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DORA〜輝く未来へ〜
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とても幸せのはずだった。
そう、これが日常であることをぼくは認めなくなかった。
そして、悲願する。
誰か助けて、と。
こんな不幸せな日常に。
…状況説明も面倒だ。
とにかく不幸せな日常から逃げたかった。
でも、その概念は壊れる事がなかった。
逃げられなかった…。
「えいえんはあるよ」
彼女?(彼?)は言った。
大山○ぶ○の声で。
「ここにあるよ」
確かに、そう言った。
大○○ぶ代の声で。
永遠のある場所…。
……そこに立っていた。
ちっとも願ってないのに。
ぶわっ。
何かの風圧。
それとともに体に寒さが感じてくる。
「ほらー、起きなさいよー」
朝か……?
しかたない、起きてやろう。
目を開けていく。
…まぶしい。
薄目からながら、誰かがいるのかはわかる。
その誰かを見る…。
「ほらーっ!」
オレの体を揺する…なんだあれ?
あれと言ったのは、意味不明な物体が存在しているからだ。
しかもオレの部屋に。
そして、オレを起こそうとしている。
……これは夢だ。
そうだ、夢なんだ。
だから寝るに限る。
ぐー……。
グワッ!
ズデン…。
どうやらベッドから落とされたらしい。
さすがに痛い。
「ぐぐ……」
頭を抱えながら起きあがる。
「やっと起きた」
視界はなんとかハッキリしている。
だから、自分の部屋の有様を見て状況判断ができるはずだ。
周りを見渡す。
目の前には制服を着た謎の物体が存在していた。
「うわっ!だ、だ、誰だ!何故、勝手にオレの部屋に入ってるんだ!?」
謎の物体はあまりにも常識からかけ離れていた。
簡単に言えば…いわゆる某猫型ロボットそっく…。
いや、ヤツそのままだった。
あまりの出来事に逃げ出そうとしたが、足がうまく動かなかった。
「…なに言ってるのよ」
目の前の物体は姿に似合わず、女言葉で話している。
外見と声のアンバランスが凄い。
不気味を通り越して怖い。
「いや、ホントに…誰なんだ?」
「…やっぱり浩平にはいいお嫁さん見つけないと心配だよ」
「だから誰だよ、お前」
「ほら、着替えて…遅刻するよ」
制服と鞄を手渡される。
「………………わかった、すぐ着替えて出る」
「その長い間はなに?」
「なんでもない」
なんでもなくない。
こんな物体が動いて、しかも会話してるという時点で、
まともな気持ちでいられるわけない。
とにかく逃げる為にさっさと着替える。
そして、キッチンに行き適当にパンを口に入れ、用を足しにトイレに行く。
さっさかと逃げる準備をし、玄関へと向かう。
「ほら、急いで」
…ヤツがオレを待っていた。
タッタッタッタ…。
逃げ出すように走り出す。
だが、ヤツはオレを追っかけてくる。
…こいつ、マジで何者だ?
口調からして長森らしいが……。
長森はちゃんとした人間だ、こんな狸のようなロボットではないはず。
そう、幼いあの時からのなれ合いだ……。
身よりを失い、今の母方の叔母、由起子さんに預けられて…。
友達はいない、知ってる場所もない、ただ家で一人で遊ぶ日々が過ぎていた。
そんなとこにこいつが現れたんだ…。
ゴトゴト。
自分の机から何か音がした。
何の音だろうと確かめてみる。
「……」
何も変わりはなかった。
また一人で遊び始める。
ゴトゴト。
また音がした。
もう一度だけ確かめてみる。
「……」
やっぱり何もなかった。
そして引き出しを元に戻そうとした時。
「あ、まってまって」
何かの声がした。
ズズッ。
何かが出てきた。
「…こんにちは」
そいつは挨拶をしてきた。
それから、わけわからないままそいつは同居を始めた。
つまり、そいつってのは今後ろを走ってる長も…。
「ぐわぁああああ!!!」
「こ、浩平!?どうしたの?」
違う! 何かが違う!
待て待て、落ち着け…。
もう一度思い出してみよう。
「あ、浩平、前!」
っ…気が散る!
何が『あ、浩平、前!』だ、前に何か存在するとでも…。
「きゃぁ!」
「…え?」
ズドンッ!
誰かとの衝突。
オレは地面に倒れる事はなかったが、
相手は軽くすっ飛んだようだ。
というか、ホントに衝突したのか?という位に、こちらには軽く痛みがあるだけだ。
相手の方はと言うと…。
「…………」
どうやら気絶してるようだ。
…無かったことにしよう。
よし、学校へ急ごう。
再びこいつから逃げだそうと駆け出そうとしたが…。
「わ、待ってよ浩平…この娘、介抱してあげないと」
…オレを呼び止めるな。
その呼び止めに応じるオレもオレだが。
「それならお前が介抱してろ、オレは学校へ急ぐ、これで万事解決だ」
「全然解決してないよっ!それに私も急いでるもん」
「なに!?お前も学校に来るのか!?」
「当たり前だよ!」
バカな…こんなのが学校に来るだなんて…。
オレを追っかけてくる時点で何かおかしいと思ってたが。
人間信じられない事があると、とんでもない行動を起こすという。
オレはまさにその事態に直面していた。
そして、オレがとった行動とは。
逃げる、だった。
「ギニャァァァアアー!」
どこか藤子Aライクな叫びを発しながら走った。
今まで自分の居た世界から別の世界へ来てしまったような悲しみを叫びと共に嘆きながら。
今衝突した娘も姿は某お風呂好き少女のままだったから。
「こ、浩平ー!」
後ろで叫んでいる物体の事なんて存在するとは思いたくなかった。
だけど、現実は甘くはなかった。
学校に着いて逃げ切れたと思ったら、ヤツは後からやってきた。
しかも、そいつに挨拶するクラスメイトの姿と言ったら…。
本当に異世界でもやってきたような感覚に陥る。
「んあー、席につけー」
担任が現れた……。
…ありがとう神様、オレの期待を裏切らないで。
そう、担任の姿も変わっていた。
某猫型ロボットな漫画に出てくる教師だ。
もう、まともに教室を見ている気にはなれなかった。
窓の外へと視線を移そうとした時。
「んあー、静かに!」
何か教室内が騒がしい。
視線を戻してみると…。
担任の横に、あの某お風呂好き少女の姿をした、朝の娘だった。
まさか、高校生だったとは…。
姿形はあてにならないものだ。
長森(?)というサンプルがいるしな。
「じゃ、自己紹介を」
「七瀬留美です」
やっぱり声と外見のアンバランスが…。
でも、あいつよりはマシだけどな。
ちらりとヤツの方を見てみると、ぽっ、っと頬を赤らめた。
やめてくれ…怖すぎる。
目でそう訴えたのだが。
ヤツの頬はさらに赤くなるばかりだ。
だからやめてくれって!オレは何もしてないだろ!
尚も目で訴えるが、ヤツはさらに顔中を真っ赤にする。
何故だ!何故そこまで真っ赤になる!?
これで最後にと、目で訴えてみるが、今度は体中を真っ赤に…。
…帰ろう、学校終わったら速攻で帰ろう。
「それではよろしくお願いします」
前を見ると、転校生が頭を下げていた。
どうやら自己紹介が終わったらしい。
で、それから席はオレの後ろに決まったようだ。
「はぁ…」
頭痛がする。
とっとと転校生の机持ってきてやるか…。
というわけで、机を持ってきてついでにオレの机の場所とともさり気なく入れ替える。
これでゆっくり寝られる。
よし、寝よう。
ぐー……。
………。
……。
…。
起きてみると昼休みだった。
だが、何故か授業を真面目に受けたような気分だ。
……何かあったのか?
…朝からおかしいんだ、気にしないほうがいいだろう。
さて、購買でパン買ってくるか。
そして屋上にでも行こう。
いろいろと一人になりたいからな。
「遅かったね」
「……」
なんで先に来てるんだよ、お前。
だが、突っ込んでも無駄だろう。
そう思い、無言で座り、パンを食い出す。
「寒くないの?」
俺に質問してくる長森らしき物体。
「お前はどうなんだ?」
「寒いよ」
「なら戻れ」
「あ、今日のドラ焼きはあんこがたっぷり」
「……」
なんとなく「祖国に帰りたい」っていう外国人の気持ちがわかった気がする。
「あ、ジャイアン達だ」
隣の物体がどこかを指さしながら言った。
ジャイアン…?
……もの凄く嫌な予感がする。
一応、指さした方向を見てみる。
「いい風が吹いてるね」
「…そうですね」
「今日の成果はどうだったかな?」
「いつもよりは多いと思います」
「そう、よかった、私の座右の銘が成り立たないもんね」
「『私のモノは私のモノ、キミのモノは私のモノ』ですか…」
「うん、いい言葉だよね」
「…はい、そう思います」
「……」
某ガキ大将な姿をしたのと、
某『ママー』な少年な姿をした二人組が、
なんかよくわからない会話をしている。
相変わらず口調と声と姿とともに違和感バリバリだ。
近寄らない方がいいだろう。
というか、逃げよう。
「待ってよ〜」
誰が待つかい!
だが、逃げても学校が終わらない限りは逃げ切れないんだ。
仕方がないので、目の前の少女(としか言えない姿をした転校生)の、
趣味はやっぱり『お風呂に入ること』だろうか?などと考えてたりして時間を潰した。
そんな事をしている間に放課後になっていた。
……しまった、テストが近いというのに無駄に時間を使ってしまった。
待て、その割に真面目に授業を受けた記憶が…。
………?
いや、おかしい事は朝から続いているんだ。
気にしないほうがいいだろう。
全てから逃げるように下駄箱へ行き、靴を履き替え、とっとと逃げ帰った。
誰もいない家が逆に嬉しく感じた。
今までの状況を考えると由起子さんも……だろうから。
パジャマに着替え終わり、ベッドに潜り込もう布団を持ち上げる。
「…………」
だが、そこで動作が止まる。
このまま普通に寝て、またアレに起こされたらどうしよう、と頭に浮かんだからだ。
「……」
部屋を見渡すと、今まで無かったはずの押入(某猫型ロボットが出てくる漫画仕様)が目に留まった。
よし、この中で寝よう。
ガラッ。
「ふぁ…こぅへぇ?」
「………」
ヤツが寝てた。
「出てけ」
「イヤだよ、わたしの寝床はここだもん」
「……」
何か日常が狂ってる…。
とりあえず、目の前のヤツを玄関から外に蹴り出した。
そして、念のためにベッドの下で寝ることにした。
息苦しいが、ヤツに起こされるのを考えればこのぐらいは……。
最後に、目が覚めたら元の日常に戻っている事を願った…………。
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