087:髪を切る
ばさり、ばさり。
気味のいい音を立てて、長くて重い髪の毛が落ちていった。
いつも一つにまとめてた髪は、アイツが長いほうがいいって言ってたから。
でも、もう必要ないから。
だからアタシは、髪を切る。
「うっわ、派手に切ったねー」
次の日学校に行ったら、隣の席のに驚かれた。
「まーね。ちょっと気分転換?」
「失恋?」
「まっさか、そんなベタな展開」
さらりとかわしたはずの語尾が震えた。
失恋したから髪を切るなんてバカみたい、自分でもそう思ったのに。
アイツが好きだった髪なんか、すぐ捨てたいと思ったのも自分だった。
が苦笑する。
「それもそうだよなー。だいたい、のことふるようなバカはそうそういないね、
俺が断言する」
はそういってなれなれしく笑った。
…そのバカに見事に泣かされたアタシは、もっとバカだ。
隣でアタシが泣きそうな事に気付かないフリをしてるは、
もっともっとバカかもしれない。
「いいよ、に断言されても嬉しくないから」
「なんだよー、せっかくほめてやってんだから喜べ」
「じゃ無理」
「好き嫌いはいけないんだぞー」
小学生みたいな事いいながら軽く笑うの顔がおかしくて、
アタシもつられて少し笑った。
泣きそうな顔で笑うアタシは、きっと相当カッコ悪い。
でもは、気がつかないフリを続けてた。
「あのさー。
お前は髪短いほうがいい。俺はそっちが好き」
さらりと。
の言った言葉がアタシの中の何かをくずした。
ふられたのを必死で隠して、なんとか強がってたアタシの心を。
の自然な言葉が、優しくくずしていくのが分かった。
「そう?アタシも結構気に入ってるんだ」
アタシが笑顔になると、もにっこり笑った。
いつものなれなれしい笑顔で。
「の笑ってる顔が見えるから、俺は短いほうが好き」
「何言ってんの、バーカ」
「あ、何?照れてる?」
「んなわけないでしょ」
「素直じゃねーなー」
「には言われたくないね」
失恋の特効薬は、ホントは髪を切る事なんかじゃなくて。
なんだかんだ言ってずっとそばにいてくれる、の存在なのかもしれない。
髪を切る=失恋って、一体誰が最初に言い出したんでしょうかね?
ちょっと気になる。
もしかして、サンタクロースの赤い服とかバレンタインのチョコみたいに美容院の陰謀だったんでは(え
↑平安時代の風習の名残らしいですね。あの時代は黒くて長い髪が美人の代名詞だったし
今よりずっと【女は髪が命】だったから、最愛の人を失った時に自分の女としての命を捨てるような意味合いが有ったとか。
すごい根性というか覚悟ですね。平安女性(笑)
ボケッとしながら書いていたので自分でも予想しなかった話が出来てしまいました(汗