なんとなく
意気投合しちゃって。
「、見に来る?」
「いいよ。そのつもりで予定空けといたし」
「よしよし、いい子いい子」
「子ども扱いすると、差し入れ持ってかないよ?」
「いや、持ってきてだし」
「えー、どうしようかな?」
「こないだのクッキーでいいからさ」
「だってクッキーはぱさぱさするからやだって言わなかった?」
「じゃ、飲み物も追加って事で」
「のワガママー。」
「いいの、だから」
「何それ」
今はクラスも違うし、部活が同じわけでもないんだけど、
帰りはいつも一緒。
なんとなく、自転車置き場で待ち合わせが暗黙の了解になってるんだ。
今のクラスの子には、つきあってるの?って聞かれるけど。
あたしとは、つきあってなんか、ない。
たしかにあたしは、のことが友達を越えるくらい好き。
たぶんも、あたしのことを友達以上に思ってくれてる。
でも。
どっちも告白しなかったから、結局微妙な関係のまんま。
「そういやさぁ、俺たちって結構微妙な関係じゃない?」
あたしが考えてた事、言い当てたみたいに。
唐突にが言った。
「俺はお前のことって呼んでるのに、お前は俺をって呼ぶし。
まわりの奴みんな、俺たちつきあってると思いこんでるし。」
「そうだよねー。あたしもいつも聞かれる。
と付き合ってるんでしょ?って。
どっちかっていうと疑問文じゃなくて付加疑問だけど。」
みんな、あたしたちは恋人だって思ってるけど、
そんなにロマンチックな雰囲気でもないし、マブダチって感じしかしない。
「もしかして俺たちってさ、友達以上恋人未満、って奴?」
あたしは自転車を止めて、を振り返った。
さっきまであたしの影をつくってた太陽が目に直撃して、まぶしかった。
「ううん。友達以上、恋人以下。」
はしばらくあたしの言葉の意味を考え込んで、それから、
ふっと笑った。
「微妙だよな。俺たちにぴったりかも」
「でしょ?」
そう。
ただの友達じゃないけど、恋人になってはない。
だけど…恋人に絶対ならないなんて、言いきれないから。
オレンジ色の光を体いっぱいに受けながら、がつぶやいた。
「ま、俺はどっちでもいいんだけど」
見慣れたの姿が、夕焼けの光に包まれて、すごくまぶしく感じる。
なんだか、いつもよりがカッコよく見えて、急に、ドキッとした。
「俺はさ、がそばにいてくれればどっちでもいいんだよね」
ドキドキ、音を立てる心臓がなんだか悔しくて。
あたしは、から視線をそらした。
「そんなの、あたしだって同じだし」
オレンジ色の光が、あたしの心の奥の奥まで染め上げていった。
100ヒット記念(111ヒット自爆記念とも言う)の相手自由ドリームです。
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日ごろのご愛顧に感謝をこめて。 黒川 零