主よ、
novel
暗い空に、褐色に近い金の色の細い月が浮かんでいる。
主よ、
小さな頃は、色んなことに意味を求めていた。空模様、風の音、月の満ち欠け。
疑問を持ってテッドに訊ねれば、彼は顔をこちらに向けて片方の眉を軽く上げる。??ああ、そのこと? そんなふうに。
夢見がちな子供だった。今思い返せば赤面するようなことを言っていたと思う。
でもテッドは、呆れたり茶化したりしなかった。たくさんのことに意味を見つけてくれた。その言い方が、いちいちもっともらしい。ルックやシーナは、グレミオを過保護だ過保護だと言うけれど、実のところ、一番過保護なのはテッドだったよな。スィンは月を見上げて思う。
「何」
「ん?」
スィンが空に向けていた視線を部屋に戻すと、いつの間にやらルックが分厚い書物から顔を上げていた。怪訝そうに顔を顰めている。
「顔、緩んでるよ」
スィンは自分の頬に手を当ててみる。そうかも知れない。
窓の外をちらりと見やる。
夜空には猫の爪みたいに細い月。スィンもついつい目を細めた。
「ルック、」
あれにはどんな意味があっただろう。テッドの思いつきは子供に向けてかロマンチックなものが多かった。だから、スィンは時折誰かに問い掛けてみたくなる。
「あの月にはどんな秘密があると思う?」
end
2006.03.28
novel
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