「ひどいわ、茉莉花さん…!っていうことはつまり、私はただの使い捨てだったの…?!」
「はぁ、何を仰るんです?私はもともと1人で楽しんでいただけですよ。
それを勝手に邪魔して、勝手に勘違いされたのは、かなこ様のほうです」
「そ、そんな…じゃあ、この子のことは、どうしたらいいの…?」

大きくなったお腹に手を当て、すがるような目を向けるかなこ。

「…さぁ」

琥珀色の瞳で無感動にかなこを見つめ返す茉莉花は、興味が無さそうに首をかしげるだけ。

「お願い、捨てないで…私、どうしたらいいか分かんないよ…
ねぇ、茉莉花さん…茉莉花さん…」

『茉莉花さん…!!!』

夢の中で叫ぶ自分の声で、かなこは目を覚ました。

『なんだ…夢か…』

かすれた視界には、真っ暗な天井が広がっていた。
頭の上の時計に目をやると、まだ夜明けまで数時間も残っている。

『やだな、私ったら…どんな設定で妄想してるのよ…』

自慢の妄想力もいささか暴走ぎみ。
それくらい、色々なことが急に起こった。

茉莉花が両性具有というだけでも天地がひっくり返るほどびっくりするのに、
あまつさえその彼女と初体験してしまうなんて。
男嫌いのかなこにとっては、一生癒えない心の傷を負ってしまいそうなはずなのに、
むしろ茉莉花を大好きになってしまった。

もっとも、美少女ならば誰だろうと見境無くとりあえず好意を抱くかなこは、
以前から茉莉花のことが好きではいたのだが、そういう好きとはもはや次元が違う。

たった半日前まで、ただの百合女とそのルームメイトのお付のメイドさんでしかなかった関係。
それが今では、運命の人。

『やだなぁ、私…変な寝言とか、まりやに聞かれてないといいんだけど…』

かなこは壁の反対側のベッドで眠っている鞠也の様子を確認した。

「すぅ…すぅ…」

窓から差し込む月明かりに照らされ、ぼんやりと浮かび上がる鞠也のシルエット。
毛布にくるまれた彼女の胸は、静かに上下して規則的な呼吸を繰り返していた。

『大丈夫…よね。はぁ〜、良かった〜。
…って、あいつは“彼女”じゃないでしょうがー!!』

誰を誘惑するためでもなく、強いて言えば『自分のために』、
やたら可愛いネグリジェ姿で眠っている鞠也を見て“彼”が男であることを思い出したかなこは、
心の中で激しく突っ込んだ。
そして、再び茉莉花のことを考えはじめる。

あの時は勢いで色々と宣言したものの、茉莉花は特に何も言ってくれなかった。
ポッと顔を赤くした反応からするに、まんざらでもないと考えて間違いはないのだろうが…。

『けど…これから何が変わるのかしら…』

かなこが運命を感じようが、茉莉花は鞠也のメイドであり、それはこれからも変わらない。
それに彼女は、事が終わってベッドを離れた途端、まるで何事もなかったかのように涼しい顔をしていた。

『まさか、本当に…う、ううん、そんなはずないわよね…そうよ…だって…』

自分の体にしがみつき震えていた、あの時の茉莉花を思いながら、
かなこは目を閉じ、やがて再び眠りに落ちた。

翌日の夜。
夕食を食べ終え部屋に戻った鞠也は早々に支度を整えると、
洗面道具を小脇に抱え、いささか台詞じみた口調で声を張った。

「さてと、俺はこれから小一時間風呂に入ってくるからな?」

鞠也はかなこと茉莉花を交互に見やり、ニヤァっと意味深な笑みを浮かべる。

「…何かお飲み物をご用意しておきましょうか?」

そんな鞠也の笑みをさらりと受け流し、ごく自然に応対する茉莉花。

「あ〜、そうだなぁ…いや、とりあえずはいいわ」

飲み物なんかよりもっと面白いものをまた用意しておいてくれよ、
とでも言いたげに微笑しながら、鞠也はクローゼットの向こう側の異空間へと消えていった。

頭を下げて主を見送った茉莉花は、くるりと向き直った。
ベッドに座っていたかなこと目が合う。
昨晩と同じ状況。
けれど、茉莉花は唇を結んだまま、何も言おうとしない。

「えっ…えっとぉ〜…」

考えてみれば、茉莉花は用も無いのに自分からかなこに話し掛けたことがあっただろうか。

「わ、私もお風呂…入ってこようかな〜…」

気まずくなったかなこが支度をはじめようとすると、茉莉花が前へ歩み出た。

「せっかくまりや様が気を利かせて2人きりにしてくださったのに、行ってしまわれるのですか?」
「…へ?!」

ビクッとして動きが止まるかなこ。

「え?あ、あの、あれって…限りなくからからかわれてるだけな気がするんですけど…」
「そうだとしても、2人になれたことに変わりありません」

トン、トン、トン、とゆっくり歩いて、茉莉花はかなこの隣に腰を下ろした。

「なぜ、逃げようとなさるのです?また犯されるとでも思いましたか?」
「い、いえ、そんな…」
「まぁ、男が嫌いでレズなんてやってるかなこ様にとっては、
私の体など化け物以外の何物でもありませんよね」
「ば、化け物だなんて…私はそんなことぜんぜん思ってないわ…!」

突然何を言い出すのかと、慌てて否定するかなこ。

「なぜです?」

すると茉莉花は首をかしげた。

「かなこ様はなぜ、私が喜ぶようなことを仰られるのです?」
「え?」

表情が伴わない茉莉花の、少しだけ感情がこめられた声。
かなこはそこで初めて、茉莉花の本意を理解する。

「茉莉花さん…それって…」
「このままでは私、本気にしてしまいますが、よろしいのですか?
昨晩、かなこ様が仰られていたことをすべて真に受けても、よろしいのですか?」

茉莉花は真剣な眼差しでかなこを見据えた。

「…か、構わないわ」

ゴクッと喉を鳴らしてから答えるかなこ。

「全部、言った通りよ…何度聞かれても、変わらないわ…」

かなこが言い切ると、茉莉花の頬が、ポッと赤くなった。

「…こんな感情を覚えるのは初めてです」

自分の胸を見下ろし、そこを押さえる。
まるで、自分でも意外だというように。

「かなこ様…」
「ま、茉莉花さん…」

茉莉花が顔を近づけてくる。 かなこは目を閉じ、唇を差し出した。
数秒後、プルンとした感触が、唇に伝わった。

「ぅぷっ…んむぅ…」

重なった唇の内側で行われる、拙い舌の交わり。
茉莉花のほうが積極的にあごを動かし、かなこを求める。

舌が絡まり唾液が混ざるネチャネチャという音と、ふぅ、ふぅ、という鼻から抜ける荒い息。

『茉莉花さんでも、興奮すると鼻息が荒くなるんだ…あぁ、それにやっぱりいい匂い…』

茉莉花の味と匂いに包まれ、かなこはうっとりする。

「…じゃあ、脱ぎますね」
「あ、うん、いいよ…」

キスが終わると、茉莉花はメイドエプロンを解く。
前回は、かなこ自身のリクエスト(?)で、解いたもののすぐに元に戻してしまった。
だから、彼女がメイド服を脱いでいく様子を、初めて拝むことになる。

『うわぁ、ドロワーズ超可愛い〜…』

可愛い子ならおおむね似合うものなのであろうが、茉莉花の場合、特に似合って見える。
その理由はきっと、鞠也に引けを取らぬほどの顔立ちなのに、ほとんど笑わない表情の乏しさと、
かなこを平気でメス豚呼ばわりするような毒舌っぷり、つまり、その外見と言動の著しい食い違いが、
結果として茉莉花の可愛らしさをさらに際立たせているということなのだろう。

「キレイだわ…」

全てを脱ぎ終わった茉莉花に、かなこは見とれた。
もともと細いことは分かっていたウエストはとりわけ細く、
美乳だと分かっていた胸は、見ただけで分かるほど柔らかそうで、
そして指に吸いつきそうななめらかさ。
その胸のずっと下、ちょこんと付いたおへそのさらに下までいくと、
茉莉花の興奮が包み隠さずそのまま表れた部分が、ツンと上を向いて硬くなっていた。

『茉莉花さん…性欲なんてこれっぽっちも無さそうな顔してるのに…
こんなのを持っているなんて…』

魅力を増しているギャップの極みが、その生殖器。
無論、筋金入りの男嫌いであるかなこが、それを急に好きになれるはずはない。
ただ、これほどに自分を求めてくれている茉莉花を、受け入れてあげたいという気分にはなった。
自分には、そうすることが出来る。
女だから、出来ること。
そして茉莉花も、女の子。
それ以上、何を望むのか、と。

「かなこ様も」

茉莉花に促され、かなこは恥ずかしいながらも、スカートの中に手を入れ、パンツを下ろす。
と、脱ぎ終わるなり、茉莉花に足首を掴まれ、股を大きく広げさせられた。

「きゃっ?」

茉莉花が、その部分に顔を近づけてくる。

「ちょ、ちょっと茉莉花さん?!」

茉莉花のしようとしていることをすぐに理解したかなこは、真っ赤になりながら足をばたつかせる。

「ダメだよ、私、汚いよ!まだ、お風呂入ってないから…!」
「そんなの、昨日だって同じじゃないですか。
それに私は、自分が汚いと思う場所に、おちんぽを入れたいとは思いません。
かなこ様のおまんこは、ぜんぜん汚くなんかないですよ」

スン、と鼻を鳴らして匂いをかいでみせる茉莉花。

「やだぁ…やめてぇ…」

相変わらず放送禁止用語を平気で口にする茉莉花。
かなこは恥ずかしさのあまり顔を手で覆いクネクネする。
ただ、言われたり、されたりして、本気で嫌な気持ちになるようなことではない。
というか、本当はちょっと嬉しい。

結局かなこの抵抗は中途半端なまま、
唇の間から桜色の舌をチロッと出した茉莉花の顔がどんどん近づいてゆき、そしてそこに触れた。

「ひゃぁっ…!」

冷たい氷が当たったかのように、高い声をあげるかなこ。
だが実際には、唾液をたっぷり吸った温かいフワフワの茉莉花の舌が押し当てられ、
敏感な突起を唇でついばみながら、閉じている花びらを優しく広げ、内側をほぐしていた。

蜜が出る場所を知っているように、小さな入り口を舌先で撫でまわす茉莉花。

「あっ…あっ…ダメぇ…茉莉花さんっ…」

前回とは趣が違い、それは純粋な奉仕だった。
優しく与えられる快感はかなこの身体にすんなりと染み込んでゆき、
すぐに秘部からトロトロの愛液を溢れさせた。

「チュッ、チュッ、チュパッ…ンッ、ングッ…」

茉莉花が吸うたびに、湿った音が立つ。
かなこが流したものを無駄にせぬよう、
彼女はおしりのほうまで舌を這わせながら、その汁を丁寧に舐め取る。

「ふぁぁ…あっ、あんっ…」

指でされるよりも刺激は弱く、激しさもない。
けれど、全身が温かくなるような気持ち良さで、何度も波が押し寄せてくる。

「わ、私だけじゃ、悪いよ…茉莉花さんも…ね…?」

声を上ずらせながらかなこがぎこちなく言うと、茉莉花が奉仕をやめた。
身体を起こした茉莉花の下腹部が見えると、そこはミルクで濡れていた。
そこと擦れていたシーツの部分にも、小さな染みが点々とあった。

「茉莉花さん、そ、それ…少し、イッちゃったの…?」

コクン、と肯く茉莉花。

『私のアソコ舐めながら、そんなに興奮してくれたんだ…』

さっきの言葉はその気にさせるためのお世辞でも何でも無く、茉莉花は本当にそう思っていた。
妙な感動に包まれたかなこは、勇気を出して言う。

「いいよ、来て、茉莉花さん…」

膝を立てたかなこの股間に、茉莉花が下半身を合わせる。
短いながらも懸命に反るペニスが、自然と入り口を捕らえる。

ヌチュッ、ヌププッ…チュプンッ。

粘膜同士が触れ、茉莉花が少し腰を前に出すと、結合は簡単に終わった。

「入りましたよ」
「ンッ…うぅぅん…」
「まだ、痛みますか?」
「す、す、少し、かな…」

あれほど恐ろしかったペニスを挿し込まれ、まだ、表情から辛さが消えきらない。
冷や汗を浮かべているかなこの額を茉莉花は手のひらで拭った。
それから、片方の腕をベッドに付いて、かなこの胸だけをはだけさせる。
肌色が露出した部分は、すぐに舌で愛撫し、そして揉んだ。

「アンッ…茉莉花さん…」

緊張していたかなこが、再び甘いため息を漏らす。
無意味なほど大きな胸は、茉莉花にとってはいじりやすく、そしてかなこにとっては感じやすかった。

「…動きますね?」

かなこの様子が変化したのを確認してから初めて、茉莉花は自分の快楽を求める。

プチュッ…プチュッ…ヌプッ…

腰をちょっとだけ引いて、軽く前に突き出す。
激しく出し入れさせるほど長く無いペニスを、小刻みにかなこの内部と摩擦させる。

「ンッ…ンフッ…ンフッ…」

茉莉花は鼻で息をしながら、かなこの胸を両手で揉み、チクビを口に入れて何度も吸う。
その様子が一生懸命で、かなこは茉莉花が愛おしくなった。

『茉莉花さん、おっぱい好きなんだ…可愛いな…
おしりも、あんなにプルプル震わせちゃって…
ホントに盛っちゃってるんだ…それに、体も熱いくらいだし…
なんか、ウサギみたい…』

茉莉花に一番似合わない姿は、もしかしたら排泄などよりも、性行為なのかもしれない。
裸になって、メスを抱きしめて、相手を少しでも悦ばせようと、自分を懸命に使う姿。

痛みはもう、ほとんど感じない。
茉莉花に胸を揉まれながら心地良くなったかなこの頭の中で、いつもの調子で妄想が広がりだす。

『あ〜、茉莉花さん、ウサミミとか似合うかな…
いや、でも、ツインテールにウサミミはバランス悪いかしら…』

全裸にウサミミ・ウサシッポの姿で求めてくる茉莉花を想像し、ドキドキするかなこ。

『…あれ、そういえばウサギって、確か性欲がものすごく強いのよね…
女の子追いかけまわして、何度も何度も、妊娠するまで犯して…
ってことは、もしかしたら私もそんなふうに、毎晩茉莉花さんにされちゃうのかしら…
やだ、どうしよう…?!』

どうしよう、という言葉に深刻さは全く無い。
むしろ、かなこの顔はニヤケている。

「かなこ様…!」

妄想の世界へトリップしていると、茉莉花の切羽詰まった感じの声で呼び戻された。

「キス、したいです…ンッ、ンプッ…チュッ、チュッ」

返事を待たずに茉莉花は首を伸ばし、かなこの唇に吸い付いた。
勢いが良すぎて、最初に前歯がカチッと当たってしまう。

「んむぅ…んぅ…ん〜…」

何かに急かされているような茉莉花の行動に、かなこは終わりが近いことを察しながら、キスに応えた。
茉莉花の口の中は温かく、唾液がたくさん溜まっていた。
舌を入れそれを奪ってあげると、茉莉花がくぐもった声を出した。

「ンッ…か、かなこ様…イッちゃいそうです…!」
「うん、いいよ…出して、茉莉花さん…」

キスを終えると、茉莉花はかなこにギューッとしがみつく。
かなこも茉莉花の背中に腕をまわし、抱きしめた。

「イク…出ます…!」

短く告げ、茉莉花が達した。

「あっ…あっ…あっ…!」

さらに、可愛い声を響かせながら、ピクン、ピクンと全身を震わせ、絶頂する茉莉花。

「すごい、出てる…」

茉莉花のペニスから溢れたミルクが、トロン、トロンと糸を引きながら、かなこの深い部分へ滴り落ちてゆく。
触れ合った肌の表面から伝わる温もりだけでなく、体の中から茉莉花に温められていく。

「茉莉花さんは…今までずっと、これを1人でやってきたんだね…」

どれだけの回数、茉莉花は1人で自分を慰めていたのだろうか。
かなこには、そのことがもったいなくさえ思えた。

「そう…ですよ…それで、何の不足もありませんでした…
それなのに、かなこさんが…」

絶頂の余韻で言葉を途切れさせながら、茉莉花が答える。

「私が、ジャマしちゃったから」
「そう、かなこさんが、ジャマするから…だから…ンッ…!」

かなこの内部がキュンと動いて、茉莉花が一瞬言葉に詰まる。

「わ、私は、もう…かなこさんじゃないと…満足できなくなってしまいました…」
「じゃあ、責任取らないといけないのは、やっぱり私のほうだね」
「そうです…当たり前です…」

茉莉花は嬉しそうに、少しだけ目を細くした。

「…ったく、あいつら…」

同じころ、クローゼットの向こう側にあつらえた鞠也専用のバスルームで、
彼は口までお湯に浸かり、ブクブクと泡を立てながら文句を言っていた。
横目で見ているバスタブの脇には小さな液晶モニターが置かれ、
かなこと茉莉花の情事がそのままに映し出されていた。

「毛布で隠すとかしたらどうなんだ…ぜ、全部丸み見えじゃねーか…」

鞠也の顔は真っ赤になっていた。
確かに、期待していた通りの面白いことが起こっている。
が、いかんせん、童貞の彼には刺激が強すぎる。

「茉莉花のヤツめ、使用人の分際でこの俺の先をゆくとは…」

チクビの勃ったかなこの胸、茉莉花のお尻、白い汁で濡れている2人の結合部。
あまり見つめていると、こちらまで変な気を催してしまう。

「い、いかん、俺としたことが…」

お湯の中で華奢な二の腕をつねる鞠也。
モニターをオフにし、ため息をついて天井を見上げた。

「…ま、もう少し2人だけにしておいてやろうかな…」

モニターが切れる直前そこに映っていたのは、
抱き合ったまま互いの耳元で何かを囁き合っている、かなこと茉莉花の姿だった。

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