045:不慮の事故
「あ、あの…」
わたしの声は、なんとか君にとどいたみたいだった。
君が、はっとしてわたしを見下ろす。
「わ、悪い」
わたしの髪の上に手をついていたことに気がついて、あわてて君が手をどかしてくれた。
だけど、問題はそこじゃない。
…わたしの身体の上に、君の身体が乗ってること自体が、問題なんだ。
「あの…」
こんなとき、小心者のわたしは損だと思う。
ただ「どいて」って言えばいいだけなのに、それが言えないんだから。
「…ごめんな、。痛かった?」
「う…ううん…、大丈夫」
心の中で、小さくため息。
いくらわたしが君を好きでも…、この体勢は絶対、おかしいと思う。
だって…これ、どうみてもわたしが……
君に、押し倒されたみたいでしょ…?
本当はただ、ぼけっとしてたわたしが君にぶつかって、二人一緒に転んじゃっただけなんだけど。
あんまり、君が近くにいすぎて。
わたし、おかしくなりそうだった。
「怪我はしてないか?」
「だ、大丈夫…」
「そうか、よかった」
普段無口な君が心配してくれるのは、すごく嬉しい。
でも、やっぱりはやくどいて欲しい。
こんな近くに君の顔があると緊張するし、なにより
教室の床にわたしと君がいるところを他の人に見られたくない。
「あ、あの…」
「何?」
全然、気付いてない君にこんなことを言うのは、気が引けたけど。
押し倒されっぱなしになってるわけにもいかないから、わたしはなけなしの勇気をはたいて口を開いた。
「あ、あのね、君…、わたし、起き上がれないんだけど…」
「…!」
自分の状況に気がついて、君が赤面した。
それからあわててわたしの上をどいて、助け起こしてくれた。
「悪かった…その、変な体勢で倒れてしまって」
気まずそうな君が、なんだかおもしろかった。
「あ、気にしないで…、わたしがよそ見してたのが、悪いんだし」
「いや、俺が受け止め切れなかったのが原因だ。それに…怖かっただろ?」
「え?」
「好きでもない男に上に乗られて、…怖かったんじゃないか?」
「あ…」
わたしの顔が、真っ赤になった。
だって君は「好きでもない男」なんかじゃないから。
それに、ちょっとドキドキして幸せだったのも…ホントのことだから。
「…大丈夫だよ、君だったから」
今日はなんだか、いつもの小心者のわたしじゃないみたいだ。
恥ずかしいセリフが、口をついて出る。
ほんの一瞬考え込んで、わたしが言った事の意味を分かった君の顔が、赤くなった。
「、今の…本当?」
わたしがうなずいたのと、君がわたしをぎゅって抱きしめたのは。
多分、ほとんど同時だったんだとおもう。
「…じゃあ、さっきのつづきは、またいつか…な」
耳元で聞こえた声に、わたしはまたそっとうなずいた。
あとがき
なんか暴走してます。モデルキャラはいるにはいたんですが…途中から脱線。
しかも最後の方、相手自由夢ではめずらしくきわどい線に話がかかり始めてる気が…(爆
今さらですが。
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