◇ 誓い −(2) 「う、ん」 私……何かを嗅がされて意識を失って……。 ここはどこだろう? ぼんやりしながらあたりを見渡す。 「目が覚めたかい?仔猫ちゃん」 ハスキーボイスなミスラが声をかけてきた。さっきの見た男と、もう一人別の男がいる。 「…あなた、たちは?」 体を動かそうとしたけどぼうっとして上手く動けない。 体が痺れてるような感覚があった。ロープ等で縛られていることに気が付いてゴクリと 唾を飲み込んだ。 相変わらず窮屈なコルセットにガーターベルトとストッキングは身ついていたけれど、 ショーツは脱がされ、胸の部分は露わにされている。 そんな状態を他人に…男の目に晒されているかと思うと羞恥に顔が熱くなり、 同時に氷水を掛けられたみたいに背筋が冷たくなった。 「私達の正体は秘密。アナタがこれから何をされるかはアナタが想像したとおりよ♪」 にっこり笑いながらミスラが言った。その微笑みがあまりにも楽しげでゾッとした。 身動きできる範囲で必死に体をよじるが逃げる事は不可能だと思われた。 後ろ手にロープで縛られ、両足も縛られてどこかに繋がれているらしい。 例え手足が自由になっても3対1ではすぐ取り押さえられてしまうだろう。 男達は野卑な笑いを浮かべ遠慮のない視線で全身をねめ尽くす。 ミスラはよくわからない機械を覗き込んでいる。…カメラというものだろうか? 「さ、よーく体を見せて」 ミスラがそう言うと一人の男が背後に回り私の膝を思い切り左右に広げた。 男の両足に引っ掛けられ固定され、それからアソコを指で押し広げられた。 「いやっ!」 普段空気に触れない奥の方まで剥きだしにされた感じがした。 「ひぁっ、うっン」 同時にその周辺をこすったり毛を引っ張ったり弄ばれ、溜まらず声が漏れた。 「綺麗な色してるわねぇ」 笑いながらミスラはカメラを私の体に…股間に…ぐっと近づけてきた。 手の空いてる男が剥きだしにされた胸にしゃぶりついてくる。 舐めてるというより唾液をこすりつけるように胸の先端に舌を押しつける。 片方の乳首も乱暴なまでに摘まれ捻られてヒリヒリとした痛みを訴えた。 「ヤダッ…イタい…やめて」 懇願してもムダだと分かってはいたが口からそんなセリフばかりが出た。 「もうヤッていいっすか」 「馬鹿ねぇ、無理矢理やるのが目的じゃないっていったでしょ? この仔猫ちゃんが自分で感じていやらしく腰を振るくらいじゃなきゃダメだって」 目的…?目的って何? 「見たとこ初めてっぽいし、それは無理なんじゃないすか?」 「これをお使い」 ミスラの女が男に何か小瓶を渡した。男がそれを指に取り再び股間に手を伸ばした。 「あっつぅ…やッ!あぁッ!」 男の指が体に入ってきた。異物感とたまらない熱を感じ、悲鳴に似た声を上げた。 「あったかくて柔らかいな…指に吸い付いてくるぜ」 男の指が体の中で動き回る。痛みと感じたことのない何かに恐怖する。 「…もう一本入れるか?…そら」 「いぁ…いたっ…」 「濡れてきた、奥から溢れてきたぜ」 何か体の奥からじんじんと痺れ、潤滑油ができたように男の指がスムーズに動きだし、 中をかき回した。 痛みがだんだんと別のモノに変わる。…さっきの変な薬のせい? 揉まれている胸にも何か擦りつけられ熱を帯びてきた。 「ここも剥いてやろう」 どこかわからないけど男が刺激したそこに電気が走ったみたいに体がビクッとなる。 そこを指でいじられて、中で動き回る指と胸を弄ばれて堪らず体を仰け反らせた。 足の指先がピクピクした。 「感じてきたみたいだねぇ」 いやらしい笑みを作りつつミスラがカメラを向ける。 (いやっ認めたくない!こんな男達の手によって感じてるなんて!) 髪を振り乱し否定するように頭を振った。 「ひっぎっ!」 男が指を引き抜いた。内側が引っ張られる感覚に叫ぶ。 「たっぷり濡れてるぜ。ほら」 引き抜いた指を目の前にかざす。見たくなくて目をギュッと瞑ると唇に指をなすりつけられた。 変な匂いとぬるぬるした感触を味わい、それが自分の…匂いなのかと思うと恥ずかしくて溜ま らなかった。 「ひゃうっ」 男達はさらに足を広げさせ、お尻の穴を触った。溢れた滴を後ろの穴に塗り込めている。 「イヤッ!」 「ほら、ゆっくり広げておやり」 お尻に、指が差し込まれた。指とは思えないくらいの圧迫感にくぐもった悲鳴が上がる。 「力を抜かないと余計痛くなるわよ?」 耳元でミスラが子供に言い聞かせるみたいに優しく言った。 けれど本能が男達の指を拒むように自然に固くなり、そのせいで余計に痛くなるのだろう。 男の指一本でお尻の穴が避けるかと思った。 息が出来なくなってくぐもった声が自分の声じゃないみたいだった。 男が手首を回す。お尻の穴で指が蠢く。 さらに前にも再び指が差し込まれて違うリズムで前と後が攻められた。 涙が零れていた。体が震え、何かが突き上げ込み上げてきてワケがわからなくなった。 「あああぁ!いやぁあああ!」 「ふふ、イッたね」 ミスラが嬉しそうな声を出した。 今のがイクってことなんだ。私、知らない男達にイカされちゃったんだ。 切なくて情けなくて涙が出た。 泣きながら薬の効力が弱まったのか、熱が覚めたように意識がしっかりと感じられてきた。 「さて、じゃあ体の準備もできたし本番いこうかね」 「あなた達…誰に頼まれたの?」 「ん?」 「お金で頼まれたのなら、私…それよりもたくさんあなた達にお金出すから…もうやめて」 「へぇ、随分冷静になったね。結構かしこいじゃないか」 だって、この状況から力の無い自分が腕ずくで逃げるのは無理。 さっきの会話で察するに誰かが私を陥れたいのだ。なら、お金で請け負ったのだと思う。 真っ直ぐに姉御肌なミスラの瞳を見つめた。 「ねぇいくら?」 交渉はムダかもしれないと思っていたが、とにかく時間を稼ごうと必死だった。 「生憎ねぇ…こっちも仕事受けた以上、途中で乗り換えなんてこた出来ないのさ」 時間を稼げばどうかなるとは思えなかったけど、何かしなければチャンスは生まれない。 ピンチになったときはまず冷静に状況判断して、それから助かる為の材料を探すのだ。 「多分、シュヴァルツと私の結婚を反対したい誰かの依頼よね?私が汚されれば彼は私と 別れるって」 「……まぁそういうことね」 「でもシュヴァルツの目的は勘当される事だから、私が“汚された花嫁”になってもそれは より効果的になるだけだと思うわ」 これは悲しいけど本当の事。 私が誰かに乱暴されたからと言って怒りはするだろうけど悲しんだりしないと思う。 最も彼は愛する人が乱暴されたからって愛情が失せるような薄情な人ではないと思うけど、 最初から彼は私の事なんて愛してないのだから失せるはずもない…。 「へぇ…」 「だから、もうこれ以上やる必要ないと思うの」 「アナタ、見た目より頭がいいのねぇ」 「…ありがと」 見た目はおバカさんって事なのかな。失礼だけど誉め言葉っぽいから御礼を言っておこう。 「ふふ、可愛い♪仕事抜きでも虐めて、泣かせて、よがる顔が見たかったりするわねぇ。 でも、お喋りが過ぎるね、ちょっと可愛いお口を塞いでおやり」 男が私の髪を掴んで唇を塞いできた。 シュヴァルツとの誓いのキス(あんなそっけないものでも)がなかったらファーストキスに なるところだった。 男の舌が口唇を割ってこようとするのを必死で抵抗する。 いや、いっそ侵入してきた舌に噛みつこうかと思った。 「変な気をおこすんじゃないよ。噛みついたりしたらその可愛い顔を傷つけなきゃいけなく なる。依頼主はね、アンタを殺しても構わない。顔や体に傷付けるのは大歓迎。そんな感じ だったからね。でも、そんなことしたくないんだよ。 その筋のムービーならやっぱり女優の顔は綺麗な方がいいからね? だから抵抗したり下手なことしてアタシ達を怒らせない方がいい」 私が考えた事を見透かされたようだった。頬に冷たい金属の感触があった。 もう少し力を加えてスッと引いたら…想像して恐くなり、抵抗していた力が抜けた。 途端、男の舌が口に侵入してきて乱暴に舌を絡めとりきつく吸われた。 歯の裏をなぞられたり上顎を刺激されたり、奇妙な生き物が口の中を這い回る感覚に気持ちが 悪くなった。 他人の唾液を飲まされるのが非道く屈辱的だった。 それでも、自分は器量よしではないけど……顔にキズつけられるのはやっぱり嫌だった。 涙と零れた唾液で顔がべとべとになる。 「大人しくなったね。それじゃいこうか」 「やっとかよ。あとでしゃぶりかたも教えてやらなくちゃな」 男がズボンを脱ぎはじめた。グロテスクなモノが屹立している。 あんなの入れられちゃうんだ…? もうダメかも…死ぬくらいなら諦めた方がいいのかも。 でも、初めてはシュヴァルツにあげたかったな。 ――――!! ふと、閃いた。 シュヴァルツ達は自分を捜しているのではないか?近くに来ているのではないか? ……来ていて欲しい。 単なる願望かもしれないが来ている気がした。 「さーて、いくぜ」 男が両足をぐっと持ち上げて、硬いモノを押しつけてきた。 「待って、お願い…もう抵抗しないから、腕だけでもロープほどいて…縄が食い込んで 痛い、の」 「ああん?」 男は興奮して聞く耳持たないように、そのグロテスクなモノをこすりつけてきた。 「そうだねぇ、どうせ逃げられないしほどいておやり。その方が積極的にやってるように 見えるだろ」 後ろで支えていた男が手首のロープを外してくれた。 羽交い締めされる前に隙をつき右手を掲げる。 女神アルタナよ――どうかお守りください。 「女神の祝福!」 白魔道師に与えられた切り札。女神との契約で二日に一度だけ使える力。 頭上に伸びた光は辺りを神々しく照らした。 近くにいるのなら気付くはず…気付いて! 助けに来て!お願い!! 「このアマァッ!!」 ガッ! グロテスクなモノを屹立させたまま男が私の脇腹に蹴りを入れた。 衝撃で体がふっとばされる。 お腹に鋭い痛みを感じうずくまる。 (痛い…よぅ…。) 一か八かの賭け、助けが来なかったら彼らを怒らせてしまった私は殺されるかもしれない。 「死姦にされてぇのか?あぁっ!?」 男達が口汚く怒鳴っているのが聞こえる。 「お待ち!ずらからないとヤバイよ」 「姉さん!?」 「依頼主はエルヴァーンの男に一切手出しはするなって言ってたんだ。対峙したらこっちが不利だ。 ムービーや写真で依頼はとりあえずOKだからね、とっととずらかるよ!」 男達は舌打ちしながら荷物をまとめて窓の方へ走った。 遠ざかっていく足音。 …助かったかも。 安堵の溜め息が出た。 「〜〜〜〜〜!!!!」 ガシャーーーン!! ホッとしてぐったりしたとき、獣人の咆吼みたいなものが聞こえ、同時に激しく物を壊す音がした。 なんだろう?獣人……? 逃げなくちゃ…せめて隠れなくちゃ…! そう思いつつ蹴られたお腹が思った以上のダメージでなかなか立ち上がれなかった。 −続く−