「愛をください…」(Christopher)





………。


「クリス、眠れないの?」
「あ、ああ……なんか、目が冴えちゃってさ。」
「そっか…、休まなくて大丈夫?」
「まあ、明日は予定もないし…大丈夫。ありがとう、エストス」


深夜。
彼、クリストファー・カーティスは自宅の庭でぼんやりと立っているところを
旅仲間のエストスに話しかけられた。
自分を心配してくれる人のありがたさを感じながら、ふと彼は思ったことを口にした。


「あのさ、エストス…。
 変な話なんだけどさ、聞いてくれるかな?」
「なに?」


特に前々から考えていたことを話すのでもなく、ただ、頭に思い浮かんだことを
そのまま口に出していく感じだった。
言いよどんで、とりとめもなく、まとまらない話だったが、
エストスは静かに彼の話を聞いていた。


「俺…、エリックがどんな人だったのか、知らないんだ。
 考えてみたこともなかったんだけど…。
 その、エリックの家族とか、友達とか、……恋人とか。
 なんか、気になっちゃって。
 エリックの知り合いがもし俺のことを知ったら、どう思うのかな、とか。
 それに…、
 エリックが、誰かを愛したり、誰かに愛されたりしてたのか…
 少しだけ、知りたくなって。」
「そっか…。」
「なんていうんだろ、俺…。
 たまに、自信がなくなるんだ。
 俺は両親の愛情を受けて育ったわけじゃないし…。
 本当に、俺は、誰かを愛することができるのかな?ってさ。
 愛することも、愛されることもできないんじゃないかって…不安になったり…。
 だから、エリックに人を愛する心があったかどうか…知りたくて…。」


不意に話すのをやめたクリスは、エストスの視線に気付いた。
やさしく穏やかな瞳が月の色をたたえて、じっとクリスを見つめていた。


「クリスは、愛されてるよ。それに、ちゃんと、愛してる。」
「えっ?」
「…ウルグが帰ってきたときの嬉しそうな顔、ちゃんと覚えてるよ。
 私、あの時思ったの。
 クリスは…、ウルグを愛してるんだな、って。
 それと同じくらい、ウルグがクリスを愛してるんだな…って。」
「エストス…」


静かでやさしい声音が、クリスの心を少しずつ落ち着けていった。
やわらかい微笑をたたえたエストスが、クリスに寄り添う。


「それにね、みんなも…みんな、クリスのことが大好きだよ。
 シャイアも、アレクも、ファウストも、神父様も、それにきっと…ブラックレインだって。
 一緒に旅をしてきたクリスを、とっても大切に思ってるはずだよ。」
「みんなが…俺を?」
「うん。クリスもみんなのこと、大切でしょ?」
「それは、もちろんだけど…」


ふっと言葉を濁し、クリスは至近距離にたたずむエストスの表情を探ろうとした。
意図的に自分の名前を出さなかった理由を知りたかった。
エストスはクリスの視線に気付き、すこし視線を上向けて目を合わせた。


「私はね…、クリスのこと…………。」
「……。」
「とっても、大切に思ってるんだよ。
 なんて言うのかなぁ…ほかの人とは、違う大切さなの。
 大好きで、ずっと一緒にいたくて、幸せになってほしくて……」


<恋、っていうのかな…>


一瞬うつむいたエストスが小声でつぶやいた言葉を、クリスは聞き逃さなかった。
不意に気恥ずかしくなったのか、ほんの少し顔を赤らめて
クリスは視線をそらしたエストスに答えた。


「あ、あのさ……ありがとう……。
 エストスのおかげで、その、き、気付いたんだ…。
 俺も、その、人のこと…ちゃんと、愛してるんだって……」


<好きだよ、エストス…っ>


あさっての方向を向いてつぶやいた言葉だったが、エストスもそれを聞き逃さなかった。





(やれやれ…それでもまだ先は長そうだな)





穏やかな月の光と、紫色の深い瞳が二人を静かに見守っていた。



のぞいてたのか、というツッコミは歓迎です。
ちょっとリハビリ中な感じになってしまいましたがお楽しみいただければ幸いです。

(タイトル見てほかの人バージョンもありそうだと思った方…鋭いです。
 後日更新予定ですのでよろしければごらんください。)

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