人間性がクズでゴミでカスでダニのような真咲(ふたなり)といえども、車に轢かれるくらいの確率でごくまれに純粋な被害者になることもあった。
トカゲの部屋の掃除企画の際、あのときばかりは本当に真咲は悪くなかった。吸血鬼の能力を使わないことが当初からの意図であったし、煽った結果ああなったわけでもない。
だから、ゆきから受けた不当な仕打ちには相当な恨みを抱いていた。
もともと真咲のような先天性の人格障害持ちは被害妄想にとりつかれ、
常に脳内デフコン1の臨戦態勢で周囲を敵視し先制攻撃の機会をうかがっている。そんな女(童貞)が本当の意味での被害者になってしまったら――。
もちろん、マザーから特別の信任を受け生殺与奪の権限まで与えられたゆきの心臓を杭で打つような真似は、ザコな真咲には到底不可能だった。
しかし一方で彼女のエロ尻を隠し撮るのは、ゲスな真咲が本気を出せば簡単に実行できた。なにせ撮影に関してはプロだった。
そもそもが今どき『ゆきりんこ』のハンドルネームで「こんゆき〜」などと言う自分を本気で可愛いと思ってしまう彼女には時代錯誤な面があり、マザーへの報告や血の配給を終えた帰り道に、あの容姿で深夜の公園やコンビニのトイレに立ち寄り、自分の家のトイレの代わりに気軽に使うという、現代人の感覚ではおよそ信じがたい無用心な行動を、日常的に平然と繰り返していた。
だから真咲が盗撮で報復するのは必然だったし、その動画をネタに脅してアナルセックスを強要しようと企むのもまた必然だった。
撮影した動画はまずオカズとして100回くらいオナニーに使ってから、ゆきが晩杯荘に顔を見せたタイミングで、彼女を自室に連れ込み脅迫した。
*
「…それで、何が望みなの?」
真咲が撮影した2本の動画《マザーへの報告を終えた帰り道に、ゆきが深夜の公園の和式便所で太さ8センチ長さ50センチのうんこを無音でひり出した後、尻を拭かないばかりか全く流れないうんこにビビってそのまま放置し逃走する動画》と《配給を終えた帰り道に、ゆきが深夜のコンビニの和式便所で太さ5センチ長さ無限大のうんこをひり出して巻きグソを練った後、尻を拭かないばかりか全く流れないうんこにビビってそのまま放置しチロルチョコを一個買って逃走する動画》を見終えた彼女は、静かに口を開き真咲を睨んだ。
強気を保っているつもりだったが、ブラウスの両脇には巨大な汗染みが出来上がっており動揺しているのは丸分かりだった。
真咲はハァハァ口呼吸しながら、
「一発やらせてよ、ゆき。やらせて。もちろんアナルで。アナルセックスさせてよ。へへへ」
――と、築80年の洗面台の排水口から頭を出したゴキブリのような顔で言った。
「……」
ゆきはうつむいて沈黙した。
「断る?断れないよね?断れるわけないよね?おらおら、黙ってねーで5秒以内に返事しろよ、はい、3、2、1!」
「…本当にそれで、一回だけしたら、動画は必ず削除してくれるの…?」
顔を上げたゆきは真咲を見つめた。真咲の鼻の穴がもわぁっと膨らみ鼻毛が出た。
「そりゃあもちろん約束するよ。誓約書でも血判でも血統書でもお望みなら何なりと」
とてもうさんくさいと思ったものの、結局ゆきに選択肢は無かった。トイレを詰まらせた負い目も多少はあった。
「…分かったわ。その条件で構わない」
彼女はおとなしく納得した。
「ぐへへ、話が早くてマジ助かるっす」
真咲の顔は、吸血鬼のゆきですら見たことのない醜い怪物だった。
「んじゃ、まずはフリスクからお願いしま〜す」
真咲はニヤニヤしながら嫌味っぽくケースを渡した。
ゆきは苛立ちをこらえ全粒(普通の人間の致死量)を一気食いし黙ってケースを返した。
「おおう?!や、やべっ、もしかしてこれで準備完了?!キスしてもいいの?!キスしても安全?!」
無表情でゆきがうなずいたら、真咲の興奮はさらに高ぶった。
「あ゛?!ちょっと待った!やっぱキスより先にセックスしたい!てかキスなんて時間の無駄だからどうでもいい!セックス最優先!おら!ゆき!とっとと脱げ!早くパンツ脱いでセックスさせろ!アナルこっちに見せろや!」
ゆきは言われるままに服を脱ぎ捨て裸になり、ベッドのふちに乗って四つんばいに尻を突き出した。
さながら断頭台に立つ諦念の境地で彼女の心は静かだった。その奥底では『苦痛は絶対に長引かない』という確信も抱いていた。
なぜなら自分がこんなに卑猥な格好をして相手の鼻先へ桃尻を突き出しているのだ。王様気取りで偉そうに命令してくる真咲も、たちまち目の色を変えて蜜に殺到する昆虫のようにこの桃尻に飛び付き、顔を埋め夢中でちゅぱちゅぱ吸って穴を味わい歓喜するに決まっている。それから今度は短小ふたなりペニスを皮ごと入れてきて、必死の形相で腰をカクカク数秒間動かし、我慢できぬまま中に出したらそれでもう満足なのだ。あとはひたすらニコニコご満悦で妙に優しくされるだけに決まっている、と――。
しかしポーズを決めたゆきの背中に浴びせられたのは、「うわ、なにこれ汚っな!」という冷めた真咲の一声だった。
「え…?」
おもわず聞き間違いかと振り返ると、真咲は『楽しみにしていたシュウマイ弁当の蓋を開けたら中身がフジツボだった』ような顔をしていた。
ゆきは状況が理解できず聞き返した。
「な、何が…?」
「いや、何がって。それシャワー浴びたのいつなん?」
「き、昨日…いえ正確には今日…だけど…」
「今日?今日ってことは実質半日だよね?え、半日でそうなんの?(笑)」
「う、うるさい…!」
ゆきはポーズをやめ手で体を隠した。
「おまえだって風呂は一日一回…それに今日はまだなんでしょう…?!」
「うん。あ、そういや昨日も風呂入ってねえな(笑)」
「ぐぬぬぬ…」
ゆきは真っ赤になり衣服をかき集めてさらに体を隠した。
「あ〜、しげゆき、そんなんしなくていいから、普通にぜんぶ着ちゃって。もういいよ。中止、中止」
*
デスクチェアに腰を下ろした真咲は頬杖をつき「ドウシテコウナッタ…」と気落ちした。
「動画で見たときは椅子から腰が浮くほど興奮してシコれたんだけどなあ…」
「ここ数日ゆきのうんこだけオカズにひたすらシコって、他の作業はなんも手につかなくて、しげゆきのアナルの臭いを嗅ぎたい、しげゆきのアナルを舐めまわしたい、しげゆきのアナルに指を入れてほじりたい、しげゆきのアナルにちんこを突っ込んで中出ししたいって、まじでそれしか考えてなかったんだけど…」
「いざ現物を、ゆきのアナルの実物を生で見たら…」
「ヌルヌルの汁がしみ出た茶色のアナルに尻毛がへばり付いて、その毛先をアナルが巻き込んで引っ張っちゃってるのを見たら…」
「あんなもん舐めてちんこ入れるとか、罰ゲームなんて生やさしいもんじゃなく、処刑前の見せしめの拷問でやらされるレベルの虐待だよ…」
真咲は宇宙の果てを見てきたような遠い目で内省した。
延々それを聞かされる間、すっかり服を着たゆきは膝を抱えプルプルした。
*
内省がひとしきり終わった後、動画の削除をめぐり(少し回復した)ゆきと揉めたが、「ちんこが勃たないから無理」で押し通しひとまず追い返した。
だが真咲としても口惜しさは否めず、なんとかならないものかと思案した。
結局どう控えめに評価してもゆきの顔は地球規模でソロ展開できるアイドル並に可愛いし、声も同じくらい可愛い。これ以上要求するのは非現実的なほど彼女は既に完璧に近い。
無論、《尻毛が未処理》で《アナルが超臭そう》で《うんこが巨大で流れない》という事実はあるものの――。
「ならばオナホを使えば、あるいは…」
着衣のゆきを仰向けにベッドに寝かせ、股の付け根にオナホを挟ませ、すなわち等身大の抱き枕にオナホを装着した状態が再現できれば――。
「おお、やっぱまさ吉さんの企画力は天才だわ…?!」
ゆきの柔らかくて温かい体にしがみつき、腰をヘコヘコ振ってちんぽを出し入れさせる。オナホはもちろん彼女の太ももで温められている。乳を揉み、唇を吸ってツバを飲ませ、最後のフィニッシュ時は耳元で『まさ吉さんのトロトロの早漏童貞精子、ゆきりんこの吸血鬼卵子にびゅ〜ってぶっかけてたくさん受精させてくださいね』と、猫なで声で言わせるのだ。
「いかん、ちんこフル勃起してきた…!」
真咲は短小ふたなりちんぽを取り出し、ゆきの動画をオカズに101回目くらいの皮オナニーを開始した。
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