「愛をください…」(Alexander)
「………」
のぼりかけた朝日。
彼…アレクは、静まり返った町をまぶしそうに眺めた。
いつものように浴びるほど酒を飲んではいたが、飲みすぎた感じはしない。
「さて、と……」
アレクは、早朝のダウンタウンが嫌いではなかった。
夜の賑わいが嘘だったかのように静まり返り、人の気配もほとんどない。
見かけるのは酔いつぶれて路上で眠ってしまった文無しくらいのものだろうか。
灰色の町が唯一、静寂と安らぎを取り戻す時間帯。
ちょうどそんな頃に、彼は酒場から出てきたのだった。
「……こうして見ると、綺麗…なんだよな。ダウンタウンも。」
街自体も、街に住む人間たちも、決して綺麗ではないことをアレクはよく知っている。
違法行為の巣窟。
賞金首に浮浪者。
普通の世界を生きる人間ならば、近付く気にもなれないような汚れた場所。
…それでも、そんな場所でも。
朝の光は、平等に包み込んでくれる。
どんな過去を抱えた人間のことも…、
朝の光は、平等に照らす。
「ソフィ…。」
煙草を切らした口寂しさなのか、静寂に包まれたくなかったのか。
アレクはぽつりぽつりと言葉をつむいでいく。
「俺さ、昔から自分なんて嫌いだったよ。
ただ…それでも、照らしてくれる光があったから、なんとかやってこれたんだと思ってる。
ソフィ。
…お前のことだよ。」
もう夏も終わりに近いのか、見上げた空はとても高かった。
手を伸ばしても決して届かない距離を感じながら、
アレクは上を向いたまま、目を閉じた。
東から差し込む強い光は、閉じた目でも感じ取ることができた。
(誰でも…照らしてくれるんだな、お前は。
こんな俺のことも。
もういない村のやつらのことも…、きっと、今の俺の仲間のことも。)
再び目を開くと、限りなく高い青天井が少しずつ明るさを増していくところだった。
空を見つめていた青い二つの瞳は、ゆっくりと自分の帰り道へおろされていく。
「ソフィ…。
これからも、よろしく頼むな。」
晩夏の朝日がそれに答えるように、そよ風を送った。
アレクの愛って…きっと、今でもソフィーナに向けられてるんだろうな…
そんなことを考えながら書きました。
うーむ…まだちょっとリハビリ中のようです><