3.リリ side2 木の上はおちつく。一人は嫌いだけど嫌いじゃない。だから。 なぜフェイが怒ったのか分からない。 怒って・・たんだよな?ぶたれたもんな。 へんなやつ。 好きだとか、いわれたことある。 オルネバンだって言う。 私を抱く時だ。もしくは抱く前だ。 そういって抱く人はたいていあまりいたくしないから。 まあ、いいかと思うことにしてる。下手で、気持ち悪くてもお金が入るし。 オルネバンはうまい・・・けど。 なんだか断ったりするとめんどくさい。 昔からそうだ。断ったり嫌な顔するとひどい目にあう。 面子を潰されたとかいって待ち伏せされてリンチされたり、もっとひどいことされたり。 そこまでいかなくても無理矢理やられたりして傷が残ったりする。 今ではだいぶ強くなったから、したくないときはしたくないっていえるし、 あんまりいいよるやつもいないし、なんだかオリルとキュリリに知られたくなくて・・そういうこともなくなってきたけど、 だけど今だって知らないやつとパーティ組むとときどき夜茂みで押し倒されたりする。 本気の男と一対一じゃかなわないし、女ってたぶんそういうもんなんだろうなって。 だから我慢するんだ。死ぬわけじゃないし。 だから、フェイもそうだと思っただけなのに。 フェイと組むようになってからもうだいぶたつし、べつに嫌いじゃないから 安くしてやったのに。 なじみのオルネバンと同じ値段なのにな。 なんで、おこったんだろう? あやまったほうがいいのか? なにを? わからない。 ただわかること。これは誰かにきくようなことじゃない。きっと。 色々考えていつのまにねむったんだろう。朝は今日もいつも通りにやってくる。 「リリ」 オルネバンが呼びに来た。 「いくぞ」 「フェイは?」 「戻ってる」 素早く木からおりてキャンプに戻るとキュリリがゆでたまごを投げてよこした。 「寝坊ね。いくよ。」 もうすっかりしたくはできている。 自分の荷物をいそいでまとめて帰路につく。 フェイ・・、いるけど目をあわさない。 一番後ろからやる気無さそうについてくる。 これじゃ声もかけられん・・・・。 わたしはそうそうに諦めてジュノでまってるあたたかいお風呂を思い浮かべることにした。 ジュノ上層。 「じゃーいったんかいさーん。」 「予定は?」オルネバンが訪ねる。 「まあとりあえず2.3日休んで、また行くならつきあうが・・」オリルがちらりと私とフェイに視線を走らす。 「いいけど・・」ぼそぼそと答えると フェイもかすかにうなづいている。 「おっけー、じゃまたね〜」キュリリの声とともにパーティは解散した。 足早に連れ立ってかえっていくタルタル達をみおくりながら 重い足を踏み出そうとした瞬間、フェイにしっぽを掴まれた。 「ふにゃっ!」 「ちょっといいかよ?」講議の声もひっこむくらいの怖い顔。 なぜか気押されて視線を泳がすとオルネバンが視線だけでうなずく。 へんなの。・・・なんだか、ふたりともへんだ。 しっぽをぶらんぶらんさせながら、フェイについて、路地裏に入る。 ぼんやり歩いていたのでフェイが急にとまった背中にぶつかりそうになる。 真剣な顔。フェイってまつげ長いんだな。とかどうでもいいことを考えている自分がいる。 「あのさ」「あの」 同時に口を開いて気まずい思いをする。 バツの悪そうな顔でフェイが強引に続ける。 「お前は間違ってるよ。間違ってる。 わかんないなら俺が教えてやる。 だから、見てろ。俺を見てろ。わかるまで、俺を見てろ。 俺もお前を見てる。辛くても、そう決めた。」 一息に言う。顔が赤いのに、瞳だけが寂しそうだった。 わたしはただ、その瞳にどきどきした。 オルネバンがあの青い瞳に不似合いな炎をともしてわたしを抱く時もどきどきはするけれど、 それとはちがう。 心のどこかがちくりといたかった。 大事な仲間を傷つけたからだ。そう思った。 フェイはそういうとやけに毅然と前を見て狼狽している私の横をすり抜けた。 路地裏を出るとひどく強引に腕をひっぱられた。 オルネバンだった。