Lift The Wings



畜生なにもかも上手くいかない。
不機嫌な顔でつぶやいて、は教室を出た。
生徒は宿題をやってこないし放っておけばすぐ問題を起こすし、午後は例によってしがらみだらけの会議があるし、
家に帰ったところで誰もいないのだから癒される術も無い。
仕事にかける思いは人並みを上回っていたはずだったのに、最近では授業さえも面倒だと感じてしまうことがある。
しっかりしろと自分に言い聞かせようにも、どんよりとした6月の曇り空が気力をそぐ。
はやく金曜日まで過ぎてしまえばいいのに。
お世辞にも前向きとはいえない考えが頭をよぎり、。
今の自分は昔一番なりたくなかった「つまらない大人」そのものだと気付いたは一人で苦笑する。
いつから与えられたシステムに飲み込まれたように機械的な毎日を過ごすようになってしまったのだろう。
そんなことを自問しながら廊下を歩いていたの肩が唐突に叩かれる。


「先生!」
「…なんだ」


振り向くと、憂鬱な空模様とは対照的な無邪気な笑顔。
年の割りに幼い外見の生徒は、間違いなく自分のクラスの教え子。


「先生、いいものあげますよ!」
「なんだよ…ゴミだったりしたら怒るぞ」
「違いますよ!ほら!」


生徒の差し出したそれを片手で受け取って、はその複雑に畳まれた紙切れを開いた。
中には丸まった文字の羅列と四葉のクローバーのイラストが並んでいる。


<先生なんか今日元気ないですよ?元気だしてください!
 もっと幸せそうにしててほしいから、四葉のクローバーあげます♪>


表情を変えずにもう一度紙切れを畳んだを生徒が覗き込んだ。
ほら、ゴミじゃないでしょ?と得意げに言う生徒に、は悪戯めいた笑顔を見せた。


「ほう、先生にラブレターか。なかなかやるな、マセガキ」
「ちょ、マセガキって失礼ですよ先生!
 それにラブレターなんかじゃないです!勘違いしないでくださいよ?」
「へえ、おまえツンデレだったのか」
「違いますって!」
「はいはい、照れない照れない。
 おまえのラブレターはしっかり受け取っておくから」
「だからもう!」


からかわれて口を尖らせるが本当はこの会話を楽しんでいることくらい、には当然分かっていた。
そして、他愛無い会話で担任を元気付けようとする小さな思いやりにも勿論気付いていた。
だから、冗談をとばして笑顔を見せることを感謝の言葉の代わりにした。
くじけそうだった自分をこうも自然に励ましてくれる可愛い教え子がいる。
それだけでも、やっぱり教師の道を捨てないでよかったと思えるのだから現金なものだ。


「じゃ、私お昼食べてきます!先生もしっかり食べないと倒れちゃいますよー」
「そうだな、しっかり食ってにもう1枚ラブレター書かせるくらいカッコよくならないとな」
「まだ言いますか。」


笑顔で去っていったを見送ってもう一度歩き出したの足取りは先ほどよりも軽かった。
好意とも厚意ともつかない純粋な思いやりのこもったクローバーが、の中に小さな晴れ間を作っていたからだ。



その昔書いたやつの完全リメイク版。昔あった要素を削除したら雰囲気ごと変わった。

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