完璧なソトヅラでいるためには
同性同士に気を使うのが大切。
女の子の前だからこそ
少しボロが出たらもうおしまい。

リーベ女学園で働くことが決まっても
仕方なくとか嫌々とかそんな気持ちとは関係なしに
気を緩めたつもりはなかったものの。

あの店にふたなりが在籍中と知っていれば
もう少し警戒したのもまた事実。

ロッカーを漁られて靴下の匂いを嗅がれたり。
制服にカウパーをなすり付けられたり。
カーディガンに○ン毛を編み込まれたり。

陽芽が被害に気付いたのは
犯人と犯行現場に出くわしてからだった。

『優しそうなお姉さんだな』と一度は好印象を抱いた相手。
その美月が犯人だった。

彼女はパンツから毛の塊と一緒に取り出した包茎ちんぽを
親指と人差し指でつまんで
秒間１０回くらいのものすごい勢いで摩擦して
陽芽の鞄にザーメンをぶっかけようとしていた。

さすがに陽芽も驚いた。
でも第一印象とソトヅラが何の当てにもならないことは
自分で一番よく分かっていた。

だから驚いたのはその気持ち悪さにであって
美月が変態ふたなり女だったことは
「ああそうなんだ」という程度だった。

スカートの中にちんぽが付いているかなんて
中身を見るまで誰にも分からない。

「あんた」だの「この人」呼ばわりで
意地悪をされた理由も納得がいった。
裏でこんなことをしていたからだ。

さて悲鳴をあげるか、黙っているか。
陽芽の選択肢はふたつあった。

声をあげればすぐに人がやってきて
店長なら左手一本で半殺しに懲らしめてくれるだろうし
自分はリーベを辞める口実も手にできる。

でも黙っていれば―――どうだろう？
途方もない貸しを作って
何でも言いなりになる美月を手に入れたほうが
後々自分が得をするのでは？

玉の輿に乗って大金持ちと結婚するために。

いつか夢を叶えて出会った億万長者が多少の変態でも
可愛く照れる演技ができるくらいの余裕を準備しておくために。

常識的に考えて
この先これよりひどい変態に遭遇する可能性は低い。
だったらこのふたなり女を今のうちに利用して
変態への耐性を作っておけば将来きっと役に立つ。

高学歴で高収入で顔も最高
（だけどちょっと変態）なお金持ち。
現実味のある結婚相手としてぜんぜん悪くない。

陽芽は得意の作り笑顔で天使のように微笑み
しぼんだちんぽを丸出しのまま
通報の恐怖にｶﾞｸｶﾞｸﾌﾞﾙﾌﾞﾙ震える美月に歩み寄った。

姉妹の契なんて最初からどうでもよかったし
今はもっとどうでもよかった。
シュヴェスターだがシュメルツァーだかシュヴァインシュタイガーだったか。

そんな言葉よりも
取り上げた美月のスマホに残る大量のエロワードの検索履歴を
一つずつ本人に読み上げさせてその意味を説明させるほうが
ずっと面白くてすぐに覚えられた。

立場は完全に逆転し
陽芽が美月に命令できる側だった。
もちろん彼女は何でも言いなりだった。

アニメショップで等身大抱き枕とオナホールを買わされ
全裸で四十八手の実演をさせられるなんて
まともなふたなりならやる前に逃げ出して
非常階段から飛び降りるレベルの屈辱だが
結局のところド変態の美月にとってはある意味ご褒美というか
願ったり叶ったりのシチュエーションでもあるわけで
「じゃあ駅弁の次、ヘリコプターマンお願いしますね」
などという陽芽の無茶な要求にも全力で応えるのだった。

美月の心の中では否応なしにも
エロマンガでよくあるハッピーエンドへの期待も膨らんだが
陽芽はエロマンガを読まないのでかみ合わない。

プリント面が硬い抱き枕にしがみつき
真剣な表情で腰をカクカク振る美月は
自分が埋められる穴を掘る死刑囚なみの間抜けさだった。

でもとりあえず掘り続けてさえいれば
刑は猶予してもらえそうだった。

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