「ねえ。…最近大人っぽくなったね」
「はぁ、いきなり何言ってんだよお前。熱でもあんの?」
幼馴染のは、アタシに対する時はいつもこんな感じ。
口が悪いのも目つきが悪いのも、大して背が高くないのも昔からずっと同じだけど。
でも最近のは、なんかちがう。
昔より、つい最近よりずっと……大人っぽく感じるんだ。
「いや、アタシ健康体だから」
「バカは風邪引かねーって?知ってるよそんなもん。」
「誰がバカだって?大体成績はアタシの方が…」
「数学苦手なくせに」
「…」
いつもどおりに話が脱線して、いつの間にか軽い口喧嘩みたいになってて。
なんにも変わらないはずなのに…はやっぱり前と違う。
「それはともかく、最近なんかあったんじゃないの?…真面目にあんた大人っぽくなった気がする」
「…んだよ、しつこいな。
俺もそういう年なんだよっ」
「もう、そんなの答えになってないじゃん!…それともなんだ、幼馴染のアタシにも言えないような恋とか?」
「……さあな」
「え…」
てっきりいつもどおり「はぁ!?」とか、「バカ言ってんじゃねーよ」とかって返事が来ると思ってたのに、
の口からこぼれたのは、肯定にとれるような小さな声だった。
「別に彼女ができたとかそんなんじゃねーよ。まぁ…いろいろだな、ガキのお前にはわかんねーだろうけどよ」
「…?」
見慣れない、大人びた微笑を浮かべたはいつものじゃないみたいで。
なんだか急に、が遠い遠い人に思えた。
いつまでも変わらないもんだって思いこんでたのに。
アタシとの腐れ縁はいつまでだって続くだろうって思ってたのに。
…今、は、アタシの知らないところで…きっと、だれかに恋してる…。
急に黙ったアタシを見て心配になったのか、が首をかしげた。
「お前何?いつもうるさいやつが、急に黙んなよ。
それとも、なんだ?…実は俺のこと好きだったから不安になったとか?」
冗談めかして聞いてきたの言葉が、なんだか分からないくらい衝撃的だった。
はただの友達だよ、幼馴染でしょ、
バカな事言ってんじゃないよ、…って、いつもどおりの言葉が出てこないくらい。
に言われるまで、気付かなかったけど。
もしかしたら…アタシ……?
「わかんない、…そうかも」
「……?」
「わかんない、はアタシの幼馴染で、口は悪いけどすごい気があう友達で、
だけどなんでだろう…、急にが大人っぽくなったから、もう今までみたいにそばにいちゃいけないのかなって、
不安になって…。」
勝手に口からこぼれた言葉に、もビックリしたみたいだった。
アタシだってビックリした。
考えるより先に、どんどん言葉が出てきちゃったから…。
どうしていいかわかんなくてただ立ってるだけのアタシに、しばらくしてが手をのばしてきた。
その手で、軽くアタシを撫でる。
「バカじゃん、。考えすぎだっての。
俺のはただの憧れだったんだし、もうとっくに失恋済みなんだよっ。
…ただでさえ失恋のショックでかかったんだから、お前までどっかいくとか…言うな」
「…」
「お前にカッコ悪りぃとこ見せたくなかったから強がってたのに、がいなくなったら、…意味ねぇだろ」
「……っ」
気がついたらアタシは、の腕の中にいた。
小さいころとは比べ物にならないくらいたくましくなったが、そっとアタシを抱きしめてくれてる。
「…俺、あんな奴のこともう忘れて、お前の彼氏になるから。…それならいいだろ、?」
「うん………、好き……」
「急にそーゆー事言うな、恥ずかしいだろバカ」
「バカって言うなバカっ」
「お前だって言ってんじゃねーかよ。…ま、今日は特別、許してやるけど」
「許すって何よ許すって。のバカ」
「…うるせぇな、そーゆー事ばっか言ってると、口塞ぐぞ?」
「………………………なら、別にいいもん」
そんなに簡単には素直になれないけど。
…でも今日からアタシは、の彼女なんだって思ったら。
「バカ…ホントにするぞ」
「うん…」
少しだけ、素直になれる気がした。
甘ったるいかも…生ぬるいかも…うぅ(汗
そういえば黒川の幼馴染…音信不通だな、2年くらい…。今頃何してるんだろう…?