「下がって休め!」  アイリーンの指示が飛ぶ。ソラは体力も精神力も尽きかけ、半ば意識を失うように戦線を離れた。  苔むした石の壁に背を預け、あとはただ祈るように彼女を見つめることしかできない歯痒さに唇を噛む。  けれど、少女は強かった。四体いたオークが三体に、二体に、やがて最後の一体も倒れて。  長い黒髪を振り乱し血まみれで振り返った彼女は、赤いオーラに包まれ、闘いの女神のように猛々しく美しい。 「ソラ! 大丈夫か?」  駆け寄って来るアイリーンに、エルバーンの青年は微笑んでみせた。 「うん、平気。アイリーンは強いね」 「なにを言う。ソラの祝福がなかったらヤバかった。ありがとう」  ソラは言わなかった。暗黒騎士としての究極の技を使った時の彼女には、白魔法による回復すら必要ない。自分は彼 女にとってお荷物でしかない。本当はそう思っていることを……彼女には、言えなかった。  暗黒騎士であるアイリーンと、白魔導師であるソラが二人で組むようになって数カ月。  常にリーダーシップを発揮して人を率いる才能のあるアイリーンと、図体ばかり大きいくせに気が弱くて優柔不断な ソラは、実にいいコンビと言えた。……ソラのほうがずいぶんと年上であるにも関わらず。  街で仕事がない今日みたいな日には、ふたりでダボイの修道窟へ稼ぎに行くこともよくある。いつもは深入りはしな いのだが、目の前の瀕死な人を見捨てられないソラが大量のオークに負われた人を助けてしまい、逆に自分が狙われて しまった。相方に迷惑をかけまいとひとりで奥へ逃げたつもりが、結局アイリーンに助けられた。ソラはますます落ち 込むばかりである。  修道窟を抜けると廃虚がある。今夜はそこで休むことになった。  オークどもに見つからない様、明かりは灯さない。屋根の一部が落ちているので、そこから差し込む月明かりを頼り に、ソラはアイリーンの傷の手当てをした。 「まぁまぁの稼ぎ、か」  ソラに背を向け、鞄を覗き込みながらアイリーンがにやっと笑う。オークから奪った戦利品だ。 「ほら、ちょっと動かないで」  ソラは困ったように少女の細い肩を押さえた。背中から脇腹にかけての一際大きな傷に手をかざし、回復魔法を唱え る。 「応急処置はもらったんだし、あとは放っておけば治る」 「だめ、傷跡が残るでしょう」  月明かりに浮かぶ白い背中には、過去の戦いで残ってしまった無数の傷跡が見える。もったいない、とソラは溜め息 をついた。  はい、終わり、とアイリーンの肩に装備をかけてやって、言う。 「もっと高度な回復魔法を覚えたら、綺麗に消してあげるからね」  と、くるりと少女が振り返った。垂らされた長い黒髪以外、肌を隠す物もなく。 「傷はわたしの勲章だ。余計なことはするな」  凛として言い放つ。 「アイリーン! 服を……」  慌てて自分のケープをかけようとするソラの手を、アイリーンは制した。 「ソラ。わたしは力が欲しい。そのためなら辛い訓練も、傷を負うのも厭わない。むしろ男に産まれたかったと思う。 わたしを女扱いするな」  そう言われても白い胸元の柔らかい曲線はあきらかに女性のそれで。ソラは真っ赤になって視線をそらした。ソラが アイリーンの傷の手当てのために素肌を見た回数は数え切れない。それでも、正面からその裸体を直視したことはな かった。そんなソラの様子に、アイリーンはにやりと口角をあげる。 「お前はわたしが女であったほうが嬉しいようだな?」  両手をついて、じり、と青年に迫る。 「そんなこと……」  ない、と断言し切れないソラは馬鹿正直と言うべきか。  すっと片手を伸ばし、アイリーンは青年の顎を捕らえた。 「こっちを見ろ」  次の瞬間、唇が重なる。ソラは驚きの余り目を見開いた。そのまま両肩を突かれ、後ろに倒される。 「いつも思っていた。わたしが男で、お前が女だったら、と」 「何言って……」  被いかぶさったアイリーンは月明かりにシルエットになって表情が見えない。  強く口腔を吸われ、深く舌を絡められ、柔らかく下唇を噛まれる。されるがままに上着を脱がされた。  首筋に、胸元に、腹に、少女の舌が這う。くすぐったいような快感にソラは身をよじった。 「ちょ、ちょっとアイリーン」  頭を起こして抵抗しようとすると、きっ、と上目遣いに睨まれた。 「黙れ」  するりと股間に手が伸ばされる。ソラの男性としての部分はすでにしっかりと反応していた。 「だ、だめだって……ん……」 「ふぅん……止めて、欲しい?」  面白がるような少女の声。あっさりとズボンが下げられ、外気に晒されたそれがかたく屹立する。  ソラは羞恥に顔を歪めた。かすかに涙が滲む。  真っ赤になったエルバーン特有の長い耳に唇を寄せ、アイリーンが囁く。 「わたしを抱きたいのだろう?」  耳にかかる吐息が熱い。ソラの赤い髪を細い指がくしゃくしゃにする。もう一方の指先が、先端の敏感な部分に触 れ、青年はびくりと身を浮かせた。 「アイリーン……!」  たまらなくなって、ソラは少女の頭を両手で挟んで口付ける。強く彼自身を握られ、声が漏れた。  ゆっくりとしごかれると、背筋を快感が駆け上がった。頭がぼうっとしてきて、無我夢中で唇を吸う。が、アイリー ンは彼の髪をつかみ引き剥がすようにして頭を離した。つぅっと唾液が糸を引く。ぺろり、と赤い舌がそれを嘗める。 少女は身をかがめるといきり立った彼自身を口に含んだ。締め付ける唇と、裏筋に絡み付く舌の熱さ。 「……ぁあッ」  青年は堪え切れず声をあげた。ぴちゃぴちゃと音を立てながらアイリーンはそれを弄ぶ。深くくわえこんだと思った ら、一気に絞るように抜かれ舌先で先端を責める。彼女の唾液でびしょびしょになった玉袋を手のひらで握りこみ、す るりと指を滑らせて後ろの穴の入口を刺激する。 「だめ、アイリーン……もう……」  背を丸めて堪える青年をじらすようにアイリーンは唇を離した。 「まだだめ」  ちゅ、と音を立ててぬるりと光るそれにキスすると、少女は自分のズボンを脱ぎ捨てて彼の足の上にまたがった。 彼の手を取って自らの大事な部分に導く。そこはすでに熱く濡れていて、彼の愛撫に敏感に反応した。ソラは身を起こ して噛み付くように白い首筋に舌を這わせる。髪をはらいのけ、あらわになった乳房の先端、赤いつぼみを口に含む。 ぴく、とアイリーンが身を震わせた。彼女の蜜が絡まる指先でそっと秘所を探る。快感に蠢く襞が、彼の指を飲み込も うとする。その手のすぐ横で、アイリーンの指が彼の物を刺激する。 「わたしに入りたい?」  貪るように少女の胸を吸うソラの頭の上で、熱を帯びた声が囁く。つるりと裏筋を撫でられ、月明かりに青く照らさ れた胸元に熱い吐息が漏れた。 「……いじわる」  涙目のソラにくすっと笑って。アイリーンは一旦腰を浮かすと、自ら彼自身の上に腰を沈めた。  ヒュームの少女には大きすぎる彼のそれが、細い身体に深く刺さる。熱く湿った器官にくわえこまれ、すぐに強く締 め付けられる。 「ん……ふッ」 「ぁあ……」  同時に声が上がる。ソラが細い腰に手を回すと、アイリーンはゆっくりと動いた。きつく包み込まれ、肉の襞に擦ら れる。押し寄せる快感に、二人の息が荒くなる。彼の手の中で少女の乳房が柔らかく形を変える。それまでに十分刺激 された彼の物は、もう持ちそうになかった。 「ダメ、もう……アイリーン……」 「……イっていいよ」  少女は赤い頭をかき抱き、強く彼を締め付けて擦り上げた。 「ぁ……ぁあッ」  少女が大きく背を反らせたのと同時に、ソラはアイリーンの身体の一番奥に放出した。  朽ちた土壁に背を預けるソラの鎖骨に、アイリーンの安らかな寝息がかかる。少女の肩からずり落ちたケープを戻し ながら、ソラは無邪気な寝顔をぼぅっと眺めた。  念願叶ったはずなのに、釈然としないのは何故か……。  艶やかに流れる黒髪を撫でると、少女がうっすら目を開けた。ケープの中から細い腕が伸びて彼の顎をつかむ。 「これからも守ってやるから……どこにも行くな」  少女の言葉にソラは眉を寄せる。 「それはこっちの……」  セリフだ、と続けるまえに口を塞がれた。  適わないなぁ、と思っていると、アイリーンがぽつりと呟いた。 「女でいるのも悪くないな」  ――やっぱりなんか間違ってる気がする。 Fin. ヒュム♀F2黒 エル♂F7赤 お目汚しすんまそん。 たまには♀攻めがあってもいいかな、とか。さ。