ミスラとエルヴァーンは、みんなが想像している以上に身長差が大きい。 彼とあたしが向き合うとあたしの目の前には彼のお腹がある。引きしまってて、筋肉が割れてて固そ うなお腹。装備の隙間からみえるお腹をつんつんとつつく。 「うひゃひゃはは! って何してんだよこの猫わ!」 ぺしっ、と彼があたしの頭をはたく。 「んに"ゃっ! ぶつことないでしょぉー」 「うるさいノラ猫。邪魔するな」 「むぅー……」 あたしは頭を押さえながら、競売前の人込みをすり抜けた。 だいたい彼は男の癖に買い物が長い。今からパーティでモンスター倒しに行こうってのに戦士が山の 幸串焼き以外に何を買うっちゅーのか。どーせ新しい武器か防具が欲しくて悩んでるに違いない。 戦ってる姿は強くてカッコイイから、いい武器そろえるのは大賛成だけどー。 ヒマだから宅配所で荷物整理なんかしてると、やっぱし。彼が目新しい片手斧を抱えてニマニマしな がら、歩いて来るとこだった。 ぴょんと立ち上がり、両手を広げて彼を迎える。思いっきり愛情を込めて抱きついたのに、彼は歩調 を緩めないまますたすたと歩き続ける。 お陰であたしは彼の腰に抱きついたまま、ずるずると引きずらてしまう。 「……」 「なんだよ歩きにくいな。ほれ、ちゃんと立てよ」 彼があたしの首根っこをつかんで立たせた。 その時だった、聞き覚えのある声が、競売所の人込みを突き抜けて届いたのは。 「ティナー!」 高い女性の声だ。思わずぴん!と耳がたった。振り向いた視線の先には懐かしい女戦士の長身があっ た。 「あっ、レイヴンさむぎゅ」 競売所前はすごい人ごみなのに、その間を苦もなく駆け寄って来たレイヴンさんは、そのままの勢い であたしを抱き締める。 膝をついた彼女の胸にがっしりと抱き込まれて、苦しい。けど、嬉しかった。ずっと逢いたかったか ら。もう逢えないかも、そう思ってたから。 ひとしきりあたしを抱きしめたレイヴンさんが、満足したのか身体を離した。あたしは彼を紹介しよ うと口を開けかけて、塞がれた。その唇で。 「んんんーっ!!」 まずいまずいまずい。彼に誤解されちゃう。あたしは手をつっぱって抵抗したんだけど。かなうはず なかったんだ、そういえば。 柔らかい舌がするりと入って来て、探るように口の中をまさぐっていく。舌をゆるく吸わればがら、 溢れそうになる唾液を飲み干す。あたまがほわんとなって、とろけるような気持ちになるキス。 彼女が唇を解放してくれた時には、あたしはすっかり力が抜けて、頬を包む彼女の腕にすがりついて いた。はふぅ……と思わず吐息が漏れてしまう。 「んふっ♪ 相変わらず可愛いわねティナ、食べちゃいたいわ。それで、いつジュノに来たの?大変 だったでしょう?」 視線を合わせ、軽く頭を撫でてくれながらレイヴンさんが優しく話し掛ける。あたしは答えようとし て、ひっ、と息を飲んだ。あたしとレイヴンさんの顔の間、正確にはレイヴンさんの鼻先に斧の切っ 先が突き付けられたからだ。 (げ、忘れてた) あたしは青くなった。斧の持ち主はもちろん彼だ。これ以上ない程の険悪な黒い雲を背負って、あた したちを見下ろしていた。 「誰?」 「貴様こそ誰だよッ!ティナになにしてやがんだ!!」 「えっとあのその、まってよジェネ……」 あたふたと言い訳しようとするあたしを制して、レイヴンさんがすっくと立ち上がる。鼻先の斧も同 時に移動するのに、まったくお構い無しで。 「わたし達冒険者の武器は人に向けるものじゃない。獣人やモンスターに向けるためのものよ。喧嘩 ならいくらでも相手になってあげる。斧しまいなさい」 背中に背負った巨大な両手剣を外してあたしに渡して、レイヴンさんが啖呵を切った。 (ひゃーかっこいいー) あたしってばどっちを応援してるんだか。 「上等だ……」 彼はいまいましげに歯をきしらせて斧をあたしに押し付けた。 「ティナの彼氏?」 「うん」 「じゃ、手加減してあげる」 彼から視線を外さずに、レイヴンさんが人ごみから離れる。群集から少し離れたところで、彼が先制 攻撃を放った。強烈な右フック。モンクも真っ青。だけどレイヴンさんはひょいと身軽にかわす。 エルヴァーンの戦士どうしの、派手な喧嘩が始まった。 競売所で買い物をしてた人、通りすがりの人、野次馬がどんどん増えてまさに黒山の人だかりだ。あ たしはその最前列で、二人の喧嘩をはらはらしながら見守っていた。 といってもレイヴンさんは恐ろしく強くて、ジェネの渾身の攻撃もひらりとかわし、受け止めてしま う。そして隙を見せる度に、平手でぱしぺしと彼をはたくのだ。完全に遊ばれちゃってる。ううっ、 ジェネ可哀想……。 にーちゃんどうしたー! がんばれよー! などとからかい半分の野次が飛ぶ。 さすがに気の毒になってうるうるしてると、ぽんと頭に手をのせられた。みあげれば、純白の騎士服 に銀の髪のエルヴァーンが見下ろしていた。 「グランセスさん!」 「ティナ。ひさしぶりだな。元気だったか?」 「うん! グランセスさんも! ……って、止めてくださいグランセスさんーんっ!」 あたしはグランセスさんの服にすがりついた。と、その言葉も終わらない内に、彼の手があたしの顎 を軽く持ち上げて、迫ってくる顔。重なる唇。 (もうーこの人たちはどーしていきなりキスなのーっ? 人前でぇぇ) 幸か不幸かグランセスさんのキスは、ちゅー、って唇を吸っただけの軽いキスだったんだけど。目を 向ければ、レイヴンさんにがっちりと羽交い締めにされたまま、顎を落として硬直するジェネと視線 があってしまったのだった。 それから喧々囂々、嵐が吹き荒れて。陽気に手を振るレイヴンさんと余裕綽々のグランセスさんと別 れて、レンタルハウスへ戻って来た。さすがに狩りにはいけないよね。 「で? 結局なんなんだよ、あの二人は」 最大級の仏頂面で、むっつりとソファに座った彼が、言う。 「えっと、あっと、そのあの……あたしの……」 「ティナの?」 「……ハジメテノヒト」 額に汗を浮かべてぼそぼそとつぶやくあたし。ぴきっと青筋を浮かべるジェネ。 「あの騎士野郎がか?」 「それと、レイヴンさん」 「は?」 「だからその……二人がかり」 後になって思い出して笑える程に、その時の彼の表情の変化は面白かった。本人にそんな事、口が裂 けても言えないけど。 「……」 彼は頭を抱えてしまった。そしてぼそっとつぶやく。 「遊びなのか?」 「え」 「そんな女だとは思わなかった! 俺との事も遊びだったのかよっ!」 並んで座っていたあたしの胸ぐらを、ジェネがつかみあげる。 「そんな事ないよ! あたし、ジェネの事マジメに好きだンむーっ」 もーっアンタらキスする前にヒトの話を聞けーっ。 レイヴンさんの甘くてとろけるようなのとも、グランセスさんのあったかくて包み込むみたいなのと も違う、噛み付くような激しいキス。 荒っぽくて息つく暇もないくらいだけど、あたしはこのキスがとても好きだった。 「あんっ、あうっ、も、もぅ許してぇ……」 シーツに突っ伏して、尻を高く突き出す格好で、あたしは必死に彼に訴えていた。 彼の長い指がお尻とあそこの両方に入っていて、ぐちゅぐちゅと音をたててかき回している。中で擦 れて、あたしはイきそうになってお尻を震わせる。 「も、イく……」 「まだ駄目だ」 ぞくぞくとしたソレが這い昇って来る直前、彼が乱暴に指を引き抜いた。じゅぽっ、ってすごい音を たてて。 「あはぁあっ……やだぁ、ヤめちゃやだぁ。イかせてぇぇ」 イく寸前で刺激を止められて、あたしは悶えた。恥ずかしい格好のまま、あそこが、お尻の穴が、ヒ クヒク痙攣してるのが自分でも解る。 「はぅ……あ……はぁ……」 ずるりと腰を倒して、荒く息をつく。無意識に太股をすり合わせるけれど、そんなんじゃ求める快楽 は得られない。たまらずに股間に伸ばした手を、彼が素早くつかんだ。 「何してる。自分でしようなんて許さない」 「だって、だってジェネがいじわるだから……おねがっ……も……許してぇ……」 泣いて腫れた目から、再び涙が溢れる。彼が優しい仕種で涙を吸ってくれる。顔に触れる唇の感触だ けでも快感に思える程、感覚は追い詰められて。 でも、イかせてもらえない。 何度も何度も焦らして、与えては取りあげて。 力なくくたりと仰向けに転がった身体、彼の手がそろりと伸ばされる。あたしは無意識のまま、大き く脚を開く。 「自分で見てみろよティナ。すげぇな。ぐちょぐちょだよオマエ。中まで丸見えだ」 彼が背後から抱きかかえるように、あたしの膝裏に手を入れる。覆いかぶさるような彼の胸に押され て、自分の秘所を覗き込むような格好をさせられる。 中心の襞は開ききって、とめどなく汁を溢れさせていた。執拗に弄られた陰核は赤く勃起して襞の間 から突き出して。 彼の指先が、襞の中を浅くかき混ぜる。ちゅぷちゅぷと小さな音がして、蜜が糸を引いて彼の指にか らみつく。 「ああぁぁぁ」 それだけでもうイきそうになって、あたしはきゅ、と目を閉じた。が、またしても彼は指を引いてし まう。 「ぁああ……あ……だめ……」 叫びだしそうな欲望と裏腹に、ぐったりと身体が弛緩する。意識が遠のく。 気絶しそうなあたしの身体を、彼は易々と持ち上げる。後ろから膝をすくう恥ずかしい格好で。 熱く滾るそれが触れたと思う間もなく、彼の腕の力が緩み、貫かれる。身体が。 「んああああああー」 一気に覚醒へと引き戻され、あたしは悲鳴を上げた。それは待ち望んでいた感覚。愛しい彼と深く結 びつく、歓喜の瞬間だ。同時に痛みと苦しさもあたしを襲う。 痛い痛い痛い。人間の中では小柄なミスラ族に、エルヴァーンの剛直は大きすぎる。 ギリギリまで張りつめたあそこを熱く固い感触が擦りあげる。骨盤がぎしぎしときしむ。 彼が腕を緩めるたびに、みずからの体重が再奥を突きあげる。あたしは必死で手を伸ばして彼の首に しがみつく。 「あうっ! あうっ! ひあっ! ひああっ!」 「気持ちイイのか? 気持ちイイんだろ? ティナ、答えろよ」 彼が耳もとで囁く。その声が興奮に少しうわずっていて、驚いた。ふだんはもっと余裕っぽいのに。 「きもちいいっ! イっちゃう! ジェ……イっちゃ……イぁあああああっ!」 すでに焦らされまくって追いつめられてた身体はあっという間に達してしまった。襲って来る痙攣に 身を任せ、頭の中がまっしろになる。 気がつけば、横たわる彼の胸の上に抱かれていた。まだ繋がったまま、ゆるゆると彼の腰が揺れてい る。 「ふああ……あ……ジェネ……」 「ったく痛ぇよ。思いっきり爪立てやがって」 苦笑する彼の肩から胸にかけて、赤い傷痕が幾つも走っていた。あわてて両手を見れば、爪の間に血 が滲んでいる。 「ご、ごめんっ……」 「ティナ。好きだ」 彼が腰を突き上げた。ガツンと、お腹の中に衝撃が走る。 「はぅん! あ、あたしも好き! ジェネが好きだよぉ!」 「ホントかよ……」 「あうっ! ほ、ほんと、だもんっ! ひあっ!」 くるりと、彼が身体を入れ替えた。覆いかぶさる瞳が、揺れている。 快感と苦痛に翻弄されながらも、あたしは必死で目をあけて、彼を見つめた。頬に手を伸ばして、そっ と撫でた。 「ほんっ、とうだよ! ジェネ、大好き……」 彼が笑った。ふ、と息を吐き、身体をかぶせる。容赦なく腰を動かしはじめる。 「顔、ひっかくなよ」 「ひぁああっ、あ、あ、あ、あ、あ!」 応える余裕は、あたしにはなかった。 「ティナー♪」 聞き覚えのある高い声に、あたしは振り向きながら、顔の前で腕でおおきくばってんをつくった。 横に立ってるジェネの額にぴきっ、と青筋が浮いてるから。見えないけどわかる。絶対浮いてる。 抱きついてきたレイヴンさんが、回した腕はそのままに、身体を仰け反らせてあたしを見つめる。 「なぁに? その腕」 「えと、あのレイヴンさん。彼がいる女の子は、普通、他の人とキスしたりしないと思うの」 レイヴンさんは膝をついたまま、ジェネのほうを見上げ、にまーっと笑った。 「ははーん。焼きもち焼きさんねぇ、彼。じゃ、しばらくはティナとのイイコトはおあずけにしてお くわね」 腕をほどいて、レイヴンさんがすらりと立ち上がる。高くて見にくいけど、背の高さはジェネとほと んど変わらないみたい。背の高い人なんだ。 レイヴンさんがひょいと手をのばし、ジェネの頭を抱えよせた。あっと声を出す間もなく、彼の唇を 奪う。 「……!」 「彼と別れたらいつでもいらっしゃいね、ティナ!」 あはは、と笑って手を振って、レイヴンさんは走っていった。向うにグランセスさんが苦笑しながら 立っている。 ジェネは、レイヴンさんを目で追って、ぼんやりと突っ立っていた。 あたしは彼のお腹を思いっきりつついた。 Genesis  Elvaan♂:F6a job:Warrior Tina-Erunki Mithra♀ F8a job:Theaf Glances Elvaan♂:F5b job:Knight Raven Elvaan♀:F3b job:Warrior --------------------------------------------------------------------------------- @しらかん http://blue.ribbon.to/~shirahagi/ffxi/ 過去作品アリマス。