031 夢から覚めても

夢から覚めても
あたしのそばにいてください…



さん、さん」

放課後の教室に、誰かの声が響いてる。

「おーい、さんってば」

低くて耳に心地いい声は、たぶん、あたしを呼んでいる。

「寝てんの?さん」

そして、その低くて優しい声は、たぶん、あたしの良く知ってる人で。

「風邪ひくよ」

あいつが、机に伏せたあたしをみて困ってる情景が、目に浮かぶ。

なのに。

さん、風邪ひくからおきないと…」

あたしは、くんを困らせたいがために、目を覚まさないんだ。




「…おい、



とつぜん、くんがあたしの名前を呼んだ。

ふだん、絶対苗字でしか呼んでくれないのに。

どきっとしてはね上がりそうな心臓を、必死で押さえつける。

だめよ、

はいま、寝たふりをしてるんだから。

こんなところで反応したら、ばれちゃうでしょ?

一生懸命、自分に言い聞かせて。

あたしはまた、寝たフリを続ける。

…起きてくれないと、俺が困るんだけど」

ああ、そうだ。

くんは整備委員だから、あたしが帰らないと戸締りが出来ないんだね。

頭の片隅では、そう思いながら。

あたしはしつこく、寝たフリを決め込んだ。

「好きな奴が目の前で寝てて、理性保つのがどんだけ大変か知らないだろ…」




え。




いま、くん、なんていったのかな。

あたしったら、いったいどんな聞き間違いをしてるんだろ。

それとも、実はあたし寝たふりしてる夢をみてました、ってこと?






「あー、もう無理。起きないお前が悪いんだからな」


あたしが身のふり方を考え込んでいる間に、もういちど君の声がして。

次の瞬間。

あったかくて、やわらかい何かが…あたしの頬に触れた。

え。

もしかして、もしかすると…

「嘘!?」

あたしが飛び起きると、そこには顔を赤くしたくんが立っていた。




「あ、さん…起きた?」

ばつが悪そうな、くん。

…ってことは、さっきのは…夢じゃ、ないの?

くん…今、あたしに何かした?」

寝起きだからか、緊張してるからか、声がかすれる。

でもくんも、あたし以上にあわててるみたいだった。

「バカ…そんな質問普通するかよ」

「だって…さっきのは、あたしが寝ぼけててみた夢かもしれないじゃん…」

くんが、あたしに顔を近づけて、いつもより少しだけうわずった声で言った。



「夢じゃないよ」



その声のかすれ具合も。

あたしの肩にのせてる、大きな手も。

優しい瞳も、…今度はあたしの唇にふれた、やわらかい唇も。

くん…あたしね、くんのこと好きなんだよ」

「ホント?」

「ホントだよ。だから…」



消えてしまう夢じゃなくて。

ずっとずっと、そばにいてね…。


うーん…なんとも(汗
この間寝てもないのに何度男子に呼ばれても気づかなかったなんて、
口が裂けても言えやしません。。

↑最終的に肩叩かれるまでボケッとしてました。授業中だろ私!!

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