「なんだレオン。貴様が呼ばれもせずにこのロマノフの所に来るとは珍しいのう。
何があった?落ち込んでいるようだが。フフ、先ほどのことか。
まぁ確かにあのような簡単な問題が解けぬとはけしからぬことだが、いつまでもクヨクヨしても始まらぬだろう。次頑張れば良い…ん?お主、泣いておるのか?まぁ落ち着け。紅茶でもご馳走してやる。しばらく待っておれ…
どうだこの紅茶は。変わっておるだろう。中にジャムが入っておる。ワシの故郷の紅茶の飲み方じゃ。連れ合いが生きておったときはジャムも家で作っていたのだがなぁ…
フム。落ち着いたようだな。何?もう限界を感じて?周囲の連中に取り残されて。ほほう。お前にもそのような心があったか?フフフ、怒るでない。泣いたり怒ったり忙しいのう今日は。お主も知っておる通り、ワシもこのマジックアカデミーの出身じゃ。ああ、もう400年も前じゃ。そこにある生徒がおってのう。今日はその話をしてやろう…」
「その生徒は故郷では優秀な成績を修め、マジックアカデミーに自信満々入学したのじゃが、いかんせんお主も承知の通り全国からレベルの高い連中が集まる故にその生徒の鼻っ柱はあっという間に折られてしまってのう。それで自暴自棄になって喧嘩に明け暮れる毎日だったんじゃ。今、博物館として使っておる建物があるじゃろう。あそこを昔教室として使っておったのじゃ。そこの1階が職員室でなぁ。その生徒は毎日のように呼び出されておった。そうそう丁度お主と同じだフハハハハ…まぁ拗ねるでない。続きを話そうか。その生徒はそんなことばかりやっておるから教室でも寮でも居場所がなくなってのう。ついにここをやめる決心をしたそうじゃ。そして夜中に荷物をまとめて裏口から出たところ、運が良かったのか悪かったのかその当時の担任の先生に出会ってしまったんじゃな。フム。紅茶が冷めたようじゃな。淹れ直す。しばらく待っておれ」
「さて、どこまで話したものか… その当時の担任の先生に出会ってしまったのじゃ。その生徒はな、また怒られると思って身をすくめての。ところが先生は黙って自分の部屋へその生徒を入れてな。その先生もマジックアカデミー出身だったんじゃが、生徒時代の成績表を見せたそうじゃ。それはひどい成績だったようでのう。呆気に取られとったら一言、逃げるのは簡単だが、逃げた後の後悔は耐え難い苦痛だ、と言ってくれたそうじゃ。その生徒は次の日からまじめに勉強するようになって、今ではどこかで活躍しているそうじゃ。その先生か?写真がある。見せてやろう。何驚いた顔をしておる。自分に似ておるか。似てて当然じゃ。お前のお爺さんだ。フハハ。知らぬのも無理はない。お前が生まれるとうの昔にお亡くなりだしな…お前も成功するかって?そりゃ心がけ次第だ。自分の力を信じてがむしゃらにやることだ。フフフ。元気も出たようだな。さぁ、もうこんな時間だ。年寄りをそろそろ寝かせてくれ。ん?その生徒はワシかって?さぁな、そうかも知れぬな。うむ。礼などいらぬ。さぁ、明日からまた厳しい授業が待っておるぞ。今日はゆっくりと寝て、明日からの勉学に励め。」
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