033:十字架
「…ってか、おかしいと思わないの?」
「え?」
今日は日曜日。
もちろん学校だって休み。
なのに私の隣を歩いてるのは…なぜか…隣の席の。
理不尽だ。
せっかく今日はあいつのおしゃべりから解放されたと思ったのに。
なんで道端でばったり出会ったりしなきゃいけないのよ、神様の馬鹿。
「だからさー、それだってば。その首飾り」
「なんでよ、似合わない?」
「似合わないとかそう言う問題じゃなくてさ。なんで、十字架なわけ?」
「なんでって、可愛いから。悪い?」
がなんでいきなり絡んできたのかわかんないけど、とりあえず言い返す。
そりゃもう、毎日学校でやってるのと同じように。
だけど私の答えを聞いたは、さらに食い下がってきたんだ。しつこい。
「あのなー、十字架ってキリスト教だろ?なんでお前がそんなのつけんの?
だってお前この間自分で無宗教だって言ってたじゃん。」
「いいじゃんそんなの。可愛いもんは可愛いの。」
だんだん言い返すのが面倒になってきて、理由にならない理由で話を断ち切ろうとする。
それでもはついてくる。
せっかくの日曜日になんでなのよ。ホント、頭来る。
「可愛いってさー、それイエス・キリストを磔にした台の形じゃん。不吉じゃないの?」
「不吉ってねぇ、人のアクセにけちつけないでよ。しかもキリストはその後復活したんでしょ!縁起いいじゃん。」
いちいちちゃんと返事をしちゃう私も私だと思う。
無視すりゃいいんだろうケド…、
無視するとこいつ、時々すごく寂しそうな顔するから…なんか罪悪感あって無視できないんだよね。
はぁ…そのせいで授業中何度先生に怒られた事か。
理科の先生なんか私たちのこと夫婦漫才だって言ったんだよ?冗談じゃない。
「へー、じゃあは、十字架好きなんだ?」
「なによいきなり。ま、好きだけど…」
「じゃあ、ちょうどよかった」
「へ?」
ニヤって笑ったの言いたい事が分からなくて、思わず私は立ち止まった。
も立ち止まって、私の正面に回りこむ。
…ちょっと、こんな人通りの多いところでこんな立ち位置にいたら、恋人みたいに見えるでしょうが。の馬鹿。
「何よ?」
私の頬の方にが手をのばしてきて、思わず一歩下がる。
一体何がしたいんだろう、こいつ。
「動かないで、」
「え…」
の手が、私の耳に触れた。
(…え?今の感触…?)
「はい、片方あがり。あと少しだから動くなよ」
「ちょ、ねえ、あんたいったい何してんの…」
「動くなって」
反対側の耳に「なにか」をつけようとしていたが、私の耳元でつぶやいた。
…ものすごく、不覚なんだけど。
いつもと違う押し殺したような低い声は…ぞっとするほど、カッコよかった。
「はい、完成。鏡見てみ?」
「え……」
に言われるまま、カバンから鏡を取り出して耳元を見てみると…
(え、嘘…なんで?)
私の耳には、可愛い十字架のモチーフのイヤリングが下がってたんだ。
でもどうしてが。
私が戸惑っての顔をまじまじ見つめたら、がぶっきらぼうに言ったんだ。
「先週からずっと学校で渡しそびれてたんだよっ。
…今さらだけど、誕生日おめでとう」
「…」
いつもうるさいからの、意外な、1週間遅れの誕生日プレゼント。
すごく、嬉しかった。
…だけど、それだけじゃない。
「…、あのね」
「なんだよっ」
「もう一つ、誕生日プレゼント、欲しいんだけど…」
「え?」
「…私に、って人を…プレゼントしてくれない?」
「馬鹿っ……拒否るわけねーだろが、…」
一週間遅れの、誕生日プレゼントは。
今までもらったどんなものよりも…私を幸せにさせてくれるものだった。
リクエストをいただいたお題作品で…うーん、どうも甘くなりません。
ヒロイン1人称で書くの、苦手なんでしょうか…;
そして、例によって例のごとく、モチーフが生きてない………次こそ頑張るぞ!(逃
神風成美様リクエストありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。