「Invisible」
※捏造設定を含みます。
私の願う事
今知りたいこと 伝えたい事
上滑りの会話の奥
貴方は今何を 見ているのですか…
「…。」
無意識に緊張してしまう、この瞬間。
身分差が原因でない事くらい、私には分かっていた。
それは「罪悪感」という名の…。
「……。」
無意識に緊張してしまう、この瞬間。
お互いの職業が原因でない事くらい、私にも分かっていた。
それはむしろ、「失恋の恐怖」という名の…。
「…お久しぶりです、聖女様。」
取り繕ってなおぎこちなさの残る挨拶に、彼女は嬉しそうな笑顔を浮かべた。
「まあ、アテル神父様。わざわざいらしてくださったのですね?」
「ええ…あくまで本業はこちらですから」
苦笑混じりにそう返す。
「盲目の」神父ニール・フォリア・アテルは今エルフェ大教会の聖女を訪れている。
「ノルダの教会のほうは順調でした。街の復興も進んでいます」
「そうですか…早く完全に元通りになると良いですね」
形式ばった返事しか出来ないことがもどかしい。
たとえば彼と一緒に旅をしているハンターのクリスと言う少年と話す時はもっと自然に振舞えるのに。
シスターと神官がほんの少し席を外してくれさえすれば。
…人目がなければ勇気を出せるというわけではないことくらい、分かっているけれど。
「それから、新しくジックスに教会を建てたいという運動が…」
言葉に、つまる。
彼女のものを見ていない瞳が一瞬私に合わせられるだけで。
罪悪感が私を押さえつける。
「盲目を装った」私は、「本当に盲目の」少女を欺く事を…
何よりも、恐れている。
「ジックスに、ですか?」
何かの拍子で彼の言葉が途切れるたび、不安になる。
もしかして私の気持ちに気付いてしまったのだろうかと。
「聖女」である私に、恋愛なんて必要ないはずなのに。
「ええ…、旅の途中で滞在する信者が多いとかで」
叶うはずがないと知っていても…その声を聞くだけで、切なくなって。
「…また、来てくださいね。皆さんも一緒に」
「ええ、近いうちに…また」
屈託のない言葉にすら、心のどこかで怯えている。
本当は彼女は全て知っているのではないか、知っていて私と接しているのではないか。
そんな疑念と理由のない恐怖に取りこまれそうになる。
立場上…そんなことを言っていられないのは、分かっているのに。
(私は…でも、今更貴女に本当の事を告げる勇気は…)
「聖女」を欺く自分に、嫌悪を感じる。
「それでは…失礼します」
「お気をつけて」
どこか急いだ感じで立ち去る足音を、名残惜しく見送りながら。
本当は彼は私の気持ちを全て知っているような、知っていて急いで帰ってしまうのではないか。
そんな疑念と失恋の恐怖に取りこまれそうになる。
立場上、そんなことを言っていられないのは、分かっているのに。
(私は…それでも、貴方に本当の気持ちを告げる勇気は…)
貴方が何を考えているのか…知りたい
怖くて 切り出せないけれど
本当の事を 知らせる勇気があれば この目を開いて貴方を見つめられれば
私は何かを 変えられるのだろうか………
久しぶりに書いたらわけが分からなくなってしまいました。
リスティさんは神父さんに惚れてるんじゃないだろうか…という勝手な捏造設定の元にお送りしました。
二人とも物理的な意味じゃなくて「見えてない」ものがあるんじゃないかな…って。
それは目を閉じている二人だからではなくて、誰にでも起こりうる事で…
気を遣いすぎる人たちだからこそ、身近なものがかえって見えにくくなってしまったというか。
ありゃ、自分で書いてて混乱して来ちゃいました。
とにかくこの二人、すれ違っちゃってるんです。それが書きたかっただけ…(笑