過剰なまでの性欲を持て余し、
暇さえあればすぐにいやらしいことをしたくてたまらないのが年頃のふたなり娘の常だが、
聖は少し違っていた。
確かに外見はどこからどう見てもふたなりっぽい姿をしているのに、
股間の実物を見せてもらわない限りとてもそうは信じられないほど、平気な様子でいるのだ。
余分にくっ付いている生殖器を持て余している雰囲気がない。
それは聖が志摩子と肉体関係を持つようになってからも、
もちろんその前から、少しも変わらずにいつも同じだった。
週末のデートといえば普通、どこかに遊びに行ったり、買い物をしたり、食事をしたりするのが定番。
でもそれは結局のところ口実というか、キレイに見せるために取り繕っているだけで、
虚飾を除いて正直に突き詰めれば、『セックスをする』というだけの単純な話。
殊にふたなり娘にとっては、それらの“過程”はいくらでも省けるし
最終的に全く無くたって構わないのだけれど、
セックスという最重要な目的が果たせないことには、絶対に満足が出来ないものだ。
けれども聖の場合、
その目的というのが、必ずしも己の性欲を満たすことではなかった。
あえて言うなら、志摩子と一緒にいることそのものが、目的だった。
だから、必死で志摩子にいやらしい行為の相手をさせることなど、決して無かった。
デートと言って志摩子を連れ出しても、おしゃべりをしながらプラプラしているくらいで、
見方を変えればただの散歩ではないかと思えるほど。
聖の志摩子に対する愛は、エロスというより、かなりの割合でアガペなのである。
志摩子のほうも、
そんな聖との関係が、とても心地良かった。
毎日のように体を求められるのもそれなりに悪くは無いだろうが、
現状のバランスがちょうど良く思えた。
良い意味で、肉体的にも精神的にも疲れない関係だ。
そんなわけで、聖と志摩子の二人が揃ってさほど積極的ではないから、
セックスする機会は滅多にないのかと言うと、決してそうではなくて、
思いがけずに聖がたまらなくなってしまうことがある。
例えば、志摩子の何気ない一言がきっかけになったり。
聖と一緒に歩いていて、志摩子の視界にふと見慣れない大きな建物が入ってきた時。
造りからしてマンション等の住居でないことは明らかだし、
かと言って何かの店舗という雰囲気でもないので、
志摩子は自らの常識と照らし合わせながら推測をし、
その『可愛いお城』みたいな建物を指差して、聖にこう言った。
「お姉さま、あんなところに遊園地がありますね?」
すると聖は指差された方向を見るなり即座に苦笑いを浮かべ、「違う、違う」と否定する。
「志摩子、あれは遊園地じゃなくて、ラブホテル」
「え…」
予想もしていなかった言葉を耳にし、志摩子は言葉を失って顔を赤らめた。
「行ってみようか?」
聖が冗談ぽく言うと、志摩子は彼女を見つめたまま、首を横に振った。
聖も見つめ返したが、志摩子は何も言わないので、
「どうしたの?」と首をかしげて、そっと手を握った。
志摩子は黙って、絡ませた指を動かす。
「可愛い、志摩子」
そう言われると、志摩子はなぜか再び首を横に振った。
その仕草がますます可愛くて、聖は「こっち、おいで、志摩子」と、
繋いだ手を引き、来た道を引き返しはじめた。
言うまでも無く、行き先は聖の部屋である。
分厚いカーテンを閉めて暗くした室内で、
志摩子は衣服を脱がされ、下着だけの姿で、ベッドに寝かされた。
そのあとで聖も裸になった。
何となく恥ずかしくて、聖が脱衣する間、志摩子は自分の足先を見ていた。
終わったことを音で知ると、ようやく視線をベッドの脇に立っている聖に向けた。
「お姉さま…」
薄暗い中でも、ペニスが勃起して大きくなっているのが、はっきりと分かった。
胸がドキドキして、呼吸が早くなるのを感じた。
聖も頬が赤くなっている。
「志摩子…」
寄り添うように体を密着させて横になると、聖はキスをしながら、志摩子の下着を脱がせた。
髪の毛と同じ色をした陰毛と、張りのあるプルプルとした乳房が露出した。
他の誰にも見せたことの無いその場所を、聖は愛撫した。
手のひらで乳房を包むように揉まれながら、指先で乳首を撫でられると、
背中に鳥肌が立つような快感が走った。
「あっ…あぁっ…」
志摩子が口を開くと、聖は長い舌を伸ばしてその中に差し入れた。
志摩子が応えて、その舌をチュウチュウと吸った。
それから自分も舌を伸ばし聖の舌と絡ませ、
口の端から唾液が溢れるほど激しく動かしながら、時々引っ込めて、
互いの唇を吸い合った。
「んふぅ…んんっ…んっ…」
もどかしそうに志摩子が体を動かすと、
聖の硬いペニスが太ももに時々当たり、それが余計に興奮を高めた。
愛撫する指が下半身に到達すると、キスを続けることができなくなり、志摩子は声を出した。
既に湿り気を帯びているその場所を、聖は親指以外の4本の指を使って、全体を撫で回すようにした。
次に、秘唇の割れ目に人差し指を埋めるようにして小刻みに動かすと、
クチュクチュと音がして、透明な愛液の糸が引いた。
徐々にその人差し指を立て、入り口をチュプチュプと刺激しながら同時に親指の腹でクリトリスを軽く押さえると、
人差し指が動くたびに振動が伝わって親指もわずかに動き、まるでじらすように志摩子をたまらなくさせた。
「あっ、あんっ、あっ、あっ…」
グチュグチュに濡れながら志摩子が何度もあえぐと、聖もたまらなくなって、愛撫を止めた。
片方の腕をベッドの下へと伸ばし、隠してあるコンドームを手探りで一つ取り出してから、
膝立ちになって、手早くペニスに被せた。
窮屈な薄ピンク色のゴムで締め付けられたペニスは反りがつくほど硬くなり、先端がお腹に触れていた。
聖は足を揃えて伸ばしている志摩子に覆いかぶさり、ペニスを自分で持った。
志摩子に股を開かせることはせず、そのまま彼女の太ももの間にペニスを割り込ませるようにした。
陰毛をかき分けて、ヌチュッと先端が入り口に引っかかる。
聖はベッドに手を付いて背中を反らせ、ゆっくりと腰を前に突き出した。
ジュプジュプと愛液の小さな泡が弾ける音がしながら、ペニスが静かに埋もれていった。
「あぁぁぁ…」
志摩子が目を閉じ、切なそうに眉間にシワを寄せた。
初めてのときはあまりに痛すぎて、途中で聖に止めてもらうほどだったが、
二度三度と繰り返すうちに苦痛はなくなり、今ではすっかり挿入で快感を得ることが出来た。
最初が辛かった分、その後で知った未知の快感は、なおさら志摩子を虜にしていた。
聖はゆっくりとしたペースで腰を振った。
扁平な形でふちが反るように大きく張り出した先端が膣の内部で前後に動くと、
双方に素晴らしい快感をもたらした。
そして、志摩子が可愛い声であえぐ。
「あんっ、あんっ、あんっ…」
志摩子の柔らかい乳房が波打つようにして形を変えながら上下に揺れていた。
聖はそこに顔を近づけ、左右の乳首を優しく吸いながら、
少しずつ加速するように、腰の動きを早めた。
志摩子が泣いているような声を発し、聖の腕にしがみついた。
ベッドがギシギシと鳴ったが、それ以上に志摩子の声が大きくなってかき消した。
「ああっ、ああっ!お姉さまっ、お姉さまっ…!」
「し、志摩子…!」
聖は端正な顔を歪ませると、背中を丸めて志摩子の乳房に顔を埋めるようにして、夢中で腰を振った。
志摩子も、彼女の背中に腕をまわして自分のほうに押し付けるようにする。
ペニスが激しく出し入れされて、愛液がシーツに飛び散った。
二人の体が一つの塊のようになって、ベッドの上で跳ねた。
「うぅっ、し、志摩子、出すよっ!」
「あっ、あっ、あっ、あっ、お姉さまぁっ!!」
「イクッ…!」
「ああああんんっ!!」
聖は志摩子を抱きしめ硬直した。
膣の中でペニスがビクンビクンと脈打ち、精液が発射された。
志摩子は両脚を突っ張らせ、体を震わせた。
「あぁぁ…し、志摩子ぉ…」
「お、お姉さまぁ…」
射精はほどなく終わり、志摩子の絶頂もゆっくりと引いていった。
聖は体を起こし志摩子の額に手のひらを当てながらキスをした。
志摩子も応えて唇を吸ったり舌を動かしたりしながら、手を伸ばし聖の髪を撫でた。
「すごく気持ち良かった…」
「私もです、お姉さま…」
聖は入れた時と同じようにペニスを手で持ちながら、ゆっくりと膣から抜き取った。
コンドームの先端が真っ白な精液で膨らんでいた。
後片付けを終え、互いに服を着ると、聖はカーテンを開けて部屋を明るくした。
「なんだか少しお腹が空いたね。ピザでも頼もうか?」
志摩子はベッドの上に座ったまま、「そうですね」と微笑んだ。
普段なら口にしない不健康そうな食べ物も、たまになら悪くない。
ここに居られるのもあと数時間、夕方になったら嫌でも帰らなくてはいけないのだから、
せめてそれまで、つかの間だけでも同棲気分を味わいたかった。
そうして心の中でひっそりと『お嫁さん』の気分でいる志摩子は、
配達にやって来たピザ屋のお兄ちゃんに玄関からチラリと自分の姿を見てもらうことで、
何となく誇らしいような、不思議な、幸せな気持ちに浸るのだ。
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