木製のジョッキに満たした冷たい井戸水を飲み干し、アリアはようやくほっと胸をなで下ろした。 なにせ、一月振りの生まれ故郷である。 冒険者の為に設置された公衆浴場で旅の埃を洗い流し、ようやく自分のハウスに戻ったときには すでにとっぷりと日が暮れていた。 安心感から気を緩めて無防備な背中を自分に見せている彼女に対し、ルーヴェルはいささか違った 思いを抱いていた。音もなく忍び寄ると、そろりと両手を伸ばしてアリアを背後から抱きすくめる。 「ルーヴ?」  きょとんとした声に構わず、彼はアリアの纏うローブの合わせ目に自分の手を忍ばせた。 胸の双丘を探りあてると片方を包み込み、感触を確かめる。そして白い首筋をきつく吸い、 いくつも紅い花を散らしていった。 「アリア・・」  耳元で熱っぽく囁かれ、アリアは狼狽した。 抵抗しようとするが、ルーヴェルは巧みに彼女の動きを封じる。もう片方の胸に触れられると同時に、 耳を甘噛みされ、次第に自分で自分の体を支えられないほど力が抜けていってしまう。 やがて、ルーヴェルの両腕にアリアの体の重みが感じられるようになると、彼は彼女をテーブルの上に 座らせた。服の合わせ目からこぼれる白い胸元が、ルーヴェルの本能をひどく刺激する。 彼女が普段着にしている半ズボンの裾に手をかけると、余計な抵抗をされる前に下着ごといっきに 引きおろした。 「きゃっ!?」  ルーヴェルに抱かれるようになってまだ間もない彼女は、流石に悲鳴を上げた。 拒絶するように膝を合わせて足を閉じる。泣き出しそうな瞳が彼を睨んだ。 「ルーヴったら・・」  ルーヴェルが膝に手をかけたので、アリアは辛うじて抗議する。仲間の前では口数もそう多くなく、 あまり自己主張する事もないルーヴェルであったが、数ヶ月前にお互いの気持ちを確かめ合って以来、 二人きりになると人が変わったように激しく彼女を求めてきた。そして大抵、アリアもそんな彼を 拒めなかったのだが。 「一ヶ月」  ぽつりとルーヴェルが呟いた。 「え?」 「なんだかんだで、1ヶ月以上もお前に触れられなかった。少しは俺の身にもなってくれ」  そっとアリアの頬に触れると、彼は唇を重ねた。何度も何度も、ついばむように口付けを交わす。 鎧の下に着る薄い短衣を脱ぎ捨てて上半身を外気に晒すと、ルーヴェルは再度彼女の体に触れた。 浴場から戻ったばかりで、しっとりと湿り気を帯びた肌は彼の手に心地よい感触をもたらす。  膝をこじ開けてその間に腰を滑り込ませ、お互いの体を密着させる。 そして、嫌がって後ずさろうとするアリアの耳に唇を近づけた。 「今度いつ、こんな風に二人きりになれるかわからないだろう?だから、おまえの事を全部知っておきたい」  言うなり、ぐいと力を入れて両足を開かせると、彼だけに訪問を許された花園を暖炉の明かりの前に 晒してしまった。彼が与えた快感と羞恥とで、そこは密やかに妖しくも、訪問者を待ちわびている。 「や、やだ、ルーヴ止めて、こんなのひどいよ・・」  くすんくすんと鼻をならして、アリアが泣き出した。 いくら熟練した冒険者とはいえ、彼女は魔道士である。重厚な剣や強弓をやすやすと使いこなせるほどに 鍛え上げられたルーヴェルの腕力に、かなうはずもない。そんな恋人の姿を、ルーヴェルはひどく優しい目で見つめた。 しかし、その行動はあくまでも本能に忠実なものであったが。  ぽろりとこぼれた涙を唇ですくい、ルーヴェルはアリアの瞼にキスをするが、次の瞬間には膝を折り、 晒された花園の前に顔を近づけた。 「・・綺麗だ、アリア」  香りに誘われた虫のように、ルーヴェルは花心に口付けた。 あっ、と声を上げて、アリアがきゅっと足を閉じる。 だが、その動きは逆に彼を花心の奥へと誘う形になってしまった。 「だめ、だめだったら・・!」  逼迫した声にルーヴェルは耳を貸さない。割り開かれた花にそっと舌を這わせ、形をなぞる。 アリアの口からはもはや言葉が紡がれなかった。押し殺した悲鳴の連続だけが漏れる。 最後に、彼女の一番敏感な部分を見つけた彼がそこに触れてしまうと、 びくっと電流が流れたかのように一瞬アリアの体が硬直し、とうとうその全身から力が抜けてしまった。 浅い息をついて、ぐったりとルーヴェルにしなだれかかる。  だが、ルーヴェルは容赦なかった。彼女を一糸纏わぬ姿にしてしまうと、自分も下衣を脱いで、 今度は欲望の塊をそっと花園にあてがう。 「! ルーヴ、待って…せめてベッド、で、んっ!!」  ぐりっと剛直が進入する感覚に、アリアの体がのけぞった。 エルヴァーンの体格を支えるには、ヒュームである彼女は小柄すぎ、また不安定な座り位置で あることも加えて、激しく押し込もうとする勢いを受け止めきれない。 楓材のテーブルがぎしぎしと音を立ててきしんだ。 「やっ、痛い!止めて、いや…いたい…よぉ…」  青年の激情に冒されるアリアは、痛みと快感のもたらす相反した状況に耐えきれず、 無駄と知りつつも抵抗するしかなかった。 逆にルーヴェルはといえば、彼女と繋がる部分から立ち上る恐ろしいまでの心地よさにすっかり 理性を麻痺されられ、更に深い所への進入を欲してしまう。  熱に浮かされて、彼女の名を何度も呼びながらルーヴェルは己の体を繰り返しぶつけた。 その行為に翻弄され、悲鳴も出せずにいたアリアはやがて、全身でルーヴェルにきゅっときつくしがみつく。 その圧迫感は、彼にこの上ない快感をもたらした。 「ぐ、アリア、っ」  たまりかねてルーヴェルは溜まりに溜まった欲望を吐き出す。 彼の熱が自分の内に放たれたのを感じたアリアが、その身を大きく震わせる。 しばらく、放心したように乱れる二人の息づかいだけが、そう広くはない部屋の中に響いていた。 「だいじょうぶか」  そっと躰を離したルーヴェルが、なんとも表現しがたい表情で問いかける。だがアリアはそれに答えない。 うつむいて、ぐすぐすと涙ぐんだままテーブルの上にへたりこんでいる。 恥ずかしさのあまり、顔もあげられないのだろう。 その内股に自分の欲情の後が一筋流れているのを見た彼は、さすがに気まずい顔をした。 指先でそっとぬぐってやるが、あまりにも激しい情動に晒されたショックからか、彼女は泣きやもうとしない。  確かに度がすぎていたかもしれないが、こうやって関係を持った以上はいい加減慣れてほしいと思う反面、 こんなうぶな所がたまらなく愛おしく感じてしまう自分に、男は苦笑した。 (勝手だな、我ながら)  だが、ルーヴェルは両手を回してそっとアリアの背中を抱くと、彼女の頭を自分の胸に押しつけた。 髪をなぜ、背を軽く叩きながら素直に謝罪する。 「すまん、調子に乗りすぎた」  小さな子供をあやすように、アリアをなだめる。素肌の感触が心地よい。 「・・・うん」  ようやく返事が返ってきた。 「ちょっと、びっくりしたから・・」  小声でそういうと、彼女は瑠璃色の瞳で青年を見つめた。 その目尻に残っている涙を、ルーヴェルは唇ですくう。 口の中に塩の味が広がったが、彼の心には砂糖菓子のように甘かった。 「ごめんなさい、こういうの、あまり慣れなくて・・」  しゅんと落ち込むアリア。 「俺に抱かれるのは嫌か?」  つい、そんな言葉がルーヴェルの口からぽろりと漏れた。 考えてみれば、いつもルーヴェルが押し切るようにして彼女を寝台にひっぱりこんでいたのだ。 アリアが自主的に彼を求めた事など、確かに一度もない。 「そんなことない」  はっとしたように顔を上げるアリア。自分を見つめる蒼氷色の目を見つめ返す。 真摯な想いと、揺れる感情にあふれる視線。 「ただ、その、あんまりどうしたらいいのかわからない・・から」  叱られた子供のような声で、彼女はそう弁解した。 「バストゥークの訓練施設は、男女の別が厳しかったから。それに、わたし孤児だったから施設から出ること がほとんどなくて…冒険者として認定されるまで、一般の人と接する機会なんてほとんどなかったの」  うつむいた瞼から、またぽろぽろと涙がこぼれた。 「ルーヴがわたしに触れてくれるのは嬉しい。でも、わたし、どうしたらいいかわからないから怖いの…」  声もなく泣きじゃくる恋人の姿を見、ようやくルーヴェルの脳裏で様々な疑問が氷解したような気がした。なのに彼女は、それでも自分を慕ってくれている。 その事実を知ったルーヴェルは、一層アリアを愛おしいと感じるのであった。  立ち上がり、彼女を横抱きにしてベッドまで運ぶ。 小柄な体躯を静かにシーツの上によこたえると、彼は真上からアリアの青紫の瞳をのぞきこんだ。 「触れても、いいか?」  しばらく戸惑った表情をしていた彼女は、やがて小さくうなずいた。 許しを得て、無骨な手が白い肌の上を滑る。 「嫌ならすぐ止める」  軽くアリアの額にキスをし、それから何度も唇を貪る。今度はルーヴェルの心にもゆとりがあった。 彼女の反応を確かめるようにして、柔らかな肢体をまさぐる。 胸に触れると、アリアの体がぴりりと緊張するのがわかった。だが、拒絶の言葉は聞こえてこない。 「いいのか?」  一応、そう聞いてみる。彼女はこくんとうなずいた。 「ルーヴが、そうしたいなら…」  その返答が、今までいかに彼女を自分勝手に振り回していたかを、ルーヴェルに認識させる。 胸の奥が少し傷んだ。だから彼は、ひどく慎重にその手を進める。 桜色の先端を軽く弄ぶと、やっとアリアの表情に変化が生まれた。 「んっ」  嫌がる声ではなかった。だが、とっさに漏れた叫びに彼女自身が狼狽する。 「や、やだ」  口を押さえて視線を彷徨わせる。ルーヴェルの目をまともに見ようとしない。 そんな彼女の腕をベッドに押しつけると、青年は更に胸へ愛撫を加えた。 「恥ずかしがらなくていい、お前の声をもっと聞きたい」  静かな台詞とは相反する彼の行為ではあったが、アリアはようやく素直に従った。 無理に押し殺していた声を、少しずつ形にしていく。胸から脇腹へ、腰をなぞってそして。 すでに一度、ルーヴェルを迎えた場所へ、彼はするりと指先を潜り込ませた。 しかし彼女の体よりも、心がその動きに対して抵抗感を持つ。 「アリア」  諭すようにルーヴェルは恋人を呼び、震えるまぶたに唇を落とす。 「力を抜いてろ」  花園の入り口に指を巡らせながら、彼は何度もキスをした。 彼女の敏感な部分を探り当てると、執拗に弄ぶ。 「いやっ、ルーヴ、そこは…」  片手を押さえつけられながら、アリアはうわずった声で懇願する。 「お、おかしくなっちゃう、よ…怖いからやめて、こんな、の…」  強い快楽に慣れていない彼女は、ルーヴェルの行為が恐怖に感じてしまう。 果たして彼は、あっさりとその手を引いた。 「…わかった」  アリアがえ?という顔をした。 いつもなら、この後はほとんど有無を言わさず抱かれていたのに、今日に限っては ひどく冷静な顔で彼女の言葉に応えている。 「嫌なら止めると、言った」  そして再び、彼女の胸に手を伸ばした。 「ここなら、構わないな?」 「う、うん…?」  大きな手が乳房を包む。繰り返される愛撫、だが、 アリアの体の火照りが徐々にそれだけでは足らないと暴れ出す。 「ルーヴ、あの」 「どうした?」  言い出したのは良いが、聞き返されて逆に彼女の方が返答に窮した。 「その、何だか変な…感じがする」 「そうか」  ルーヴェルは限りなく表情を殺しながら答えた。 だが、アリアにはその内実がまったく判っていない。 なんと言えばいいのか、上手く言葉に出来ずに困り果てる。 「…そうか、って言われても」 「どうしてほしいんだ」  ルーヴェルの瞳に一瞬、してやったりという光が閃いたのを、残念ながら彼女は気付かなかった。 「わからないけど…なんだか、胸がもやもやする」 「もやもや、ね。何故だ?」 「わかってたら、聞かないよ…」  本気で困った顔をするアリアを見て、流石のルーヴェルもこれ以上いじめるのを止めた。 苦笑しながら、さっきまでの行為の続きを始める。 もう一度、内股へ指先を滑り込ませてみると、とろりと溢れた蜜の感触が伝わった。 「あっ」  かあっとアリアの頬が熱を帯びた。まだ、抵抗感が拭いきれない。 「…止めるか?」  白々しく問いかけるルーヴェル。ちょっと迷ってから、アリアはどうにか首を横に振る。 それを確認し、指の動きを早めるとやがて、艶めかしい水音が響くようになった。 恥ずかしさと快感で、彼女の思考が止まる。 「ルーヴ、ルーヴ…」  救いを求めるように、青年の名を呼ぶアリア。 しばらくして、ようやくルーヴェルは名残惜しげにその手を離した。 「嫌なら、もう終わりにするが」  横たわったまま浅く息をつく彼女に対し、ルーヴェルはいけしゃあしゃあとそう言ってのけた。 気持ちにゆとりのないアリアは、そんな彼の態度が本気でそう言っているようにしか聞こえない。 困惑した瞳でまじまじと恋人の顔を見つめる。 「お前が辛いならもうしない、さっきも言ったろう」  だが、ここでようやく彼女にも、必死で笑いと欲求を堪えているルーヴェルの表情に気がついた。 「い、いじわるっ!」  思わずそう叫んで、体勢を立て直そうとする。彼の瞳がちらりと笑ったのを、アリアは確かに見た。 「ばかっ、もう知らない!」  半べそをかきながら立ち上がろうとするアリア。 だが、次の瞬間には背後から伸びたルーヴェルの両手にからめ取られ、 気がつくと逞しい胸の中に引き戻されていた。喉がくつくつと鳴っているのが伝わる。 珍しいことに、彼が笑っているのだ。 「悪かった、俺が悪かった」  笑いながら謝罪の言葉を口にするが、それは怒れる彼女の神経を逆なでするだけだった。 とっさに、ルーヴェルの腕に噛みつく。 「アリア、痛い」  だが、彼は涼しい顔でその痛みを受け流した。 本気であれば、この程度の痛みでは済まないはずなのだから。 アリアはルーヴェルの腕の中でばたばたと暴れ続ける。 「ばかばかばかっ!すごく、恥ずかしかったのに…!」  涙声で糾弾する彼女の言葉に、ルーヴェルは更に苦笑した。 「アリア」 「何よ!」  彼はアリアの体を引き倒し、覆い被さって顔をのぞき込む。 「お前は本当に、可愛い」  真剣な表情と響きの良い声でさらりとそう言ってのけると、あっけにとられて何も言えずにいるアリアに 口付けた。 甘い甘いキスは、何度してもし足りない。心ゆくまで彼女の唇をむさぼる。 「俺の前では全部見せてくれ」  足を開かせると、ルーヴェルは再度彼女の中への侵入を始めた。 アリアは抵抗こそしなかったが、苦痛で表情が歪む。 「辛いか?」  彼女は素直にこくんとうなづいた。 「初めての時よりは、ましだけど…うっ…」  しなやかな体がのけぞる。 「あんまり…動かない、で」  はぁはぁと荒い息をついて、とぎれとぎれにアリアはそう訴えた。 「…ルーヴは、だいじょぶなの?」 「…いや」  正直、動かずにいるのはルーヴェルにとって別の意味で苦痛だった。 ぞくぞくと立ち上る快感に、何度も腰を引きそうになる。 しかし、下手にアリアに動かれるのもまた出来ない相談だった。 それほどに、本能を押さえ込むのが難しかった。 「くっ」  だが、唐突にアリアがぶるっと身震いした。 それがルーヴェルの理性をごっそり削るほどの衝撃をもたらす。彼は思わず体を押しつけた。 「あ…」  唇から漏れた綺麗な声に、確かな変化が見られた。苦痛を知らせるそれではない。 ルーヴェルはもう一度、今度は意識してゆっくりと自分を押し出す。 「は…ぅ」  男の欲情をそそってやまない、ひどく甘い呻きが響いた。 初めて聞く、彼の知らない彼女の声。暴れる欲求を鉄の意志でねじ伏せたルーヴェルは、 新たな感覚を得るべく完全に自分の動きを制御した。知らず、アリアの声が高まってゆく。 「んん…ルーヴ、へん…だよ。いつもと…あんっ…………違う…っ」  熱にとろけたような表情のアリアは、とぎれとぎれにそう伝えた。 「辛くは、ないんだな」 「ちょっと…でも、でも………あふっ!」  羞恥で頬を染める彼女は、それでも漏れる叫びを押し殺せない。 「こんな、声…んっ、や、恥ずかしい…ルーヴ、聞いちゃイヤ…ああっ」  字面だけなら必死で異変を訴えているのだが、その魅惑的な響きは、 ルーヴェルの耳に彼を焦らす誘惑として突き刺さっていた。 「聞かせてくれ、もっと」  アリアの熱と柔らかさを感じながら、ルーヴェルはさらに激しく求める。 「もっと、もっとだ、アリア、アリア」  彼自身も、今までに体験したことのない感覚と感情に翻弄され、それに身をゆだねることしか 出来なくなってしまう。 「ああ、ルーヴ、たすけて・・」  頬を桜色に染めながら、彼女の腕がルーヴェルの首にからみつく。 逃れるように、求めるように、アリアの躰がルーヴェルを捕らえて離さない。 無意識に快楽を求める女の動きが、男を狂わせる。 「おかしくなっちゃう、おかしくなっちゃうよ・・!」  くふっ、と息が吐き出されると同時に、アリアの全身がひどく硬直した。 それを受けてルーヴェルも限界を迎える。 「すき、ルーヴ、大好き…お願い、離さないで……!」  熱に浮かされながらこぼれる、涙混じりの甘い声がルーヴェルの心を貫く。 最後の理性がはじけとぶと同時に、彼は溜め込んだ情欲を解き放つのであった。 疲労の極に達した彼は、一度躰を離してから今度はゆるゆると彼女の上に覆い被さった。 「ルーヴ、おもい・・」  乱れる息の中から、アリアがようやくそれだけを言った。 ルーヴェルは一言謝罪をすると、ごろりと躰を横たえる。 そして腕を伸ばして、温かな生き物を己の胸へ押しつけた。彼女の呼気が肌をくすぐる。 「これならいいか」  アリアが抵抗しなかったので、ルーヴェルはそのまま、親鳥が卵を抱くようにして彼女を両腕の中に 納めていた。そして、アリアも体を密着させると、彼の胸に己の額を当てる。 「ルーヴ、わたし…変だった?」 「?」  彼女の全身から、ふうっと力が抜ける。 「どうした?」  彼の問いにちょっと顔を上げるが、視線を逸らすともごもごと言いよどむアリア。その後の言葉が聞こえなくなる。 「?」  上半身を起こして、ルーヴェルは彼女の顔をのぞき込む。 「えっと、その………思ってた、から……」  しどろもどろになりながら、アリアはどうにかそう呟いていた。 「?、何を言っている。聞こえない」  怪訝そうに問いかける彼に、彼女はちょっと迷ってから蚊の鳴くような声で答えた。 「あんまり、声とか出すものじゃないって、思ってたから…」  ぷっ、とルーヴェルが吹き出した。普段のしかめ面からは考えられない、子供のような笑い。 彼はシーツの上につっぷして、必死で笑いをかみ殺していた。が、全身がぷるぷる震えている。 「ひどい、笑わないで」  アリアはむっとした声で抗議した。 だが次の瞬間、いきなり襲いかかったルーヴェルによって、叫ぶ間もなく寝台に押しつけられる。 「そんな事を気にしてたのか」  口調は静かだったが、その眼が笑っていた。 何かいいかけた彼女の唇をまたしても塞いでしまう。そのまま、三度アリアの肌にその手を触れさせた。 「ル、ルーヴ???」  予想外の行動にアリアの声がうわずった。ルーヴェルの指先が、アリアの躰を的確に滑っていく。 「アリア、お前は可愛い。本当に」  ルーヴェルの劣情が復活しはじめたのを脚の付近で感じて、彼女の額に冷や汗が浮かんだ。 「ま、まさか…んむっ」  深く口付けられて、言葉が途切れた。 後は、二人の呼吸が重なる音と、衣擦れの響きだけが部屋を満たしていった。  結局、アリアが気がついたのは翌日の昼前だった。すでにギルドに出かけたルーヴェルを追おうとしたが、 体中に残った紅い印に気づき、その日はハウスを出ることができなかった彼女であった…。 おしまい *+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+* 初カキコです。ヌルイと言われそう…(^^; エル♂F4×ヒュム♀F4でお楽しみください。個人的には一番好きなヴィジュアルの組み合わせです。