自慰  ササミは、ぼんやりとした頭で毛布に包まっていた。  昨夜は恋人のリュージンが初めて自分を抱いて、思った以上の激しさをこの身に受けた。  今はそのリュージンはここにはいない。  ただ、出かけてくる、と聞いたような気がするだけ。  どこへ行ったのか、何をしに行ったのか、よくわからない。 「昨夜は…すごかったな…」  気高く厳しいといわれるエルヴァーンにしては珍しく、いつも優しそうに柔らかく微笑 んでいる彼が、ここではとても激しく男らしかった。  なんと言うのか、ああ、やっぱり彼はオスだったのだ、と実感できるような。  あの人もオスだった。  これは、とても新鮮でくすぐったく、否応無しにササミ自身もメスに仕立て上げられて しまう。  思い出すだけで体が熱くなって、子宮からその出口まで脈を打つような動きをする。 「んっ…」  思わず出る声に、ササミは驚き、苦笑する。  それくらい自分はメスになってしまったのだと実感してしまう。    今でも。  口の中は舌を入れられて。  体中にあの長い指を滑らされているような気がして。  もちろん、まだ秘所はリュージンを受け入れているような。    そんな感覚がササミの体を支配している。    ササミの指が、それをなぞるようにササミ自身の唇をなぞった。  ゆっくりと唇を割って、舌と絡ませる。  ちゅ、と音を立てて指を吸った。  軽く目を閉じて、その指を首筋に這わせた。  舌はまるでリュージンを受け入れるかのように口の中をうごめいている。  首筋、胸、脇… リュージンの触った後をなぞりながら、ササミは想像の中でもう一度 リュージンに抱かれていた。 『ササミ、どこが気持ちいい?』  耳元でリュージンに優しくささやかれて、耳も気持ちよかったのか、と思った。  試しに耳も触ってみる。  するといつも以上にくすぐったく敏感になっていた。  お尻を触ろうと思って、ササミがうつぶせになる。  すると、心臓の速くなった音がベッドに響いて耳に届いた。  ドキドキしている。昨夜のあの時と同じように。  右手を前に回して、内股をゆっくりと撫でてみた。  左手で、お尻を撫でてみた。  リュージンのそれではないけれど、それでも少しづつ、あの時のような揺らいだような 気分に近くなる。  内股を撫でていた右手の指を秘所にすべり込ませた。  それまでの熱い吐息が声になり、口元から漏れた。 「ん…っ、あ、ああ う、ん」  急に、リュージンのそれが欲しくなった。 「りゅー…、りゅー…」  名前を呼んで、その感覚を呼び戻そうとする。  あの時の、つながった瞬間を。  その時毛布に包まっていたはずの背中が空気に晒された。  え、とササミが真っ白になる前に、ササミの右手が秘所から取り払われて、本物があて がわれた。  ササミのむき出しの背中に、上質のローブの布の感触が広がる。  リュージンが着衣したままのしかかってきたのだ。 「ササミ、いやらしいな、我慢できないぞ」  低い声が耳元で囁く。 「や、やだ、りゅー、見ないで」  するっとリュージンの熱い塊が体の中に入ってくる。  ひあ、とササミが高い声を上げた。 「お前でも、そういうのするんだな。興奮するよ」  リュージンの熱い息がササミの耳にかかり、ササミはぎゅっと目を瞑る。  リュージンは腰を激しく動かしつつ、何を気に入ったのか、ササミの耳を口に含んだ。 「昨日も思ったが、俺が初めてか?耳を攻められるの」 「ん、や、ぁ」  ササミは耳を触られるたびに逃げようとするが、リュージンはそれを許さない。  触ったときに驚いた顔してたよな、と言ってリュージンはくるりと器用にササミを仰向 けにした。  着ていたローブを無造作に脱ぎ捨て、リュージンがニヤリ、と笑う。  深く深く口付けをして、リュージンはササミに更に激しく腰を打ちつけた。  羞恥と快感がササミの体を駆け巡る。  ササミが大きく声を上げて、体が大きく脈打った。 「ごめん、もう俺余裕ない」  そう言ってリュージンが低くうめいて眉間にしわを寄せて、歯を食いしばった。    詰まった息を大きく吐き出して、リュージンがササミの耳を触る。  リュージンはササミの耳がお気に入りになったらしい。  ササミは逃げ出したい気持ちでいっぱいだったのだが、リュージンがそれを見越してサ サミに回した腕をほどこうとしない。 「食べ物を買って帰ってきたら、こんなことしててびっくりしたよ」 「ううっ」  耳の先まで赤くなるササミを見て、リュージンはぎゅっと抱きしめた。 「俺、足りなかった?と思ったけど、お前、俺の名前呼んでくれたもんな。昨夜の事思い出 しててくれてたの?」  ササミはその言葉の返事の代わりに、額をリュージンの胸にぐりぐりと押し付けた。  リュージンは外出用に縛った髪をほどいて、ちゅ、とササミのほっぺたにキスをする。 「3日分の食糧は買った。しばらくは外に出ないよ」  耳以外に、どこか初めての場所があるのかな。  そうつぶやいて買ってきた食べ物を食べずにリュージンはササミにもぐりこんだ。