「あぁ〜〜・・・・・今日も出ない〜〜〜〜」 白々と明るさを増す水平線にひときわ強い一粒の光の点が見え始め、 イルナはがっくりと砂浜に両膝をついた。 「そもそも骨の絶対数が少ないんだよ」 「腹虫もこんな調子なんだろ?カンベンしてほしいよな」 他のパーティーメンバーも、口々に不満を漏らしながら散っていった。 今日初めて知り合った面々の前では何とか平静を保っていたイルナだが、はらわたは 煮えくり返っていることをリックスは知っている。脳ミソが ブチブチと焦げ付いている音が聞こえるようだ。 「今日は宿屋に泊まろうか?風呂に入ろうよ」 「・・・・・」 彼女とはツェールン鉱山のコウモリといい勝負をしていた頃からの知り合いである。 前衛・後衛と役割の別れていることがお互いにとって都合良く、実益目的で 行動をともにしていたが、フレンドとしての信頼も置く仲になっていた。 「相部屋?」 「すみませんねぇ。何せこの人で」 タルタルの集団が一つの部屋からぞろぞろぞろぞろと出てきた。 ドアの間隔から部屋の広さは大体想像がつく。自分だけわがままを言える雰囲気ではなかった。 「ベッドは二つ、用意しますんで」 「あたりまえでしょ!!!!」 イルナの大声に、店主は恐縮した顔で鍵を差し出した。 入浴を済ませたリックスは、温くなりかけたオレンジジュースを一口飲んだ。 イルナは窓側のベッドの、更に隅のほうでリックスに背を向けている。 触らぬ神に祟り無し。イルナのよりも固くて一回り小さいベッドに横たわろうとした。 ズスッ 鼻をすする音。 「・・・・・・どうしたの?」 「・・・・・」 「泣いてるのか?」 「だって・・・・・・・」 小柄な体がくるっと回ってこちらを向く。逆光で表情ははっきりしない。 「だって・・・もう20日近くここにいるのに・・・まだ甲羅しか取れてないよ。 もうとっくに18になったのに・・・フレンドはどんどん他のジョブ鍛えてるって・・」 「・・・・・・・」 リックスの大きな手がイルナの髪を撫でる。今日だけはとすがりつこうとしたイルナだったが、 次の瞬間、目が回りそうなほど強く唇を吸われた。 「・・・・・・・・!」 ビジネスの相手としかとらえていなかった相手である。 心底驚いたイルナは声をあげることもできなかった。 舌をねじ込まれ、太い指で頬の涙を拭われる。下着が脱がされてゆく。 すくい上げるように左胸を揉みしだかれ、 「ぁあっ・・」 イルナは自分の声で驚きから醒めた。一杯に開いていた大きな瞳が色気を帯びて形を変える。 「あのっ。リッ・・・・うぅっ」 プクッと膨れた胸の突起を、深爪の指が細かく転がす。 「忘れろ、サポクエのことは。今だけ」 「・・・どうして」 リックスが手を止め、イルナの目を見た。 「好きだから」 『そんなの初耳だ』 「あぁっ。ぁあ・・」 言う暇はなかった。 なおもイルナの乳首は指で転がされ、反対側が口に含まれる。足の裏から、手の指先から 痺れるような間隔がどんどん広がってゆく。 もはや両方の刺激を感じ分けることも出来ないイルナの背中が、どんどん反っていった。 キンと鋭い痛みが走った。 「あぁっ!!」 プシュッと熱いものが、イルナの股間ににじんだ。 「入れるよ」 「うん・・」 十分に潤っているそこだったが、リックス自身が進入するには意外な抵抗感がある。 イルナのほうは、ひときわ感じられる部分への刺激ともっと奥へとの期待で 既に至福の時を迎えつつあった。 (あっ・・・だっダメだ) ほんの数秒前まで冷静を保っていたリックスの表情が突然ゆがむ。 「イルナ。イルナ・・・」 性急な動きで何度も差し込まれる。リックスの熱がイルナに伝わる。 「うっ。うぅ・・・ああ・・」 「いくよ・・・・・・・・・イルナ・・・・い・・・ぁあっ!!!」 リックスが天を仰いだ。 _________________ 「おめでとう!」 「おめでとうございますぅ〜」 「おめめ〜」 「おめ〜」 「おめでとーー^^」 「ありがとうございます〜」 数ヶ月の後、二人はほぼ同じ時期にLV30に達した。 あの熱い日のことが、その後繰り返されることはなく、 リックスの態度にも変わったところはない。 イルナは、『あれはリックスのそっくりさんだったのではないか』と、何度も真剣に思った。 だが、どんな局面であってもさりげなく自分をかばい、経験とともに先頭技術にも長けてゆく 彼を見るにつけ、『確かに私はリックス本人と愛し合ったんだ』と信じたくも思うのだった。