かつて商店街といえばそれぞれの町に少なくとも一つはあるもので、
それどころか地域によっては半径数百メートル圏内に三つも四つもが共存している場合も珍しくはなかった。

しかし、安くて豊富で年中無休のスーパーが登場し、それがごく当たり前のものになるにつれ、
町の商店街は廃れてゆき、年を追うごとにシャッターが閉じたままの店が増え、
それらはやがて取り壊され跡地には家が建ち、いつしか商店街の面影は消え、
一戸建てが立ち並ぶ通りにポツリポツリと個人商店が残されているばかりとなる。

いやそれならまだマシで、怪しげな宗教の集会所が華々しく建立されたり、
放火でわずかに残った店まで失われてしまうと、もはや目も当てられない。

そういった悲惨な商店街が当たり前の現代の日本において、
うさぎ山商店街は桃源郷とも呼ぶべき理想的な姿を保ち続けている。
そんな商店街で、魚屋「さしみ」を夫と共に切り盛りする妻の真理は、
愉快な仲間と共に日々充実した生活を送っていた。

しかし、定休日に夫が出かけ、一人で家にいて暇になると、
ふと『満たされない』という感覚が、心の中をよぎることがあった。
それは明るい性格の真理には味わい慣れぬ、胸が締め付けられるような切ない感情だった。

そんな時に限って、テレビから聞こえてくる化粧品の宣伝が、ひどく耳に付くのである。

『あなたのお肌は大丈夫ですか?』

その問いかけにドキッとなる真理の心。
普段全く気に留めていない事柄について、思わず考えてしまう。

真理は鏡を手に取り、そこに映る自分の顔を見つめた。
すると鏡が教えてくれるように、何かが欠けて焦る心の理由を、真理は悟るのだった。

それは、女としての自尊心だ。

『さしみさん』と呼ばれ、いつも似たようなピンクの服にエプロンとゴム長が正装と化している自分。
それはまさしく『魚屋のおばちゃん』であり、事実誰も彼もが、自分のことをそう思っている。
けれども本当は、絶対に口になど出しては言えないけれど、『魚屋のお姉さん』でありたかった。
真理はまだまだ女であるべき年齢なのだ。

身近に最も理想とすべき同性がいることが、真理に女を自覚させる要因でもあった。
すなわち、たまやの娘、たまこだ。

確かに以前から可愛かったが、高校生になってからさらに一段と可愛くなり、
その衝撃度はもはや天界から舞い降りてきた天使と同等である。
おまけに最近は頭に鳥を乗せているせいで、服に美しい羽毛が付着していたりして、
天使っぷりにますます磨きがかかっている。

たまこは真理にとり、決して異次元の存在ではなかった。
なぜならかつては真理も、たまこのようであったのだ。
モチモチと弾力のある透き通るように白い肌、心地よく響く高い声、
ただ伸ばしているだけで美かった髪。
それらの全てを、かつて真理も持っていた。
しかし今は、若さと共に全て失い、女という性だけが残っていた。

もちろん夫は、自分を女として扱ってくれる。
それについては何の不満もない。
夫婦生活だってそれなりにある。
ただ、真理の自尊心を満たすには、決定的に刺激が不足していた。

鏡を上にして見上げたり、横顔を映してみたりして、真理はため息をついた。
今の自分は、女としてどのくらい魅力があるのだろう。
それを夫ではない誰かに証明してもらえたら、きっと自尊心も満たされるはずだ。
一度でいいから試してみたい、という衝動に真理は駆られた。

とは言え、出会い系サイトにアクセスして、
熟女マニアの気持ち悪い変態におだてられる気にはとてもならなかった。
変な予備知識や経験など一切無しに、純粋に自分を見てくれる、
要するに少年のような異性が、真理の希望だった。

無論、通常であれば魚屋のおばちゃんがそんな素敵な男子と出会えるわけがない。
が、真理は既に、そんな男子と知り合いだったのである。
確かに以前からそれなりだったが、今やちょっとやそっとじゃ見かけないほどの美形に育っている、
年中片想いの童貞男子高校生。大路屋の息子、もち蔵。
冷静に検討すれば、現実的な相手として、もち蔵は条件を揃えた唯一の選択肢だった。

もち蔵がたまこを好きなことは周知の事実である。
しかしはっきり言って、男子高校生の恋愛感情と性欲など、完全な別物なのである。
どんなに好きな娘がいようとも、毎日エロ本やらAVを見てオナニーするのが当然。
ならばそういった不健全な行為に耽るよりかは、
生身の女を相手にきちんと性欲を発散させるほうが、教育上はよほど正しいに決まっている。
いささか都合の良すぎる解釈かもしれないが、真理はとにかくそう考え、もち蔵を誘惑してみることにした。

上手くいかなければ、死んだほうがマシなくらい恥ずかしくて情けない。
しかし真理にはそれなりの勝算があった。
若い頃には痴漢された経験もあるし、男の醜い本能を一応は理解していたからだ。
それは程度の差こそあれ思春期以降の全ての男に共通であり、もち蔵だろうと例外ではないはずだった。

そして計画は見事に成功した。
真理の期待した通り、いやそれをはるかに上回る度合いで、もち蔵は真理の虜になった。
困ったことに真理も、もち蔵の引き締まったみずみずしい若い肉体に、予想以上に夢中になってしまった。

週に一度の定休日。
逢瀬の機会はただ一度。
ちょうどもち蔵が学校から帰ってくる時間帯に、旦那が外出していることが絶対条件。
もしその条件が整えば、真理は店の閉じられたシャッターの隅から、
魚を梱包するのに使われているプラスチック製の紐を、ほんの一センチだけはみ出させておく。
それがもち蔵への合図だ。

紐を出したら、真理は急いで洗面所へ向かう。
そこで乙女のように買い揃えたオーラルケア用品を使い、二回りも年下の男の子とキスをする準備をする。
そうしているだけで、真理の胸は高鳴った。
その心地良い緊張感は、まさに焦がれていた刺激だった。

ほどなくしてやって来たもち蔵を家の中へ招き入れると、
真理はさっそく買っておいたコーラをコップに二つ注ぎ、片方をもち蔵に差し出した。
正直なところ、今どきの男子高校生がどんな飲み物を好むのか検討もつかなかったが、
真理が「おいしい?」と尋ねると、もち蔵は素直に「はい」と頷いてくれた。

「が、学校はどうだった?」

真理は自分でそう言った直後、心の中で(私ったら何バカなこと聞いてるのよ)と自嘲した。
だがもち蔵は真剣な顔で、

「真理さんのことを考えていました」

と答えた。

「…え?」

照れ紛れにコップを口に運ぼうとしていた真理の動きが止まった。

「俺、授業中もずっと、早く真理さんに会いたいって…。そればかり、考えてました」
「も、もち蔵…」

もち蔵が顔を近づけてきた。
真理は反射的に仰け反ってしまった。
彼の肌は女の子のようにスベスベとしてキメが細かくて、それを間近で見たら、
自分のカサカサで小じわが目立つ顔が、恥ずかしくてたまらなかった。

「真理さん、どうして逃げるの…?」
「だ、だって…」

泣いてしまいそうで、言葉が続かなかった。
するともち蔵は目を閉じて、真理にキスをした。
ひんやりとしてコーラの味がする舌が、口の中に入ってきた。

「んっ…んんっ…」

もち蔵に抱きしめられ、真理は体をよじらせた。
侵入してきた舌に自分の舌を絡ませ、彼の唾液を吸った。
キスをしているだけで、パンツの中でアソコがびしょびしょに湿ってゆくのが、自分で分かった。

「ま、待ってねもち蔵、今、脱いじゃうから…」

真理は彼を待たせて服を脱いだ。
ルーズな太めの服の下からは、それとほとんど変わらない太い体が表れた。
くびれはほぼ消え、乳房は張りを失い垂れかかっている。
遠目に見たら、ひょっとすると男と見分けが付けられないかもしれない、恥ずかしい体。

「真理さん…」

そんな彼女の裸に向かい、もち蔵はまるで美しいものを見たかのように、感嘆の声を発した。
少なくとも今の彼にとり、真理だけが唯一知っている“女”なのだ。
キラキラと澄んだ瞳で見つめられ、真理の腰は砕ける寸前だった。

「も、もち蔵も脱ごう…」

真理はすがるように彼のベルトをカチャカチャと外し、ズボンを脱がせパンツを下ろした。
すると、勢い良く飛び出したペニスがバチン!とお腹にぶつかった。

「あぁ、なにこれ、すごいわ…」

真理はうっとりしてそれを握った。
興奮したもち蔵のペニスは、包皮が伸びきり亀頭が完全に露出し、ものすごい角度で勃起していた。

「お願い、もち蔵、これ、ちょうだい…」

シコシコと手を動かしながら、真理はねだった。
自分の裸を見て発情してくれた若いオスが欲しくてたまらなかった。
もち蔵は黙って真理を押し倒し、股を大きく開かせて、陰毛に覆われ黒ずんだ性器を舐めはじめた。

「あぁぁんっ!!」

真理の体が跳ねた。
大きくはみ出た秘唇の内側を舌で丁寧に撫でられたり、
長い陰毛をかき分けて見つけたクリトリスを唇で優しく吸われると、
その度に真理は声を上げ、体をビクビクと動かした。

「真理さん、俺、もう…」

ずっと黙っていたもち蔵も、たまらず声を出した。
根元まで真っ赤になったペニスを跳ねさせながら、許可を求めた。

「う、うん、来て、もち蔵…硬いの、私にちょうだい…」

真理は目を潤ませて、彼の両腕を握った。

「じゃあ、入れるよ、真理さん…」

もち蔵は彼女の脚を揃えさせ、ペニスを押し当てた。
締まりの弱い膣口に大きな亀頭がズルッと入ると、後は根元まで簡単にズルルルッ、と入っていった。

「ぁぁあああっ!!」

体の深くから空気が押し出されるように真理が嬌声を発した。
それは最初長く続き、それから一度途切れて、息継ぎを挟んだ後は、小刻みに連続して発せられた。
もち蔵が腰をピストンさせて、ペニスを出し入れさせたからだ。

彼は自分よりずっと太い真理の体を強く抱きしめ、
まるで『丸太にしがみつく』ようにして必死に腰を振った。
パン!パン!パン!ともち蔵の腰が尻に打ち付けられると、
それに合わせて真理は「あんっ、あんっ、あんっ!」と悦んだ。

「ごめん、真理さん、出ちゃいそう…!」

がむしゃらに腰を振ったもち蔵は簡単に限界に達した。
なにせまだ童貞とほとんど変わらないので、感触の良し悪しも関係なく、
温かくて濡れた女の膣に入れたというだけで、数分と持たなかった。

「い、いいのよ、もち蔵、そのまま出しちゃって!!」

真理は激しく興奮していた。
自分の肉体が、こんなに若くてカッコイイ男の子に十分過ぎるほどの刺激を与えられていることが最高に嬉しかった。

「ううぅぅっ!」

数秒後、もち蔵がうめいた。
ペニスが数回脈打つと、少し遅れて熱い精液が膣の中で広がってゆくのを真理も感じた。

「あぁ、出てるわぁ…」

深く息を吐き出し、真理は体の奥から伝わるもち蔵の感触に意識を集中させた。

「…たくさん出たわね」

やがてペニスの脈動が終わると、真理は子供を褒めるように、もち蔵の背中を撫でた。
しかしそれでは終わらなかった。
ひとしきり呼吸を整えたもち蔵は、
ユサユサと真理の体を揺さぶるように、再び腰のピストン運動を再開させた。

「も、もち蔵?!」

真理は慌てた。
一度射精したはずのペニスは少しも萎えることなく、
鉄のような硬さを保ったまま膣に突き刺さり、それがズルッ、ズルッと出し入れされていた。

「ま、待って、もち蔵、一回出したのに、続けてされたら…
こ、声が…へ、変な声が、出ちゃうからぁ…?!」

恥ずかしい理由を説明する真理に、さっきまで一切余裕がなかったはずなのもち蔵が、微笑して囁く。

「真理さんが本当に気持ちよくなった時に出しちゃうあの低い声、俺、けっこう好きなんだけどな…?」
「ああ、ダメっ、そんなこと言いながら動かれたら、ホントに声、で、出ちゃうっ…!」

だがもち蔵は止まることなく、むしろ徐々に動きを早めた。
真理は耐えられず、とうとう鳴いてしまう。

「あ゛あ゛っ?!すごい゛い゛っ!お゛お゛っ!お゛んっ!お゛んっ!お゛んっ!」

夫にも聞かれたことがない声で、真理は歓喜を表現した。
その声はもち蔵を夢中にさせた。
二人の体がきつく合わさり一つになり、もち蔵の腰だけが別の物のように高速で振動し、
膣からグチャグチャと愛液が飛び散った。

「真理さん、イキそう…?」
「イ゛イ゛ィィィ!!い゛、今、イ゛ッダッ!!あ゛あ゛あ゛!でもまたすぐイクからあ゛っ!」
「真理さん、真理さん…!」
「もち蔵、動いて!動いて!またイカせてっ!!
あ゛、そうっ!それいいっ!い゛いっ!またイ゛グッ!!」
「お、俺もまた出ます…!」
「あ゛っ!あ゛っ!イ゛グッ!イ゛グゥゥゥ!!イ゛グゥゥゥゥゥン゛ン゛ッ!!!」

真理の絶叫に合わせるように、もち蔵も同時に射精した。
白く泡立つ膣の中に、再びドロドロの濃い精液が大量に注がれた。
亀頭を持ち上げるようにペニスは何度も跳ね、ビュッ!ビュッ!ビュッ!と射精が続いた。

声がかれた真理は、もはや絶叫出来ず、うめき声のようなものを発して、うつろに天井を眺めた。
もち蔵も彼女に乗っかったまま、額に汗を浮かべていた。
二度目の射精が終わると、ペニスはゆっくり柔らかくなり、膣からトロリと抜け落ちた。

二人ともしばらく抱き合ったままで、しばらくしてからもち蔵が彼女の隣に移動した。
真理は自分で腕枕をして、彼のほうへ体を向けた。
もち蔵は半分起き上がるようにして、彼女を見下ろした。
真理はいたずらっぽい目をして、もち蔵を見上げた。

「ねぇ、もち蔵。こんなふうにセックスするのを、どうやって覚えたの?」
「そ、それは…」
「うふふ。やらしいビデオとか見て、勉強してるんでしょー?」
「ち、違います…よ…」

もち蔵の歯切れは悪い。

「あらぁ、本当かしらぁ?」

真理がわざと意地悪く追求すると、もち蔵は赤面しながら答えた。

「そ、そういうのは全部、処分しましたから。身を清めるために…」
「プッ。なによそれ〜。アハハハハ」

そんなことを言われると、つい本気にしそうになる。
けれども、そんなことは有り得ない。
だから、真理は笑った。

この関係はいずれ終わってしまう。
それはきっと、もち蔵の恋が成就した時に違いない。
その頃には自分は今よりもっとおばちゃんになっていて、もう二度と見向きもされないだろう。

だから、今だけは、たぶん神様も許してくれるに違いない。

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