4.リリ side3 「いたい!はなせ!」 きこえているはずなのにオルネバンはとまらない。 「オルネバン!」 長い足ですたすたあるくから引きずられるような格好の私は転びそうになる。 モグハウス前の階段を飛ぶようにのぼって オルネバンの部屋へ。 ドアをあけると同時に放り込まれるように投げ出される。 モグがびっくりして声を失う。 「ただいま、わるいがちょっとはずしてくれ。」 モグに投げ付けるようにいうとモグが寂しそうにうなづく。 体勢を立て直す間もなくひきずりおこされ、今度はベットになげだされる。 恐怖を覚える。 「まて!オルネバン!ちょっと!」 はずむように起き上がろうとするがすぐさま上から身体ごとおさえつけられる。 「やめろ!よせってば!おい!」 「いいから、だまれ」冷たい声。 こわい、こわい、こわい! 「オルネバン・・・お願いだから、やめて!」 そう懇願する唇を唇が塞ぐ。 冷たい唇。 いつものオルネバンじゃない。 こんなふうにしない。 昔から、昔からオルネバンは唯一わたしを優しく扱ってくれる男だった。 はじめて客としてやってきたあの日から。 だから、あのみじめな日々の中で彼が客としてやってきた日は心底安心したものだった。 その日は、眠れるから。 混乱したまま手足をばたつかせているのに 憎たらしいほどの手際で彼はわたしの装備を外していく。 「なんで?どうしたの?ねえ?」 オルネバンは答えない。わたしの赤髪がみだれて彼の長い黒髪と交わる。 形のよい唇が首筋をおりていく。鎖骨をなぞる。 装備の隙間から細い指がすべりこんで乳房をなぞる。 わたしは混乱したまま抵抗をやめた。 「気分がのらないか?」 とっくにすっぱだかに剥かれたわたしの腰を抱いて横腹に舌を這わせながら オルネバンが意地悪くきく。 「心配するな、ちゃんと払う。」 とげがある。そのとげでまるでわたしも自分も傷つけたがっているみたいに。 こんなふうでも身体は反応する。彼のも、わたしのも。 しだいに荒くなる息をこらえながら、心を持て余す。 いつもみたいに丹念な愛撫もなく性急にオルネバンはわたしを求めた。 身体をだきおこされて彼の腰の上に落とされる。 「くっ・・ふ・・・あ」 かき分けるように彼が入ってくる。 腰を強くおさえられて逃げることもできない。 ろくにぬれてないと思ったのに、彼を受け入れたとたん、痛みをやわらげるかのように溢れてくる。 「うごけよ。」 舌をからめながら意地悪く言う。 「うん・・」 奥に当てるようにゆるゆると腰を動かす。 「はぁ、あ・・ああ・・・あ」 うつむいて動くわたしを見ている。見ているのが分かるのに見ることができない。 「俺のこと、好きか?」 唐突にそういうから、驚いて動きをとめる。 びっくりしすぎて、おもわず彼の瞳を覗き込んでしまった。 「・・・うん。好きだよ?」 それ以外なんと答えればいいのか? だってわたしは彼に抱かれているのに? 「・・・そうか。」 そういう彼の瞳がなぜかゆうらりと揺れた。 それ以上見せないように?オルネバンはさっと瞳をそらすと素早く体勢を入れ替えた。 わたしの上で動く彼を見ていると、ほんとにエルヴァーンはきれいな種族だなあと思う。 「リリ・・・、いい・・いきそう・・」 そういって切なげにわたしを見下ろす彼が好きだ。 いつものつめたげな印象が消えてとてもかわいらしい。 いつものオルネバンだ・・。そう思って安心したわたしは彼の頭をそっと抱き込んでそっと吐息を漏らした。