夏祭り極短話1
※恋人設定
「あっっつーーーーーーーいっ」
叫ぶというほど覇気もない。どちらかといえばうなり声。
そんな情けない声を上げてベランダの手すりによりかかったは、直後ぐえ、というみっともない声を上げる羽目になった。
背中一面にかかる重み、そして体温。
ただでさえ暑いと主張していたはずなのに、それを増すような仕打ちをしてくる奴は、ひとりしかいない。
「ちょっと!重いし暑いってば。どいてよー」
「え、なんで?」
「だから暑いって…」
「え、俺はの日よけになってあげてるだけだよ?」
「重いしくっつかれると暑いって!」
しらっと答えたのだらりと垂れた上体を何とか押し返そうとして背中に力をかける。
体格差なのか、それともがわざと抵抗しているのか、二つの身体が離れる気配は無い。
薄いシャツ越しに感じるの胸板もじっとり汗に濡れているのに、自ら体感温度を上げた張本人は涼しい顔をしている。
「ちょっと、どかないと怒るよ?」
「それは困るなー」
「じゃあ早くどいて!」
「…仕方ないなぁ、じゃあこれで許してあげる」
「はぁ?」
言うなりの両手がの肩を掴んで、突っ伏していたベランダの手すりから引き離した。
それからくるりとの身体を自分のほうに向き直らせる。
そして。
「手数料。」
「きゃ!?」
にやり、と笑ったの動きが意外に俊敏だったせいで、はその両手を防ぐことに失敗した。
の胸をむにゅ、と音がしそうな動きで揉むことに成功したは、制裁をくらわないうちにさっと手を離して部屋へ戻っていく。
「ちょっと待ちなさい!」
唐突なセクハラに怒ったは、部屋に入ったを追いかけることに集中していたせいで気付かなかった。
がおかしな方法での思考を暑さからそらすのに成功したことに。
夏祭りと勝手に題してすごく短いお話をさくさくアップしようじゃないかという企画です。1本目。
夏休み終わったら過去ログ部屋に移送予定。