2.フェイ side1 なんだよあれ! 『金貨一枚か銀貨3枚。もちあわせがないならあとでもかまわん。』だと? いうにことかいてそれかよ!どうなってんだ?あの女? おかしいよ。完全におかしい。 俺は、こういったんだぜ? 「お前のこと好きみたいだ。」って。 ああそうさ!一世一代の告白劇だよ! かっこわるいのなんて100も承知だよ。 「私もすき(はーと)」なんてかわいい反応なんか期待しちゃいないさ。 リリとオルネバンは・・なんかその、・・関係があるみたいだしな。 だから、「受け取れない」とか「つきあえない」とか「私はお前のことをすきじゃない」とか そういう答えだったら予想してたんだ。 そういわれても、また明日からなにもなかったように一緒に戦える、はずだった。そういわれるのなら。 それでも、言わずにいれなかったから、だから! 気がつくとリリの頬を打ってた。 「なにすっ・・・」 最後まできかずに背を向けた。 怒りで血が全部逆流してるかと思った。 ぐるぐるぐるぐる同じところを歩いている気がする。 どうでもよかった。 ただパーティのもとにもどれなかった。もどりたくなかった。 歩き疲れてほどよい丘を見つけるとごろりとねっころがる。 星は見えない。 リリが欲しい。はじめてみた時から。 俺が今まで組んできたミスラ達は底抜けに明るかったから、 どことなく影と刺をもったその雰囲気に興味を引かれた。 「遠慮しないでわたしのうしろで不意玉を打て!」そう叫んで 華奢な背中で仲間を守るその姿勢にほれた。 欲しいと思った。自分のものにしたくなった。その欲望を否定なんかしねえ。 オルネバンと寝てるのかもって思うだけで、猛烈に嫉妬する。 おれだって健全な男だから。 だけど、それはけっしてやれればいいとかそういうことじゃないんだ。 好きだから、だから。決して。 ひょこっと視界にみなれたかわいらしい少年の顔。 オリル。 「ここにいたのか。」 何も言えずにもそもそと上体を起こすとオリルがちょこんと隣に座る。 「星はみえんな。」そういってだまりこむ。 「・・・みんなは?」オリルがなにもいわないから、長い沈黙のあと仕方なくそうきく。 「オルネバンとリリは寝た。・・・寝れるならな。キュリリにいわれて俺がきたんだ。 全く、世話をやかすな。」 「・・すまん。」そうつぶやく。 「なんにせよ明日は一度ジュノに戻るよ。食料も乏しくなってきたしな。」 「そうか。」 正直に助かったと思う。オリルとキュリリのタル夫婦にはかなわない。 「戻るぞ。」 そういうとはずみをつけてオリルが立ち上がって汚れを払う。 かわいらしいその仕種を見ていると、この男がパーティで一番の年上だとは思えない。 「リリは木の上で寝てる。」 りっくりっくと前を走りながら首だけまげてオリルが言う。 「だから取りあえず、寝ろ。いろいろ無駄に考えるな。考えてもどうにもならんこともある。」 テントにもぐりこむとオルネバンだけが毛布にくるまっていた。 オリルとキュリリは先に見張りをやると言う。 端に陣取り毛布をまきつけていると急にオルネバンが身体をひねってこちらをむいた。 俺はこの男が苦手だ。口が達者で根性が悪い。 だが、まあ悪いやつじゃないと思う。戦い方を見ていればだいたいわかるさ。性質なんて。 「おそかったな。」 「ああ。」 短く答える。 「お前さ、」予想していたようなそうでなかったような。 眠るのはともかくもう少し先になりそうだ。 覚悟を決めて横になるのを諦めてオルネバンを見る。 最初から眠ってはいなかったのだろう、肩ひじをついてこっちをみている。 「なんだ」 「お前・・、」 いつもずけずけとものをいうエルヴァーンが珍しく言い淀む。 「リリと寝たいのかよ?」 なんでこう、どいつもこいつも!オルネバンの言葉にカッと頭に血がのぼる。 「なにがいいてえ?」 震えそうな拳をぎゅっと握りしめまっすぐ問い返す。 「べ〜つにぃ〜?そんなかんじだから・・よ。」 「お前と一緒にするな。」 俺の言葉に2人の間が不穏になる。 「俺は寝てえんじゃねえ。寝てるんだよ!」 目の前が白くなる。うわ〜人って頭に血がのぼると何も見えなくなるんだなあ。とか どこかで冷静な自分がいる。 オルネバンにつかみかかっていたらしい。 振り上げた拳をとられ、気付く。 「甘いなあ、おぼっちゃん。やきもちやくこたねえだろ? お前だって抱けるよ。金払えよ。 あれは、そういう女だぞ?」 「だまれ!」 ただがむしゃらに拳をふりおろす。だけど頭に血がのぼった俺の攻撃が この小憎たらしい首長にあたるはずもなく。 やがて疲れ果てて拳をおろす。 ただ、ただかなしかった。 首長の声がする 「そういうふうに思えねえんなら、やめとけ。」 その声もどことなく悲しげだった。