今日で、ちょうど6ヶ月。
あいつに振られてから、ちょうど6ヶ月。
「あー、君じゃん!」
昇降口で会った男子に、にっと笑って声をかける。
「さんか、びっくりした」
普通に返事を返してくれる、 。
私の、去年のクラスメートで今は隣のクラスの「友達」。
すごく…マジメで、優しい人。
くんは優しいから、ホントは多分しゃべりたくないはずの私にも、
普通に話しかけてくれるの。
だけど…さ。
私、最近思うんだ。
優しいって、時々すごい残酷なんだな…って。
だって、そうでしょ?
振った女の子に優しくするのって…結構、つらいものがあるんだよ。
たぶん君は気付かないんだろうケド。
どうせ振るなら、私のことなんかもうシカトすればいいのに。
でも、君は優しい。
何事もなかったかのように、友達として振舞う私に合わせてくれるの。
仲のいい友達として、普通にしゃべってくれるんだ…。
「あ。さん。」
私より先に靴を出して、中庭に下りた君が振り返った。
心臓に悪いよ、急に振り返るんだもん。
なんて、ココロのなかで愚痴りながら、私は平然とした顔をしてみた。
「何ー?」
私より低いところに立ってるくせに、私より全然背の高い君が
ふと思いだしたように言った。
「あさっての後夜祭、さんも出るの?」
明日、あさってと続くウチの学校の文化祭。
イベント大好きな私が、大イベントの後夜祭に出ないわけなんか、どこにもなくて。
「もちろん出るよー。君は?」
別に君に質問したからってどうなるわけじゃないのに、
少しでも会話を長引かせようとしてる自分に気付いて、私は一人で笑いそうになった。
バカじゃん、私。
私がそんなこと考えてるなんて知らずに、君は答えてくれた。
答えてくれたんだと、思った。
でも。
「そっか。あのさぁ さん。もし誰かと予定はいってなかったらさ、
最後の花火、俺と見ない?」
それは、どう聞いても答えじゃなくて。
そう、どう考えても質問でしかなくて。
原稿用紙1枚分、たっぷり考えてから。
私はマヌケな返事をした。
「え、なんで?」
だって、だって。
ウチの高校の後夜祭の花火は、彼氏と見るものって相場が決まってるんだもん。
なのになんで君が。
私を振った張本人が、一緒に花火見ようなんて言ってくるの?
「あ、さんが嫌なら別にいいんだけどさ…
その。もし、さんが、まだ俺の事…嫌いになってないんだったら」
彼女として、となりにいてほしいんだ
小さな声だったけど、最後のセリフはダイレクトに心に届いた。
くんのことあきらめきれてない私が、嫌だなんていうはずはもちろんないんだけど。
でも、どうしても疑問でしょうがなかった。
あのとき…1年の終わりごろ、告白した時は
私の事、ただの友達にしか見れないって言ってたのに。
これからもずっと友達でいようって言ったの、くんの方だったのに。
それが、どうして今は…私が、告白されてるの?
顔に疑問符をいっぱいくっつけた私に、くんが顔を赤くして言った。
「1年の時、俺…さんに、好きだって言ってもらったじゃん。
俺、断っちゃったのにさんは普通に友達として接してくれたでしょ。
正直、もう二度と普通にしゃべれないんじゃないかって思ったらすごく怖かったし。
それで、はじめて気付いたんだ。
…本当は俺もさんの事ずっと見てたんだ、って。」
視界が、曇るのが分かった。
「俺と話してる時のさん、いつも笑顔だったじゃん。
…今さらって思うかも知れないけど、他の奴に取られたくなくて。
こんな勝手な俺だけど、もし、よかったら」
最後までしゃべらせるつもりは、なかった。
私はすでに止まらなくなっていた涙をかくすために、君に抱きついた。
もう、放せないくらい強く。
「だめなわけない…
君が好きだから、笑ってたんだもん。
振り向いてもらえなくても、せめて友達でいられればって思ったから笑ってたんだもん。
本当は、ぜんぜんあきらめてなかった…」
泣きじゃくる私の頭に、あたたかいものがのった。
…ああ、君の手。あったかい。
「あきらめないでくれて、よかった…」
あいつに振られてから、ちょうど、6ヶ月。
だけどもう、振られてから何日たったか数える必要はない。
ね、そうだよね…、。
これからは…今日から何日たったか、数えて行くんだから。
言い訳コーナー…。。
うーん…微妙…。たしか、「甘いのが書きたい!」って言って書きはじめたのに…。
気がついたら本人全く意図してない方向に話が進んでおりました。
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