コン、コン……  遠慮がちなノックが、レンタルハウスの扉を叩く。 「……誰だ?」  無意識に漏れ出た笑みを唇の端に浮かべ、俺はゆっくりと扉へと歩み寄った。 『鎖 1          文責:Syara』 □  とかく冒険者という稼業は、己の腕を磨くことを第一の身上にして生きて行く。  そうしなければただ、醜い屍を晒して朽ち果てるだけだからだ。  その時その場所の敵に強さに応じて、冒険者たちは徒党を組み、あるいは単身、  各地に散らばるモンスターに剣を振りかざす。各々の夢や欲望のために。  そこには熱くも儚い冒険者たちの絆もまた、生まれ、そして潰えていった。  握手を交わし、あるいは侮蔑の言葉を投げ合い、彼らはまた新たなる仲間を探す。  最初彼女と出会ったときも、そんな一瞬の交錯の後に別れ行く、同業者の一人としか捉えてはいなかったのだが……。  故郷バストゥークを旅立って数ヶ月、初めてジュノでパーティーを組んだときに、彼女――シェナはいた。  どう見てもガキにしか見えない種族タルタル――実際彼女も年端も行かぬ少女にしか見えなかった。  だが、冒険者としての腕前は見かけで判断することはできない。  底無しとも言えるその豊富な白魔法の力に、幾度となくそのパーティーは救われた。  ……同時に、見かけ通りのその打たれ弱さに青ざめもしたが。  タルタルという種族、はては後衛の職業に対する見方が変わったのは、この時だったと思う。  以来、積極的にタルタルの冒険者を仲間に選ぶようになったのだが……。  不思議と集まってくる仲間たちの中に、幾度となく彼女の姿があった。  単なる偶然か、私の戦士としての腕前に信頼を置いてくれていたのか――それは今でも分らない。  ただまあ、見知った仲間とは自然と息が合っていくものだし、戦いがやりやすかったのも確かで、  何より人気のある白魔道士が優先的に組んでくれるのは非常にありがたく、  根が軽薄な俺らしくもなく、彼女に幾度か余計な労いの言葉をかけた時もあった。  自然と行動を共にする回数が増え、時には二人だけで組んで貴重な宝物を探しに行くようにもなった。  連絡先を交わし、相手の都合に合わせて待ち合わせをしたりもした。  「よく組む仲間」から、「無二のパートナー」へ……。  そんな中、彼女の俺を見る表情が、  仲間に対する信頼から何か別の感情に変わっていくのを、薄々ながら感じてはいた。 □  ゆっくりと開かれた扉の向こうに、シェナは俯いて佇んでいた。 「……」  何も言わず、部屋に入ろうともせず……俯いたその表情を見ることはできないが、  力無く垂れ下がったその細長い耳から、簡単にその心を読むことができる。  しばしの、沈黙。 「……どうした?」  優しく声をかけてやる。  まるで初対面の子供に接するように、優しく。社交的な笑みを浮かべて。 「…………っ!!」  ぎゅっ、と、胸元を押さえていた彼女の手が握り締められた。 □  シェナは、冒険者仲間の間でも、一般市民の受けも、非常に評価の高い白魔道士だった。  細かい気配り、絶妙なタイミングで仲間を救う白魔法、そしてその豊富な魔力。  係わりあいのない、前衛の技の連携にまで勉強熱心で、パーティー全体の指揮も的確にこなす。  仲間を気遣い、決して愚痴をこぼさず、明るい笑顔と仕草でパーティーの士気を高め、 タルタルという種族にしては珍しい、凛とした心意気に溢れていた。  いっぱしの冒険者ではあるものの、軽薄な性格のヒュムの戦士である俺が、 どうしていつも彼女と供にいるのか、羨み半分に訝しむ者もいたはずだ。  ……まあ、当然のことながら、そこには特別な感情と関係が介在していた訳だが。  冒険を終えて町に戻れば、彼女は冒険の後始末もそこそこに私の部屋を訪れる。  別に隠すつもりもないが、なんとなくバツが悪くて二人の共通の知り合いにこの関係を告げたことはない。  ……単なる恋人同士としても、まあ些か説明し難い間柄だったからだ。 □ 「……ほら、いつまでもそんなところに立ってないで、入れよ?」  なかなか部屋に入ろうとしないシェナを手招き、 (いくらなんでもこのままではバツが悪い) 傍らに浮かんでいるモーグリに目配せをする。 「……」  モーグリは黙って彼女と入れ違いに廊下に出、後ろ手でその扉を閉めた。 「……」  二人きりの沈黙の中、微かな嗚咽が聞こえ始めた。細かく肩が震え、一筋の涙がシェナの頬を伝い落ちる。  いつもの凛とした姿からは想像もできないほどに、しおらしく儚げな彼女の姿に、俺はゾクゾクとするような悦びを感じた。  俺だけに見せる態度、俺だけに向けられる、その想い――。 「……、ごめんなさい……」  聞こえるか聞こえないかの、か細い彼女の声。  また一筋、光の筋が震える頬を伝い落ちた。 □  つい先刻のことだ。  シェナのテレポヴァズでザルカバードへと飛び立ち、魔王の城の外郭で俺たちは腕試しをしていた。  でっかい目玉のモンスターは強敵だったが、いい加減こいつ相手の戦闘にもみな慣れ切っていて、 パーティーは余裕のある雰囲気のまま狩りを続けていた。  こういった狩りの基本はまず安全な場所を確保して、後衛たちをそこで休ませながら、 周囲にいるモンスターを「釣って」そこに誘導し、戦う。この繰り返しだ。  休憩すると運動のリズムを崩してしまう前衛は下手に休む事はせず、後衛の休憩の間に周囲を警戒しながら手頃な敵を探していた。  そんな時、群れからはぐれた一匹の目玉を見つけ、俺はすぐさまそいつに挑発した。 「ナニてめえ生きてんだ、さっさと死ねこのカス!!」  言葉の意味が分ったかどうかは分らないが、化け物は勇んで飛びかかって来る。  あとは、メンバーの元へとこいつを連れて行くだけ――  そう思いながら走り寄ったときに、視界の端に一瞬、彼女の姿が映った。  もう一人のタルタル、黒魔道士の少年と寄り添うように座り、楽しそうに言葉を交わす姿を。  頭の中で、何かが弾けた。  別段、気心の知れたパーティーでは珍しくもない光景だ。  数人の力を合わせる狩りではモチベーションも重要なファクターで、俺も会話のないパーティーなど面白くもないと思う性質だ。  だが――。  結局、そいつとの戦いは後衛のサポートが遅れたため、思わぬ苦戦を強いられた。  仲間の元にたどり着く直前、目玉が古代魔法の詠唱を始めたのだ。  そして、気づくのが遅れた後衛達の対魔物静寂魔法は、それに間に合わなかった。  きびすを返し、俺は仲間の巻き添えを避けるために目玉へと突進する。  紅蓮に染まる世界――。  次の瞬間、魔法の直撃を受け、俺の意識から炎以外の全てが弾き出された。音さえも聞こえない。 「がぁ……っ……」  だが、まだ生きていた。足はまだ動く。手も動く。それで十分だ。  こんなところで死ぬ訳には行かない、その気力だけで目玉のど真ん中に剣先を叩き込む。  後はただ、醜い声を上げてのたうつ化け物に、めちゃくちゃに切りつけた。 「……ル、ワール!! ワールってば!!」  前衛仲間のミスラの声に、はっ、と我に返ったときには、化け物は物言わぬ肉塊に姿を変えていた。  気づかぬうちに回復魔法を貰っていたのだろう、体中に広がっていた火傷もすっかり治っている。  ただ悪臭を放つ返り血ばかりはどうしようもなく、緑の血糊にまみれた姿に、仲間達は一瞬たじろいだ。  俺は、青ざめて立ちすくむタルタルの少女に向けて冷たい一瞥だけを向け、 一瞬の間の後に掛けられた仲間達の謝罪を無視して立ち上がる。狩りを続けるために。  そこから後は目茶苦茶だった。  目に付く化け物に俺は端から切りつけ、後衛の回復が間に合わずに悲鳴を上げるのも無視し、 剣を振り下ろす、それ以外の全てを頭の中から締め出した。  ――何かが俺の心の死角をついたのだろう。  種族の差、前衛と後衛の差、育った環境の差――。  自分でも何を考えているか分らないほど、混沌とした、赤黒い感情が俺を支配していた。  全員が無事に狩りを終えられたのは僥倖と言うべきだったろう。  今日組んだ仲間達は、次から俺と組むことを拒むかもしれない。  それも仕方がない、と思う。  古代魔法を食らった事には何のわだかまりもなかった。元々静寂魔法の効きにくい相手だ。  むしろ仲間を巻き込まずに済んで心底良かったと思っている。  だが、それを差し引いても、狂戦士のように次々に敵に切りかかる仲間に命を預けようとは思わないだろう。  ただ、シェナだけは理解していたはずだ。俺の暴走の理由を。  パーティーを解散し、各々がジュノの町に散って行った後も、彼女は俺の側を離れようとしなかった。  繁華街へと歩きだす俺の後を、おずおずと付いてくる。  俺は、そんな彼女を完全に無視して歩調を速めた。  ――我ながら子供じみた感情だな、と思う。  これは単なるヤキモチに過ぎず、今こうして彼女を無視して歩いているのも、単なる意地に過ぎない。  だがまあ、これも偽らざる俺の本心だ。煮えたぎるようなこの感情を否定する気はなかった。  ならばこの状況を利用して、この嵐を鎮めさせるしかない――彼女本人に。  ……彼女にも同じ感情を味わせてから、徹底的に、な。  俺の望みは、シェナを完全に自分の物にする事だからだ。  一切の妥協を許さず、手段を選ばずに。 □ 「――何故、謝る? 何に謝っている?」 「それは……」  言い淀むシェナに畳み掛けるように、矢継ぎ早に言葉を続ける。 「謝る理由もなしに謝られても困るよな。とりあえず謝っておけばそれで許して貰えるとでも思ったか?」 「ちが……っ……」  彼女の必死の否定を無視し、笑顔のまま、叩きつけるように。  蒼白に変わっていく彼女の表情を見るのは、ひどく楽しかった。 「まあいいよ、すっげーガキっぽい事で怒ってるのは自分でも分ってるからな。でもさ、今日は帰ってくれるか?」 「え……」  意外な言葉に戸惑い、シェナは俺の言葉を聞き続ける形になってしまう。 「久しぶりにネムに飲みに行かないかって誘われててな。シェナにもいいオトモダチができたようだし、丁度いいだろ?」  ネムの名前で全てを悟ったか、彼女は必死の形相で激しく首を振った。 「やだ……行っちゃやだ!!」  ネムはシェナとの関係が始まるまで付き合っていた女だ。  昔ちょっとした事故があって、ネムとの肉体関係をシェナに目撃された事がある。  まあそれがきっかけでシェナは俺にその想いをぶちまけ、俺はその場で彼女を抱いた。そういう関係だ。  シェナにしてみればネムは俺の過去の女で、しかもいつ爆発するか知れない爆弾のような存在――という訳だ。  実際には、シェナとの関係が始まった時点でネムとはきっちりと切れたんだが、その事をシェナには言っていない。  飲みの誘いも実は真っ赤な嘘だ。だがまあ、こういう状況には丁度良いので、引き合いに出した。 「なんでだよ、さっきのシェナと同じ、ちょっと楽しいオハナシをしてくるだけだ、文句ないだろうが?」  今日の出来事に対する、ささやかな復讐だった。  だがシェナの必死な顔は想像以上に心地良い。癖になりそうだった。 「ウソだ、ネムはいっつもワールのこと見てるもん、狙ってるもん、お話しだけなんて絶対ないもん!!」  感極まってしまったか、シェナは大きな瞳からぼろぼろと大粒の涙をこぼして、泣き叫ぶ。  ――そうだ。その感情だ、わかったかシェナ? 「お願い、何でもするから、あの子と二度と口きかないから、行かないで……お願い……」  ――そう、それでいい。お前の心を占めるのは俺だけでいい。  内心の笑みを漏らさないように苦労しながら、俺はシェナに向かってマホガニーベッドを指し示した。 「……?」  少し彼女の嗚咽が収まるのを待ちながら、背もたれのある椅子に逆に腰掛ける。 「何でもするって、言ったよな?」 「う、うん……」  両手と顎を背もたれの上に乗せ、わざと揶揄するような笑みを浮かべた。 「じゃあ、そこで服脱いでオナニーしてみな」 「え、ええっ!?」  幾度か彼女を抱いてはいるが、こんな要求をしたのは初めてだ。当然そんな経験などないシェナは大いに狼狽えた。 「意味分かるか? そこで自分で自分を慰めてみろって言ってるんだよ」 「そ、そんなの……恥ずかしいよ、できないよぅ……」  みるみるうちに顔を真っ赤にし、後ずさる。だが、その抵抗は弱々しい。  ――行けそうだな、これは面白いことになりそうだ。 「嫌なら別に良いけどな。ま、選ぶのはシェナだぜ? ネムの所に行かせるのも、ここで俺を楽しませるのも、な」 「――――っ」  彼女の逡巡は、少しずつ諦めの表情へと変わっていく。もう、一押しだな……。 「それとも、あの黒ガキに操でも立てちまったか? それなら……」 「やっ、やるよ、……やるから、そんな意地悪言わないで……」  ついに決心が付いたのか、シェナはのろのろと軍師コートのボタンに手を掛けた。  ぷち、ぷち、ぷち……  ゆっくりと、少しずつ、シェナの肌が露になる。  時折、懇願するような視線をこちらに向けるが、俺は冷笑で答えて彼女の無言の願いを無視した。  考えてみれば、部屋の明かりを落とさずに彼女の身体を見るのは初めてだ。  随分と堅い環境で育ったらしく、幾度となく彼女を抱いた時も、その度に明かりを消してと懇願された。  下手に怖がらせるのもどうかと思って、今まで優しい恋人同士の行為を繰り返して来た訳だが――それも今日までだな。  とさ、と軍師コートが床に落ち、ささやかな膨らみを覆う白いキャミソールが現れた。 「下もだ」 「う……ん……」  ゆっくりと、恐る恐る傭兵隊長のベルトを外し、ホワイトズボンを下ろしていく。  木綿地の柔らかそうな下着が覗き、俺の分身が早くもいきり勃ち始めた。  シェナを抱く度に思うのだが、何故こんなにも彼女の身体を欲するのか、俺自身でも上手く説明できない。  最初に抱いたときは恋愛感情など全く無く、興味本位半分と厄介払い半分で彼女を押し倒したのだが……。  無防備なその小さな裸身と、瞳に浮かぶ涙を見たとき、ワケもなくこの少女を独占したいと思った。  今までにないほど激しく興奮し、貪るようにか細い身体を犯し尽くし、朝が来る頃には他の女に興味さえなくなっていた。  つい、一月ほど前のことだ。  それ以来、(天邪鬼にも彼女に告げてはいないが)他の女は抱いていない。  そんな心境の変化に、俺自身が一番驚いている。そんな中での今日の体たらくだ。  ――もう完全にコイツにハマっちまってるらしい。情けねえ。女なんざ性欲処理の道具としてしか見てなかったこの俺がだぜ?  恋愛感情はおろか独占欲さえ鼻で笑い飛ばしていたというのに。 「これも……脱ぐの?」  目の前に、下着姿で所在無く佇むシェナ。部屋の灯火に照らされたその姿を、不意に抱き締めたくなる。  だが……まだだ。今抱き寄せればそれで終わる。  今の関係を失う恐怖心から俺の言いなりになるという、絶好のチャンスを失ってしまう。  この状況に付け込んで、俺はあらゆる性戯をこの小さな身体に刻み込む――  精神的にも、肉体的にも、俺という存在無しでは生きられないように……。 「ああ、全部だ」 「……」  シェナはぎゅっ目を瞑り、キャミソールに手を掛け、一気に脱ぎ捨てた。  思春期の少女のような淡い膨らみと、薄いピンク色の小さな乳首が、ぷるん、と揺れる。  シェナはそのまま、最後の一枚をゆっくりと下ろした。  よほど恥ずかしいのか、目はきつく閉じたままだ。 「う……くぅ……」  羞恥にか、それとも恐怖にか、ふるふると小さな体を震わせる全裸の少女。  俺は、込み上げる情欲を無理矢理押さえ込み、冷笑の表情を崩さぬまま彼女をじろじろと見回す。 「おねがぃ……そんな、みないでぇ……」 「おいおい、まだ服脱いだだけじゃねーか。さっさとそこに座って始めろよ、俺が待ちくたびれる前にな」 「うぅ……」  軽くベッドに腰掛け、シェナは指先を自らの乳房へと伸ばす。 「ん……く……」  さわさわ、さわさわ……。  可愛い事にそれは、俺が彼女を愛撫するときと同じ触り方だった。  腋の下から双丘へと、くすぐるように往復し、鳥肌が立ったところで徐に乳首を摘まむ。 「きゃう……っ……」  その瞬間、弾けるように彼女の身体が跳ねた。  ――どうやら緊張してるだけではないようだな……あの身体で、見られて感じるとは、ね。 「あ、あ……っ」  最初の衝撃で緊張が解けたのか、彼女の指先は次第に滑らかに、次第にペースを速めて、豆粒のような乳首を玩んでいく。 「ふ、随分と可愛い声を出すじゃねーか。人に見られて興奮してるのか?」 「言わ、ないでぇ……っ、私、私、こんな……あ、あぅ……」  ふにふにと柔らかく形を変えていた乳首が、次第に弾力を帯びてきた。  指先の動きも、押し潰すようなそれから、挟んでつまみ上たり、転がしたり、といった動きに変わっていく。 「ほら、下がお留守になってるぞ、いつも自分でしてるようにやってみな」 「うぅ、はずか、しいよぉ……」  哀願の言葉とは裏腹に、シェナの両脚はおずおずと開かれていった。  薄い薄い桜色の――ほとんど色素の沈着も見られない、可憐な花びらが姿を現す。  幾度となくソコに突き立てた記憶が蘇り、俺は自分の怒張を無理やり押さえ込まなければならなかった。 「――早くしろっての」 「……うん……」  戸惑いながら、震えながら……恐る恐る、もう一方の指先が彼女の花芯へと近づいていき、 「――うぁ、あああっ!!」  指先がするりと花弁の中に滑り込んだ瞬間、シェナは乳首の時とは比べ物にならないほどの切羽詰まった声を上げた。 「あ、あ、そんな、そんな……ぁ……だめぇぇ……」  くち……くち、くち、くち……  微かな水音が、彼女の花弁の潤いを伝え始める。 「なんだ……もう濡れちまうほど感じてたのか、いやらしい奴だな」 「違う……違うもん……私、そんないやらしい子じゃ……ない……」  自分がこんなにも感じてしまっていることを認めたくは無いのだろう、  猫のように背中を丸めて、今起きている現実を否定しようとするように弱々しく首を振った。  だがそんな心とは裏腹に、両手の動きは更に早く、更に大胆に、彼女の興奮を煽っていく。  彼女を抱く度に、徹底的に愛撫を施してきた成果だった。  最初に抱いたときのシェナは処女どころか性的に全く未開発で、まずは性感を覚えさせるところからと、 くすぐったがって逃げる彼女を幾度となく捕まえては撫で回し、嘗め回した。  最初シェナは撫で回す度に身をよじって笑い転げたが、幾度となくそれを繰り返していくうちに、 びくびくと身体を震わせ、可愛い声を上げ、甘えるような仕草を見せるようになっていた。 「正直に言えよ、気持ち良いんだろう? 自分のいやらしい所を俺に見られて、感じてるんだろ?」 「違う……ちがうよう……」  シェナは必死に否定する。しかし彼女の息はもう荒く乱れ、肌は上気して薄い桜色に染まっていた。 「じゃあ質問を変えてやろうか……俺に見られて、嬉しいか?」 「……ぁぅ……」  かぁぁぁぁっ、と、上気していた頬がさらに真っ赤に染まっていく。 「う……」 「う?」  目を伏せて視線を逸らせ、呟くようにシェナは答えた。 「嬉しい……」 「…………」 「嬉しいよぅ、ワールが、私を見てくれて……私のいやらしいとこも、ぜんぶ……ぜんぶ、ワールの、ワールのだもん……」  シェナの言葉が、堰を切ったように溢れ出す。その言葉は支離滅裂だったが、俺は天にも昇るような思いでそれを聞いていた。  もう、唇の端に浮かんだ笑みを消すこともできない。 「そうか、なら全部見せてみろよ……見ていてやるよ、お前が感じる所も、イク所も、全部な」 「ああぁ、ワール、ワールぅ……」  霞がかかったような、夢心地の表情になっていくシェナ。  目覚め始めた被虐的な悦びが、今まで見たことも無い、うっとりとした笑みを浮かばせていた。  くち、くち、くち、くちゃ、くちゃくちゃくちゃ……  理性という心のタガを外し、もはや止めることもできず、シェナの手淫はどんどん激しさを増していく。  乳首は交互にきつく捻り上げられ、充血しきって屹立し、激しく掻き回されている花びらからは愛液がとめどなく湧き出ていた。 「あう、うう……き、きもち、いい……」 「そうだ、気持ち良いだろう? その内にこれが病み付きになるぞ」 「ああっ、そんな、そんなぁ……」 「女ってのはな、シェナ。自分を曝け出せば曝け出すほど感じるように出来てるんだよ。今だって一人でしてる時よりは断然イイだろう?」 「うん……すっごく、いい……気持ち、いいよ……」 「そうやって全てを曝して、感じる姿を見せれば男は興奮して、その女に夢中になる。上手く出来てるだろ?」 「本当……? ワールも、夢中に、なるの……?」 「ああ。それだけシェナが俺だけの物になるって実感できるからな」 「ワールだけの……もの……」  まるで催眠術のように、シェナは恍惚とした表情で俺の言葉を繰り返す。  支配される歓びを女に教え込むには、こうして快感を与えながら刷り込むように言い聞かせるのが一番だ。  女は自己陶酔する生き物だから、後は勝手に自分自身を納得させてくれる。 「私、なるよ……ワールだけの物に……だから、だから…………」  シェナは泣き笑いの入り交じった瞳で、俺を真っすぐに見つめた。 「私を見て……無視、しないで……」  どくん。  ひどく儚げで不安定なその表情に、俺の胸が高鳴った。  やられた。これじゃあどっちが調教してるんだか分からなくなってしまう。 「ああ……シェナがそう望むならな」 「なんでも、言うこと、聞くから……私、こんな、ちっちゃくて、やせっぽちだけど……一生懸命、頑張るから……」  ――いかん、本気で調教中断したくなってきた。 「なら最後の仕上げだ。そのもう少し上を触ってみろ」  俺は話を無理矢理切り上げ、シェナに指示を下す。  いきなりの命令に戸惑いながらも、彼女は言われるままに指先を彷徨わせた。 「ここ……?」 「そうだ、そのビラビラの少し上だよ、小さな取っ掛かりがあるだろう?」 「で、でもここ――あっ、あああっ!? あう、あう、あああああ!!」  指先が迷いながらその突起に触れた途端、シェナの声のオクターブが跳ね上がる。 「そこが女の一番敏感な部分だ。今までは痛がってばっかりだったが、今なら感じるだろ。どうだ?」 「す……ご、すごい……よぉ、なに、これ……ぇ……」  驚いたことに、シェナはクリトリスの快感を今まで知らなかった。  あまりに敏感すぎた為か、今までの拙い自慰では痛みしか感じなかったらしく、ソコに触れられるのを酷く怖がるのだ。  今までの愛撫でもその恐怖を克服させることはできず、やっと今、どさくさ紛れに成功したという訳だ。 「あう、あああぅ、だめ、こんなの、だめぇ……もう、もう、くる……来ちゃうよぅ……」  最初は恐る恐る上をなぞっていた指先が、次第に擦るように、ほじくるように動き始めた。  猫背だったシェナの背中が、押し寄せる快感から逃れようとするかのようにぴんと張り詰めていく。  そして―― 「いいぜ、イけよ。俺の目の前でイヤらしくイって見せろ」 「わ、ワール、ワールぅ、ああっ、あああああああああああああああああーーーっ!!!!」  がく、がくがくがく――  シェナは背筋を弓のようにしならせ、泣きそうな声を上げて絶頂を迎えた。  泣き顔のような、愉悦のような、その表情。 「ああ、あ……ぅ……」  暫の余韻の後、彼女はくたっと全身の力を抜いて、ずるずると床に滑り落ちた。 「おっと」  お尻が床につく直前で俺は彼女を捕まえ、そのまま「お姫様抱っこ」の状態で抱き上げる。 「はぁ、はぁ、はぁ……う……ふぅ……ぅ……」  腕の中に収まるほどの小さい身体。  荒い呼吸、身体の火照り、柔らかな感触、潤んだ瞳――全てが愛しかった。 「あ……」  やがて抱き抱えられている事に気づいたのか、シェナは子猫のように胸板に頬を擦り付けてくる。  おずおずと伸ばされた両腕が、きゅっと俺を抱き締めた。 「ワール……好き……、好き……」  耳元に熱い吐息がかかり、たまらず彼女の顔にキスの雨を降らせた。 「あぁ……ワール、ワールぅ……んん、んぅ……」  嬉しそうに瞳を閉じるその唇を奪い、舌を絡ませる。 「ん……、ん……」  絶頂の余韻もあってか、シェナの舌は蕩けるような熱さだった。 「ん…………」  シェナの髪留めを背中越しに解く。  腰の上にまで届きそうな、意外なほど豊かな青い髪が流れ落ち、甘い彼女の匂いがふわりと漂った。  夜はまだ始まったばかりだ。  今夜は徹底的にヤルつもりだ、まだ前哨戦も終わっていない。  だが、もう少しだけ、あと数分くらいは、このままでいてやろうと、  柄にもなく思ったりした。 □とりあえずここまで  ども、なんか勢いで書いてみましたSyaraです。  長ったらしいうえにまだ全然濡場終わってません、すいません(汗)。  いちお、続き書いてます。ご感想とか頂けると、早く書けるかも知れません(苦笑)。  まー元ネタが半分自分のキャラ(名前は変えてあります、念のため)なんで、  先達の方々に設定とかストーリーが似てしまうのはどうかご容赦くださいまし。  ではでは。  あ、参考までに…… シェナ:サイズS/フェイス1の青髪タルタル。     今回はアレですが(苦笑)、ふだんは元気印の白魔道師です。     標準タルより少しスレンダーなイメージで書きました。 ワール:金髪ヒュム。戦士。     言動と独白の口調に違いがあるのは仕様です(笑)。     ちょっと偽悪的で口の悪いやんちゃ坊主ってとこですかね。     や っ て る 事 は 鬼 畜 で す け ど。