「…やっぱり…今日もだ…」

本を読んでいたチアキが時計を見て、ため息をつくようにして言った。

「おい、カナ。最近ハルカ姉さまの帰りが遅くなったと思わないか?」
「んー?そうかぁ?」
「遅いと言っても、ほんの少しなのだが…。多分、10分とか、15分とか…」
「いやぁ、それは気のせいだろー。あたしらだって、毎日同じ時間に帰ってくるわけじゃないんだし。」
「まぁ、そう言われると確かにそうなんだけど…」
「あれだよー。トイレにでも行ってんじゃないの?」
「…トイレ、ねぇ…。」

チアキは表情を曇らせた。

最近ハルカの帰る時間が少しだけ遅くなっているのは、
カナの言うとおり、トイレに行っているからだった。
だが問題は、ハルカが1人でトイレに行っていないということだった。
個室の中には決まって、ハルカともう1人の女子生徒の姿があった。
長身で、ショートで、時々語尾を伸ばす特徴的なしゃべり方で、いつも楽しそうに目を細めている3年女子…。
それはつまり、速水であった。

もしここまでの事実をチアキとカナが知ったとして、それでも2人には、
なぜハルカと速水が毎日トイレで時間をつぶしているのか、さっぱり理解できないだろう。
だが、もしそこに、速水がふたなりであるという大前提を付け加えたらなら、どうなるか。

ハルカも速水も、性衝動が最も強いお年頃。
それが、毎日放課後のトイレの狭い個室の中で2人仲良く篭っているなんて。
少なくともカナなら、口で言えないような行為に耽っているのではないかと、すぐにピンとくるはずだ。
カナがしばしば口にしている表現を使うのならば、そう、まさに、
「おかしなことになっている」のではないか、と…。

「いやぁ、参ったわー。ホームルームが長引いちゃったから、今日は5分しか時間がないのよー。」
「じゃあ、急がないといけませんね。」
「そうなのよー。でも、まずはやっぱりキスからはじめましょ…んふっ…」

速水はハルカを抱き寄せ、キスをした。
部活前のわずかな時間を利用して、こうしてトイレでこっそりハルカにフェラ抜きしてもらう。
ハルカのお弁当をつまみ食いするのと同じくらい、速水にとって幸せなひととき。

「ちゅぱっ…ンッ、ふぁ…ズズッ…」

互いに顔を押し付け合い、舌を絡ませる速水とハルカ。
速水のペニスが、ハルカのツバの味で熱を持つ。
下を向いていた先端がピクンッ、ピクンッと大きく跳ねながら、その度に太さと硬さと角度を増やしていく。
やがて肌色の包皮の部分が伸びきると、隠れていたピンク色の先端がムキッとあらわれ、
その周囲に帯のように巻きついていた極薄の包皮がいやらしく捲れながら、
そこからさらに倍近くペニスの全長を伸ばしてゆく。
まだ熱しきれていない薄いピンク色だった先端が赤くなり、
光沢でツヤツヤ輝くくらいに表面に張りが出たら、数段階を経た勃起がようやく完全になった。

ほとんど目立たない無害そうだった小さな突起は、
今や裏筋を盛り上がらせおへそに届きそうなくらいの長さまで反りながら硬くなり、
見るからに敏感そうな先端を真っ赤にしつつ、カリを立派に張り出させていた。

「ちゅるっ…ン、そろそろいいわ。」

速水は抱擁を解き、ハルカはその足元で膝を付いた。

「いいですよ、速水先輩…」

心得ているハルカは目を閉じ顔を上げ、上品に口を開いた。
綺麗に並んだ白い歯と、唾液の溜まった温かそうな舌。
速水は興奮に目を細めながら脚を広げて腰を落とし、
右手をハルカの後頭部に、左手を顎の下に添えた。
待ってくれているハルカの口に、腰を使って高さを調節しながら、
まるで性器同士を結合させるかのような慎重な仕草で、ペニスをハルカの口内にゆっくりと挿入した。

『…クプッ』

「っく…はぁぁ…」

ハルカのほっぺの裏側のトロトロとした粘膜と擦れながら、先端部分がちょうど収まった。

「ふぁあああっ!」

と、突然速水が高い声で乱れはじめた。
無抵抗を装っていたハルカが、挿入の動きが止まったと見るや、
途端にプルプルの唇にシワを寄せて、カリ首の周囲をキューッと締め付けたのだ。
さらに口内では、舌をパタパタと動かして、剥き出しになった粘膜を撫でまわす。

『むちゅっ〜…ズチュルルッ!レプッ、レプッ!ズチュルル〜〜!!』

「はぁぁ〜〜!これ、すご過ぎっ!とろけちゃいそう!あぁぁ、気持ちいい〜っ!」

速水は声とおしりをブルブルと震わせながら、 浅く小刻みに腰を振り、貪欲に奉仕してくれるハルカの口唇と交わった。
その言葉に合わせてペニスが嬉しそうに震え、鈴口からトロンと粘液が漏れ出した。

この状態に達するまでに、普通ならばじっくりと丁寧に時間をかけて快感を高めていかなければならないはずだが、
ハルカにしてもらう場合は違う。
そんな通常の苦労がバカらしく思えるほど、あっとう間に絶頂が近づいてくる。
それも、短時間に大急ぎで作り上げた、とにかく多少なりとも精液を出すだけ、
というような安っぽい絶頂ではない。
時間のかけ方などとは無関係に、腰が抜けてしまうような快感と、
それに見あうだけの大量の精液が元気に噴き出す絶頂を迎えさせてくれる。

『ピュルッ!ピュッ!』

ハルカの口の中ではじける、うっすらと精子の匂いが交じった少し苦い汁。
その味で、ハルカも速水の性感が順調に高まっていることを理解した。

「ンッ…ハルカちゃん、もう少しでいけそう…
ねぇ、いつもみたいにして…いつものアレをやって…」

速水は腰を振るのをやめ、ハルカに添えていた手も離した。
ペニスを委ねられたハルカは顔を上げ、視線で返事をすると、
すぐにまた目を閉じ、真っ赤になっている先端をパクッとくわえた。

『クプッ、クプッ…』

まず数回モゴモゴと口を動かし、くわえこんだカリ首の根元で、最も唇を密着させられるポイントを探す。

『むちゅ…ズルッ!』

場所が決まったら、さっそくキュッと唇を締めつける。
唇の端から唾液があふれ、少し音がする。

『…ちゅぅぅぅ〜〜〜!!』

そして静かに息を吐いた後、ハルカはものすごい強さで速水のペニスを吸い上げた。
すするどころではない、文字通りの吸引。

「アアアッ!!」

ガクガクと震える速水の膝。
個室に彼女の声だけが響いた。
フェラチオ特有の、いやらしい水音はほとんどしない。
だが、吸い付きの激しさに合わせて淫らに変化したハルカの顔つきは、速水の興奮を著しく煽った。

「ぁああンンッ!すごいっ!ハルカちゃんのバキュームフェラ最高っ!!」

最も敏感な部分だけに集中して加えられる刺激。
快感と苦痛の境目の、ギリギリのところ。
これが「気持ち良すぎる」という本当の状態。
ちょっとでも間違えれば苦痛に変わって、勃起が萎えてしまうかもしれない際どい領域。

「あっ!っく、ぅああっ!ひぃっ!!」

あまりの快感に速水は思わず腰を引きそうになってしまう。
痛みになれることができないように、この限界寸前の感覚は何度体験しても慣れることができない。
するとハルカは、手を一切使わないままさらに激しくペニスに吸い付いて、その腰ごと速水を吸い寄せた。

『っちゅちゅちゅ〜〜!ちゅぅぅ〜〜!』

「もっ、もういきそうっ!ハルカちゃん!すっごく濃いのが出ちゃうっ!!!」

必殺のバキュームで、速水はたまらず絶頂を催した。
ハルカは素早く舌でペニスの先端を覆い、飛び出す精液で喉を狙い打ちされないように準備をする。
その際、精子が出にくくないように、舌の表面と鈴口との間には、少しだけ隙間を作ってあげた。

「…っ、うぁあああっ!いくっ!いくっ!」

『ドプッ!ドプッ!ドロドロドロッ!』

一直線に噴き出した水あめのように濃い精液が、ハルカの舌にぶつかりながら口の中いっぱいに広がってゆく。
ハルカは吸い付きを弱めながら、速水が苦痛なく射精ができるよう優しい刺激にシフトした。
最もペニスが敏感になるこの瞬間に先ほどの要領でバキュームを続けていたら、
刺激が強すぎて射精出来なくなってしまうからだ。
ハルカは唇でカリの根元を適度に締めながら、
精液がペニスの内部を上ってくるのを促すように、等間隔で「ちゅ〜、ちゅ〜」っと優しく吸ってあげた。
速水が出した愛液は全てこぼさず口の中に溜めておきながら、休むことなく吸い続ける。

『ビュルル…ビュルル…』

「ハァ…ハァ…ハルカちゃんごめんね…もうちょっと出そう…」

『ドピュッ…ドピュッ…』

「ンンッ…あと少し…これで最後かも…』

『…ピュッ!』

腰をビクンと突き出して、速水が最後の1滴をハルカの口内に絞り出した。

「ハァ…な、なんとか今日も時間に間に合ったわね…ンンッ、もういいわよ…ハルカちゃん。」

このまま余韻に浸りたいところだが、そうもいかない。
射精を終えた速水は手早くハルカの口からペニスを抜き取った。
まだ弱く吸い続けてくれていたので、「チュポッ!」と気持ちの良い音がした。
ハルカの唾液でネットリしているペニスはまだ硬いままだったが、
このまま放っておけばそのうち何とか収まるだろうと、速水は無理やりペニスをショーツの中に押し込んだ。
それから手のひらを差し出して、ハルカの口の下に当てがった。

「ね、見せてよ。私の精子。」

速水が促すと、ハルカはコクンと肯いて口に溜まっていた精液を吐き出した。

『だらぁ〜…』

桜色のハルカの唇の間から、白く濁った卑猥な粘液がドロドロと流れ出して速水の手のひらに溜まっていく。

口から物を吐き出すという下品な行為は、
ハルカの清楚な印象からはとても不似合いで、それが速水を興奮させた。

「ンッ…先輩の…いつのものより濃かったです…」
「それにすごい量よねー。自分でもびっくりしちゃう。」

たっぷりネトネトを吐き出させた速水は、自分の手のひらに溜まったそれを便器の中へ捨てた。
ボタボタボタッ、という重たそうな音がその濃さを示していた。

『ガコン…ジャーーッ!』

便器にへばり付いた精液は、勢い良く流れてきた水流によって、
やっとこさという感じで剥がれ下水管の中へと消えていった。

速水は自分のハンカチで、汚れたハルカの口元を拭ってあげた。

「ありがとう、ハルカちゃん。すごく嬉しかった。」
「お礼なんて言わないでくださいよ。」
「おかげで今日も練習がはかどりそう。」
「良かったです。がんばってくださいね。」
「なんだかつくづく、保坂には悪いと思うわー。だってあいつ、
未だにハルカちゃんのこと本気でマネージャーにしたがってるから。
ハルカちゃんはもう、私の専属マネージャーなのにねー。」

ハンカチをポケットに入れた速水は、ハルカのさらさらの髪に指を通す。

「部活が終わったら、まっすぐお家に行くわ。今日は泊まれるから、夜に続きをいっぱいしましょ?」
「はい、先輩…」

2人は約束を交わした。

チアキとカナは夢にも思わないだろう。
眠っている自分達の数メートル先の壁の向こう側で、
ハルカと速水が一晩中「おかしなこと」になっているだろうとは…。

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