008:茶封筒
何の変哲もない封筒が、一枚。
アタシの手の中に収まっている。
「ー、何持ってんの?ラブレター?」
隣の席のに声をかけられて、アタシは振り返った。
「違う、三行半」
「はぁ!?」
言うまでもないけどただの高校生のアタシが結婚してるわけはないから、
離婚届なんか持ってるわけがない。
もちろん、封筒の中身は空。
「お前だれと離婚すんだよ!」
思いっきりツッコミいれてくれたを指差して、アタシはイタズラっぽく笑う。
「と離婚すんの」
「はぁ?」
なんで俺なんだよ、って首をかしげるに、アタシは教卓の方を指差してみせる。
「ほら、今日席替えじゃん?だからともお別れでしょ。
だから、三行半」
教卓では、学級委員が席替え用のクジをつくってる。
は口をぽかんとあけてそっちをみて、それからしばらく考え込んで言った。
「あのさ、。
お前って俺の事好きなわけ?」
「さあねー」
「さあねじゃねーだろ。どっちだよ?」
「じゃ、好きってことにしておいてあげる」
アタシの要領を得ない答えかたを聞いて、が頭を抱える。
…でもこんなふざけあいが出来るのも、今のうちだけ。
「微妙なこと言うなよ!…あ、、順番。」
「あ、うん」
に言われて、アタシは席替えのクジをひきにいった。
手には茶封筒を持ったまま。
「ー、何番だった?」
「え、アタシ27番。は?」
どっか遠い席に行っちゃったんだろうなって、落胆しない覚悟を決めてから
アタシはに問いかけた。
「俺は…っと、26番。なんだよお前、また隣じゃん!」
「ホントにー?」
「なんだよその嫌そうな顔ー。喜べ」
ホントは、かなり嬉しい。
だって奇跡じゃん?
好きな人と、二度も連続で隣の席になれるなんて。
…素直じゃないアタシが、まさか嬉しいなんて言えるわけはないんだけどさ。
微妙な表情のままのアタシに、が言った。
いつもアタシがするような、イタズラっぽい笑顔で。
「これじゃ離婚できねーな、?」
それからはアタシの手から、空っぽの茶封筒を取り上げた。
「なんだ、なにも入ってないじゃん。
最初から離婚する気なかったくせに。
…ま、いいや。明日はちゃんと婚姻届入れて持って来いよ」
「バーカ。」
「お前に言われたくねーな!」
「残念でしたー、アタシのが成績いいもん」
「うっわムカツクー」
今はふざけあうだけのアタシたちだけど。
こんな奇跡が起こるなら、少しは信じてもいいよね?
今日の帰り、市役所寄ってくるから。
逃げんなよ、。
また微妙な作品が増えてしまった…。
婚姻届とか離婚届を学校に持ってくる高校生はいません。きっと。
ついでにいえばお題からそれてますね。
三行半をさんぎょうはんだと思いこんでいた小学生は零です。
中学校に入るまで「みくだりはん」の意味を知らなかったなんて…恥ずかしくて言えない(苦笑