9.リリ side6 何も考えられない。何も、何も。 何がおこったのかもよくわからない。 わたしの上にフェイがいる。 わたしは自分が分からなくて心細くて、ただ泣いていたように思う。 ひろいあげて。ひろいあげて、かたちをあたえて。おねがい。 フェイの指がそっと涙をすくって、唇を吸われた。 フェイの舌が生き物のようにわたしの口の中をあばれまわる。 だ液が交換されて、頭の芯がじんじんする。 フェイの荒い息遣いが耳の奥に響く。心地よかった。 わたしはすがりつくように舌を求めていた。 ちゅぽっ。と音をたてて名残惜しげに唇が去っていく。 フェイの手がもどかしげに装備の留め金を外していく。 かたごしに紫色の月がにじんでみえた。 あらわになった乳房をそっとフェイの手が包む。 「しろ〜。やわらけ〜。」 そういっていたずらっぽく笑ったフェイが首筋にそっと舌を這わせた。 「ふっ、ん・・」 フェイの指がしつこくしつこく乳房の先端を掠めるたびに しっぽの先までぴりぴりと電流が走る。 思わずもれた声が自分でもはじめてきくくらい、 甘く、湿っていてわたしは驚いて唇を噛みしめた。 「みんなスリプルかけて寝てる。俺しか聞いてないから。もっと聞かせて?」 耳もとでささやかれる。瞳をぎゅと閉じてかぶりをふる。 どうかしてる。わたし、おかしい。 「ごうじょっぱり。」 フェイが笑いを含んだ声でささやいて優しく耳を噛むと すっと頭の位置を下げた。 先端がぬるりと暖かいものに湿らされる。 「やっ、は・・ぁ」 噛みしめた唇の間からこらえ切れない息がもれる。 フェイの柔らかくのびた金色の髪が鎖骨のうえをさらさらと流れる。 気が、とおくなる。 「足。」唇を離さずにフェイが言う。 「足開いて。」 そう言ったその瞬間にはもう彼の指がすべりこんでいた。 「やっ・・」 反射的に足を閉じようとしてもフェイのからだががっちりとはさまっていて、 どうにもだらしのない格好になってしまう。 「すげえ・・」 フェイがそういってわたしの顔を覗き込む。 「リリ、かわいい。こんなに、ぬれてる。」 フェイの言葉が攻撃呪文のようにわたしの中に入ってくる。 腰が、頭が、背中が痺れる。甘い甘い麻薬みたいに。 フェイの指がわたしの一番敏感な部分にいともあっさりと辿り着く。 溢れる液体をぬりこむようにいくどもいくどもすりつける。 「ああっ、・・・は・・ぁ、んっ、あ」 もう、声を堪えることもできない。気持ちよすぎて涙が出てきた。 おかしい。こんなの、おかしい。 わたしじゃない。こんなの、こんなのわたしのしってるセックスじゃない。 急にひょいっと腰が宙に浮く。 ?とおもったらフェイが、フェイが。 あろうことかわたしの腰をかかえあげるようにして頭ごと、そこに伏せようとしてる。 「やめっやめろ!きたない・・」 狼狽してあわてて手で隠そうとするけど、中途半端な体勢のわたしの手はあっさりとはじかれる。 「きたなくなんか、ない」そう言うフェイの声がうわずっている。 「やだ!やだってば!やめろ!」抵抗も空しく吐息がおりてくる。 フェイの舌がつぼみにふれた瞬間。 「はあああっ・・ああんっ・・」 生まれてはじめて味わう大きな大きな快感の波。 こわくなるほどの圧倒的な感覚。 ちゅぷ・・・ちゅ・・ちゅ・・ 湿った音が荒い息に重なる。 フェイの指がわたしの中を犯してくる。 唇が、舌が音をたてて這い回る。 わたしは押し寄せる波の中ですべてをなくしてしまうと思った。 「ああ・・・だめ・・・はぁ・・あん・・あぁあぁ」 「リリ、すげーやらしい。腰動かしてるよ?」 フェイの意地悪そうな声も遠くに聞こえる。 「だめ。リリ、いっちゃダメだよ?」 昇りつめる寸前で、フェイがすべての愛撫をとめた。 「ああ・・・やだ。フェイ・・・」喪失感に腕をのばす。 「ねえ、俺が欲しい?」再び耳のそばでそうささやく、甘い悪魔の声。 フェイが服を脱いでいる気配。 「いえよ。欲しい?」楽しんでいるかのように、焦っているかのように。 手首をつかまれて、手の中に熱く猛ったものをつかまされる。 「これ、欲しい?俺もう、こんなんなんだけど。」 いじわるだ。やっぱり。 わたしがうっすらと目をあけるとくるくるとうごく茶色い瞳とぶつかる。 わたしはだるい腰をささえながら上体をおこすとフェイの腰に顔をよせた。 「おい?リリ!」 あわてて腰を引こうとするフェイをおしとどめてすっぽりと口の中に彼のものをおさめる。 嫌いだった。くるしいし、吐きそうになる。 オルネバンにだって数えるぐらいしかしたことがない。 だけど、今、どうしてもそうしたかった。 フェイの手が行き場を失って、困ったようにわたしの髪をすく。 口に含むとすぐ、それはまるでいきているみたいにぴくぴくとうごきながら、熱くなっていく。 丁寧に舌を這わせれば、先端から透明な液が糸を引いて流れる。 苦かった。男の人のにおいがしたけど、全然嫌じゃなかった。 やっぱりわたしはおかしくなったんだなと思っていた。 「リリ!リリっ!・・・くっ・・やめろ!」 凄い力で肩を引かれて、唇を離すとフェイが目尻に涙を浮かべてかたく目を閉じていた。 「んっ・・はぁ・、なんてこと、すんだよ。でるとこだった・・。」 そういったフェイはなんだかバツがわるそうで、いつもより幼く見えた。 「だめだ・・もう、我慢限界。」そういうとフェイは再び勢いよくわたしを押し倒す。 「いれ・・るよ?」その言葉とともに熱いものが入り口にあてがわれる。 わたしのそこはいともかんたんに彼を飲み込んでいく。 満たされる。彼の質量がそのままわたしの脳へかけめぐりわたしはまたあの波の中にほうりだされる。 「すっげ・・・おれ、もつかな・・・」一番奥まで腰をすすめるとフェイはわたしの髪を撫でながらちょっと困ったように言う。 瞳がぬれていた。瞳の中に、わたしがいた。それを見た瞬間にわたしはすべてを知ったような気になった。 好きと言うこと。抱き合うと言うこと。欲しいと思うこと。 そして・・・ひどくオルネバンを傷付けていた。そのことも。 それでもわたしは幸せだった。まちがいなくこの瞬間、この惑星で一番幸せだと、そう思った。 「フェイ。」動いてもいないのにしっぽを捕らえようとする快感をなだめすかすように口を開く。今、言うべきだと思った。 「ん?」「わたし、お前が好きだ。」 その瞬間のフェイはまるで泣き出す寸前の幼児のようだった。 「おまえな・・・俺ががんばって耐えてんのに、このタイミングで、言うかな・・。いっちまうだろうが!」 泣き出しそうな顔のままフェイはそう言うとわたしの唇を吸った。 長い長いくちづけのあと。 「動くぞ?」フェイが言うから。そっとうなづく。 今まで何回もやってきた、こっけいきわまりないこの行為を、さも神聖なことのように。 フェイがゆるゆると抜き差しをするたびに。おそろしいほどの快感の群れが脊髄をかけのぼる。 「はあ・・あぁ・・あぁ・・あ・・ん・・」 「すげ・・リリの中、しめすぎ・・くっ・・う・・」 二人の吐く息と身体がぶつかるしめった音だけが、響く。 フェイのものがお腹を突き破って出てくるのではないかとすら思う。 動きは徐々に速くなり身体が宙に何度もうく。高い眩しいところに目の眩むスピードで押し上げられる。 「リリ・・・ごめ・・俺・・でる・・」 粗い息の合間に抱え込まれた頭の上で、フェイの声がする。 「うん・・・うん・・」 お腹のなかに熱いものがぶちまけられる。その瞬間にわたしは頂上から暗くて暖かい海の中に落下した。