夏祭り極短話4
※恋人未満。
クーラーのきいた店内、BGMは聞きなれたJ−POP。
別に店に変わったことは無いはずなのに、テンションの高い自分がいる。
となりに好きな人がいるだけで、通いなれた百貨店がこんなにクリアな世界になるなんて。
「うーん、俺女の子の水着選んだことなんかないからセンスないと思うけど…」
「いいのいいの、一緒に見てまわってくれれば」
どうせ一緒に行くんだから見てて印象いい奴のほうがいいじゃん、なんて強引な理屈を並べると、
彼は案外あっさり同行を承諾してくれた。
カラフルな水着の並ぶ中を好きな人と一緒に選びながら歩けるなんて、それだけでもう幸せを満喫してる感じだ。
クラスのメンバーで海に行こうって言い出してくれた友達にも、今日この時間帯に同じ店の中にくんが居合わせてくれた偶然にも感謝したい。
「ね、何色がいいかな?」
「うーん、ピンクもいいと思うんだけど、赤とかどうかなぁ」
「赤?」
「これ…とか」
くんが指差したのは、赤に白の水玉のビキニにスカートのついた水着だった。
普段の私なら、ちょっとためらって手が出ないような、派手めのデザイン。
「ちゃんに似合う…と、思うんだけど」
「ほんと?」
「うん。個人的にちゃんがこれ着てるのみてみたいだけかも知れないけど」
そんなこと言われたら、もうこの水着が気になって仕方ない。
ご試着なさいますか、って顔を出した店員さんに水着を預けて、くんに笑顔を向けた。
「じゃ、試着してくるから待っててね?」
「あ、うん。」
試着室に向かってついていく私に話しかける店員さんの言葉がくすぐったい。
一緒に水着見に来たから、恋人だって勘違いされちゃったよ。
ほんとにそうなったら、いいのに。
水着売り場にあふれる色に負けないほど、私の心の中は鮮やかに弾んでいた。
夏祭りと勝手に題してすごく短いお話をさくさくアップしようじゃないかという企画です。4本目。
夏休み終わったら過去ログ部屋に移送予定。