007:妖精




妖精さん。

一般的に(かどうかは議論の余地がものすごくあると思う)、現実逃避のお供にするには適した存在。
終わらない宿題を妖精さんがいつの間にか終わらせておいてくれることを信じて寝てしまう、とか
片付けをさぼっている散らかった部屋をある日突然妖精さんがきれいにしておいてくれるんじゃないか、とか。
私の友達の間では、現実逃避をしていることを「妖精さんが見えてる」なんて言い方をしたりもする。
…で、だ。


「おーーーい、?」
「あ、だめだこれ。もう完全に向こうの世界にとんでる」


友人が散々口にしてるのが、私の名前。
…つまり。

今この瞬間、妖精さんが見えちゃってるのは…他でもない、私だったりする。


「はぁ…」
「いや、気持ちは分かるんだけどさ。とりあえず落ち着きなって」
「そうだよ、それはさすがに確率低すぎるもん」
「あの先生のどこがいいんだか」


恋する対象を(たいしたレベルではないけど)低評価されて、私は友人の一人をきっとにらむ。


「なんか言った?」
「あ…言ってないっす」
「(…、ほんとにすごいなぁ)」
「先生のこと悪く言わないで?ね?」
「…、目が据わってる」


冗談めかした会話の端々に「先生」への恋心みたいなものを上手にちりばめれば、
案外周りのことに関心を持たない私の友人たちはすっかり騙されてしまう。
私が「先生」に憧れのような恋を抱いているっていうのは、友人たちから徐々に広まって、半ば公然の事実になっている。
ちなみに、当の「先生」はこの騒ぎが事実無根だって事を知ってる数少ない人の一人だったりする。
…噂の被害をものすごく被ってるにもかかわらずあっさり「別に構わないよ」っていって流してくれる、大物。
それどころか、私に協力してまでくれるらしい。
恋愛対象としてみる気はまったくしないけど、良い先生だと思う。


…それで、私がここまでして何をカモフラージュしたいかというと、だ。


「…もしもし、?…ああ、今日もお疲れ様」
「あはは、さすがにもう慣れちゃった」
「でも、俺のために頑張って嘘ついてくれた。…ありがとう」
「そんな…だって、これくらいのことでずっとくんと一緒にいられるなら。」
「…ありがと。大好きだよ、



私の恋人であり、世間一般には…有名人と呼ばれる類の人。
学校が同じでなければ私なんか話しかけることすらできないような雲の上の人…。
当然、くんに恋人ができたなんて知られたら学校中も報道陣の人たちも黙っちゃいないわけで。
だからこうして、妖精さんの力で誤魔化し続けてるわけだ。


。」
「なに?」
「…の声聞いてたら会いたくなった。
 俺のせいで要らない演技させちゃってるんだし…お礼ににキスしたい」
「もう、電話で恥ずかしいこと言うの止めてよね…私すぐ顔赤くなるって知ってるくせに」
「知ってて言うんだよ。照れてるも可愛いから」
「もう、くんの馬鹿」


電話越しのこの甘い時間のためなら、私はいくら嘘をついたって良い。
偽の好きな人だって作れるし、見えてない妖精を自分の周りに作り出すことだってできる。
いつかちゃんと、堂々とくんの隣を歩けるときがくるまで。


お願い、妖精さん。


発達途中の私たちの恋、上手に隠して見守っててね。






あまりに以前のやつが恥ずかしかったので差し替え用に書きました。
昔に比べてだいぶさっぱり志向になった様子。

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