「、ー。」
「なにさ」
夕方の人のいないはずの教室に、響く私の名前。
いつもどおりの声に振り返るといつもどおりのアイツの顔。
ホントは振り返らなくたって分かってる。
どうせこんなになれなれしく私に話しかけてくるのは、ぐらいのもんだから。
「つれないなー、もっと可愛い反応してくんない?」
「無理」
「わー、即答」
私は毎日毎日同じ反応しか返さないのに、は飽きもしないで毎日話しかけてくる。
で、次にがいう言葉も、もう聞きなれた。
「、俺のこと好き。好きだよ」
「あ、そ」
気のない返事を返すのは、アイツが本気じゃないって知ってるから。
女好きのって言えば、学校中で有名だもん。
の告白を信じる奴なんて、いない。
「ひでぇなぁ、俺こんなに本気なのにってば冷たいんだから」
「いや、反応してあげてる分だけ感謝しなよ」
「なんだそりゃぁ?」
がバカみたいな顔で首をかしげる。
黙って硬派なフリしてればいくらでも寄ってくる女の子はいるんだろうに、軽い男って評判がついた今じゃ
に告白しようとする女の子で周りの友達に止められない子なんか一人もいない。
もちろん私だって周りの子を真剣に説得するうちの一人だ。
自分で彼女ができない原因を作ってる事を、は気付いてるんだろうか。
「あのさー、はなんで俺のことOKしてくれないの?」
「ナンパ男に興味ないから」
「うぇ、ナンパ男って俺の事っ!?ひっでーなぁ、俺全然そんなんじゃないのに。」
「どこが」
だいたいこれといって特技もなければ見た目だって平均点ギリギリの私なんかに声をかけて来る時点で、
よっぽどのヒマ人かとんでもないナンパ野郎に決まってるじゃんか。
で、部活にバイトに忙しいは暇人じゃないんだから、
残るはナンパ野郎しかない。
絶対じゃんか。
心の中でため息をついた私の目の前に、が回りこんだ。
顔をしかめようとしたら、がなんかいつになく真面目にこっちを見てたから出来なかった。
「…なに?」
「、俺がいつ、以外の女に声かけた?」
「え」
「噂にだって、俺が以外の女なんかと付き合ってるって聞いた事ある?」
ああ、不思議だ。
こうやって真剣な目をしてるは、いつものナンパ野郎とは別人に見える。
…吸い込まれそうなほど、真剣な目。
“信じろよ、。俺…本気なんだよ”
そんな風に言われた気がして、私は思わず首を横にふってしまった。
「俺は本気でが好きなんだよ。じゃなきゃダメだ。
お前のことマジで好きになってから、他の女子とは付き合いたいなんて思った事もない」
「嘘…」
「嘘なんかじゃねーよ。だからこれ以上…俺のこと拒否んないで。
もっといつも…側にいさせて」
「…」
ああ、私の負けだ。
はっきり、そう思った。
いつかこんな日が来るんじゃないかって、ホントはうすうす気付いてた。
が本気で私のこと思ってくれてるんだって、心のどこかでは、分かってた。
ただ認めるのが怖かっただけで。
とずっと一緒にいたいと思ってたのは…私の方なんだ。
真剣な目でこっちを見てるに、私はそっと手をのばした。
の腕を捕まえて、背伸びして。
「…今までの、おわび」
私はそっと、の頬にキスをした。
離れようとした瞬間、が私をきつく抱きしめた。
「1回じゃ許さねー。
これからが俺のものになんなきゃ、許してやんねぇから。分かった?」
「…分かった。」
耳元で聞こえた、の甘い声。
私が微笑むと、はもういちどきつく私を抱きしめてくれた。
どうか、この幸せが。
いつまでも消える事のありませんように。
なんか甘温いです。しかもネタがけっこうありがちでごめんなさい。
…なんだかヒロインのテンションが微妙に低かったかなぁ…特に序盤。
これじゃまるで眠い時の黒川です。ごめんなさい(汗