☆  ★  ☆  ★  ☆


─── 昼休み。

 レオンとセリオスは、昼食を終え、たわいの無い雑談を楽しんでいた。

「……それでな、タイガのやつ登校初日なのにすんげー寝坊するから…」
「はい、これ…」
「えっ?」
 突然の女性の声に驚く2人。
 その女性の手には、桜色をした巾着包みが一つ乗っていた。
「マラリヤ、これって…」
「くれんの?マジで!?」
「…義理よ。作りすぎて余っちゃったのよ。皆で分けて食べて頂戴」
 そう言うとマラリヤは、2人で挟んでいる机の真ん中に、その包みをぽん、と置いた
「へぇ〜、マラリヤも結構女の子っぽいところあるんだなー、見直したぜ!」
「大きなお世話よ」
「本命が誰なのか、、、気になるところだな」
 珍しくセリオスがはやし立てた。
「なーなー、誰だよ?」
 マラリヤは振り返り
「……それじゃ。私、次は実験室だから」
 と、ドアの方へ向かった。
「…おい!教えてくれてもいいじゃねーかよ!」
 文句を言う2人を尻目に、マラリヤは教室を出ていった。

「…まあ、義理でも貰えただけラッキーとすっか」
 レオンが言う。
「そうだな。ところで、まだ時間もあるようだ。早速食べるとしよう」
 と言うが早いか、セリオスは包みを開け始めた。
 包みはリボンで丁寧に縛ってある。
 デフォルメされた亀のキャラクターが描かれたリボンだ。
「マラリヤのことだから、きっと赤とか紫のチョコレートだったりしてな」
「…レオン、お前彼女にどういうイメージを持っているんだ?
 それに、赤いチョコはストロベリー味のがあるし、最近は
 ブルーベリーのエキスが入った紫色のチョコが出ているらしい」
 レオンは、へぇ、と感心するが、すかさず続けた。
「いや、樹海の奥深くで採ってきた、赤や紫色のキノコが入ってるかもしれないぞ」
 そこで、リボンを解き終えたセリオスが言った。
「あっはは、そんな恐ろしいチョコレートが存在…うっ!」
「どうした!?」
「…この色は…!」


     ☆  ★  ☆  ★  ☆


「どう見ても、『緑色』ですね」
 カイルが、十何粒かあるチョコレート(とマラリヤが主張した固形物)のうち一つを
 ハンカチ越しに掴み、色々な角度から眺めている。
「何エキス入りだと思う?」
 レオンがカイルに尋ねる。
「う〜〜ん………このリボンで緑となると、やはり…」
「やめてくれ…」
 セリオスが、力なく机に突っ伏した。

「はぁーあ…マラリヤは『明日感想聞かせて』なんて言い出すし…
 捨てたら捨てたで祟られそうだし…」
 と、レオンがため息混じりに言った。
「貰ったものを捨てるのは良くないですよ」
 カイルが言うと、セリオスが頭だけを起こして
「それはそうだが…なら、これを食べろというのか?」
 と情けない声で言った。
「う、うーん、それはちょっと…
 爬虫類の中には、サルモネラ菌を持った種類もいると聞きますし…」
 いつに無く困るカイル。
 レオンとセリオスも、巾着を見つめながら考え込んでしまった。


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