「アクシデント」(※ギャグでもBLはイヤ!という方は閲覧をお控えください)
(なんだ、これは)
不意に目が覚めた。
彼の記憶が間違っていなければハントの宿屋に宿泊中のはずだが…、
宿にいるにしては、おかしな感触がニールを見舞う。
重み。
明らかに子どもや小動物ではない重みがある何かが、彼の身体の左側に張り付いている。
いや、正確には纏わりつかれていると言うか…しがみつかれていると言うか。
職業柄霊体の存在を一瞬疑ってもみるが、霊体にしては質感がしっかりしすぎている。
かといってどこぞの賞金首のように他人に寝込みを襲われるような覚えはない。
大体、敵意のようなものはこの相手からは感じ取れないのだが…
それならばこの状況は一体なんなのだろうとニールは訝る。
体を起こそうにも腕と思しきものがニールを左側から押さえつけていてかなわない。
しっかりと押し当てられているその何者かの胸板は硬い。
(だとすると、…これは、男…?)
辛うじて自由のきく右手で、近すぎて見えないその何者かの頭を押さえて遠ざけた瞬間、
ニールは呆気に取られた。
「………アレク?」
眠っている。
…今まで気付かなかったほうが不思議なくらいのアルコールの匂いに一瞬顔をしかめながらも
なぜアレクがニールに張り付いてすっかり眠りこけているのかはすぐに分かった。
おそらく酔いつぶれたのだろう。
夢でも見ているのか、暗がりに見えるアレクの表情はとても穏やかだ。
「ん…ソフィーナ……」
「…………仕方ありませんね」
明日からはまた世界中をオーブ探しの続きで飛び回らなければならない。
辛い戦いになるのは、目に見えている。
それならせめて幸せに寝ている間くらいは大目にみようと、ニールは起こしかけた体を
再びベッドに横たえた。
「アレク…お酒はほどほどに、ですよ?
二日酔いの治療までは面倒を見ませんからね。」
保護者のような口ぶりの割に優しい手つきで毛布をアレクにもかけてやってから、
ニールは再び眠りに落ちていった。
アレク同様安らぎに満ちた、穏やかな表情で。
「……………えっ?え、えぇっ!?」
「………。」
「あ、アレク?神父さんも?…シャイア〜、どうなってるの〜??」
翌日。
「ふぁ〜…頭痛てぇ……ん?シャイアか。おはよ〜………
どうしたんだよぉ、そんなに俺の事じっと見ちゃって。」
「………チェグナスの目に毒だからそういう事は他でやってちょうだい。」
「そういう事?俺、なんかしたか〜?
………え?なんで俺、神父さんと一緒に寝てたんだ?」
「こっちが聞きたいわよ。…それにしても信じられないわ。
貴方はともかく、まさか神父さんが…」
「まさかって…お、おいシャイア、なんか勘違いしてねぇ?俺は別にそっちの気は……」
「…いいのよ別に。個人の自由だもの。…エストス達にも内緒にしておくわ。」
「ちょ、すっげぇ誤解されてるんですけど〜?
神父さんもなんか言ってくださいよ…あれ?」
「………」
「…寝てるわね。貴方のせいで昨日、眠れなかったんじゃないの?」
「だから待てってばシャイア〜!」
いつまでも寝ているアレクとニールを起こしに来たシャイアとチェグナスが
今後彼らとどう接したものか真剣に悩んでしまったのは言うまでもないことである。
うわー何やってんですか私。
いや、酔い潰れた人って何しでかすか分からないのは事実ですけどね。
実際、潰れて寝ぼけた男の子に勢いよく抱きつかれた覚えが…(爆)
…アレクと神父さんは実際にはある意味親子みたいなものってイメージがあるので、
前半はほのぼのしてました。
暴走したのはシャイアとチェグだけ(いや、何より私が一番暴走したな…)です(笑)
読んでくださってありがとうございました。
※注意 タイトルバーの英文を見て「なんだ黒川はアレクに嫉妬してたのか。」なんてツッコミ入れないでくださいね(笑)
…事実だとはさすがに言えないよなぁ…