090:働き者
「おーい、日直、黒板消せー」
国語の今西が教壇でわめきちらした。
うるさい。
「なんだ、日直いないのか?」
そういえば今日の日直はこの俺、だった気がする。
なんでよりによって俺なんだよ。
俺がいやいや黒板の前まで行って黒板消しを手に取ると、今西が肩をすくめた。
「遅いぞ。いつもの日直は先生が来る前にちゃんと黒板消しておくだろうが」
「あーはいすいませんでしたー」
「なんだそのやる気のない返事は。…まあいい、早く消せ、授業はじめるぞ」
言動一つ一つが癪にさわる今西を一瞬睨んで、俺は黒板を消し始めた。
もちろん面倒な授業の時間が少しでも減るようにゆっくり、だ。
こいつは、日直がいつも丁寧に黒板消してるとでも思ってるんだろうか。
だいたい俺のクラスじゃ日直が黒板なんか消したためしがない。
真面目な女子かなんかが必ず消しておいてくれるから日直の仕事じゃないようなもんだ。
それなのに今日に限って黒板が消えてないってどういうことだよ。
…いつも黒板消してる奴、俺に恨みでもあるんだろうか。
「あーあ、なんで俺なんだよ。いつもなら黒板誰かが消しといてくれるのに」
「怒んなって、。今日はしょうがねぇじゃん。」
「なんで?」
「だって、休みだろ?」
「?ああ…いつも黒板消してんのってあいつなの?」
「知らねーの?あんなに一時間も欠かさずちゃんと黒板消してるのに?
もうちょっと周り見ろよ、。」
「余計なお世話。」
隣の席の奴が言うには、今日学校に来てないが、いつも黒板を消してるらしい。
…休みなら黒板消せないのも無理はないと思う。
でもなんでよりによって俺が日直の日に休むんだよ。
俺がため息をつくと、隣の奴がまた話しかけてきた。
「それにしてもどうしたんだろうなぁ。遅刻も早退も一度もしてなかったのに。
具合悪いのかなー。…心配だなぁ、俺の将来のお嫁さん候補なのに」
「はぁ?」
「いや、ああいう働き者の子と結婚したら楽そうじゃない?だから今のうちからなかよくしとけば…」
「バーカ」
俺は隣のバカを小突いた。
「そんな不純な動機で結婚する奴がいるか。
相手に対して失礼だろ。」
「うわー、が言うにしちゃ意外なセリフ。」
「どこがだよ。俺はただ結婚したら家事は分担するのが普通だって言ってんだよ。
にまかせっきりにするとか、時代遅れだし」
「はいはい、よーく分かった、慶田城、」
俺がそう言うと、教壇の方で今西がなんか言いはじめた。
良く見たら周りの席の奴らもニヤニヤしながらこっちを見てる。
何が言いたいんだ。
「には理解ある夫になれそうなと結婚するようによーく言っておくから、お前らは授業を聞け。」
「はぁ、なんで俺がと結婚すんですか?」
「今自分で言ったじゃないか、と結婚したら家事は分担するって」
クラス中が爆笑した。
隣の慶田城まで、笑ってる。…お前のせいで俺は笑われてるんだ。どうしてくれるんだ。
「何笑ってんだよお前」
「いや、だってお前がと結婚するようないい方するから…」
「なんで俺が!」
「おめでとう」だの「結婚式は呼んでね」だの、「と幸せにね」だの
クラス中から訳の分からない事を言われて、俺はどうしていいか分からなかった。
…でも、正直悪い気分じゃなかった。
なあ、。
明日お前が学校来たら、お前すっかり俺の将来の奥さんってことにされてるかも知れねぇぞ。
お前が嫌じゃなきゃ、俺はお前と結婚してもいい気がしてるんだけど。
どうする、?
お前の返事、…楽しみでしょうがないんだけど。
久々の男の子視点でなんだかよく分からない話になってしまいました。
さん一度も出てきてません。ごめんなさい;;