花束 3 リビングに戻ってくると、フィルと話し込んでいたエドの母親が慌てて立ち上がった。 ハナに視線を合わせるように屈み込んで手をぎゅっと握る。 「ハナさん、私貴女になんてお詫びしたら良いか…とても傷付けてしまったわ。ごめんなさいね」 「え…いえ、あの、大丈夫ですよ」 子供に間違われる事は正直慣れっこだし、 どうしようかと悩んだが、実はそんなに傷ついていない。 本当に大丈夫なんだけど、どう伝えたらいいものかしら…と一通りハナは考えを廻らせていたが、 何か思い立ったらしくにっこり微笑んで婦人の手を握り返した。 「…ありがとうございます、お母様」 「!!…ハナさん!」 瞬間、豊満な胸にぎゅうっとだきしめられて目を白黒させる。 婦人は感動のあまり小さなハナを胸に抱いてくるくると回った。 良かったねえ、と思いつつ、フィルはちょっと不安を感じた。 ハナが心なしかプラーンとなっているのは気のせいなのだろうか… 「エド、エド、聞いた!?ハナさんが私の事をお母様とよんでくれたわ!」 「ええ、聞きましたとも…あの母さん、ハナが窒息死しそうです…」 引退したとはいえ女騎士の腕力でヘッドロックをくらっていたハナは、 三途リバーでガリガリババァに挨拶していたところを引き戻された。 それでも感激が収まらないのか婦人は胸の前で手を組んでうるうるしている。 真顔だと美人すぎてちょっと強面だが、仕草は少女っぽい。 「嬉しいわ、私本当は女の子が欲しかったのよ…知っていて?エド」 「初耳っすよ…」 「それがこんなでかいのとあんなでかいのじゃあ小母様がお喜びになるのも理解できるね」 酷い言われ様だなおい、と呟きながら、エドはころころと笑う傍らの恋人の髪を撫でてやる。 「…よかったよ…ハナは絶対大丈夫だと思ってたけど。」 「ん?なに?」 「お祖母様と、母さんに認められたら安心だなって。親父は強情だけどこの二人には頭上がらないから」 「そうよ、お父様が何と言っても私が守ってあげるわ」 ハナは一瞬きょとんとしたが、にっこり微笑んで頷いた。 ********************************************** ハナを婦人が連れて行ってしまったので、リビングには男二人が残された。 ふぅ、と溜め息をついてソファに身体を沈めたエドに執事が新しいサンドリアティーを煎れてくれた。 「緊張したなぁ…しっかし」 「ハナはもっと緊張してるだろうに…大体お前ちゃんと話したか?親に紹介するつもりだって」 「………話してねぇなそういえば」 おいおいおい。とフィルは背凭れから身体を起こして指を突きつける。 「馬鹿、お前、そういう事はちゃんと言えよ!」 「そういう事って、なんだよ」 「…あのなぁエド。わざわざ実家に帰って家族に紹介するってことは…ハナにとては特別な事なんだぞ」 「わーーかってるっつの!俺にとってもその…特別なんだよ」 長い耳の先まで真っ赤になっている… 「お前、だから、そういうのをさ…ハナに言ってやれっていってんだよ…」 言葉にしないで行動が先な男だから、いつもハナが余計な不安を感じるのだ。 気付かないものかなあ、と半ば苛立ちながらフィルは足を組んだ。 「大体さ…家族とかそういうのがハナにとっては特別なのに…お前わかってんのかよ…」 溜め息をついてぼそっと呟いて、目の前の親友が怪訝な顔でこちらを見ているのに気付く。 …もしかして…ハナ…話してないのか… 「…どういう事だ?」 やっちまった…ごめんハナ… 「いや…なんでもない…」 「…そうか…」 食い下がると思われた男はあっさりと引き下がったが、二人の間に一瞬重い空気が流れる。 何か言わないと、とフィルが口を開きかけた時リビングの扉が開いた。 「エド、フィル、みて〜!」 黒いベロアのワンピースは、普段の黒魔道士のローブとはまったく印象が違う。 ハナは裾をちょっと持ち上げて二人にお辞儀して見せた。 「おお!」 「かわいいな…」 「お母様のドレスなんだって」 くるりと回って「似合う?」と尋ねる。 「良く似合ってるぞ…そうだ、せっかくだし出掛けるか。親父遅くなりそうだから。」 「…エド」 小声で自分の名を呼んだ親友に苦笑を浮かべる 「…駆け引きは苦手なんだよ…話したい時に話す。」 「お前の性格は判ってるつもりだ…焦るなよ…」 エドは小さく頷くと、怪訝そうな表情で彼を見上げるハナの頭をポンポンと撫でて、 はぐれるなよ、と軽口を叩いた。 ******************************************** サンドリアはお祭りムード一色だった。 外はすでに暗くなって、ランタンの灯りが煌いている。 「あれ、フィルは何処?」 いつのまにか親友の姿が見えなくなっていて、ハナは不安そうにきょろきょろした。 「さっき友達見かけたっていってそっちに挨拶に行ったよ」 「あぁ、そうなの?…ねぇ、エドどこいくの?」 「花火」 え?と男を見上げる。 背が高いのでどんな表情なのかよくわからない… 手をぐいぐいと引かれたまま、歩く。 「エド、待って、どこにいくの」 答えは無い。 幾度か角を曲がり、階段を上り 「わ…」 街の拡張によって役目を終えた城壁。 サンドリアの街が一望できるそこに、エドは座り込んだ。 「ハナ、おいで」 膝の上に座ったハナをぎゅっと抱き締める。 「ふぎゅ」 「俺は…お前を傷つけてないか?」 「急になーに」 変なの、と冗談めかして答えようとして…自分を見下ろすダークブルーの瞳に気付く。 ハナは腕を伸ばして痩せた頬を挟んだ。 「エド」 「…ん」 「好き」 「…ありがとう…。」 触れるだけの口付けを交わす。 「あたし、傷ついてなんて無いよエド。…ただね、自信がないだけ」 「自信ってなんの…」 「なんだろう…色々ないよ。女としてもなんだかなぁって…しょうがないんだけど種族は」 「お前、俺何回も言ってるだろ?!気にすんなって…お前は十分その…可愛いし」 「それだけじゃないよ?…あたしねぇ…うん…」 しばらく躊躇うように空を見ていたハナが、溜め息をついて口を開く。 「あたし、両親の顔知らないの…」 ハナが赤ん坊の時、両親は獣人に殺されてしまったらしい。 彼女を引き取って名前を付けてくれたのはヒュームの老夫婦。 その二人も10年程前相次いで亡くなった。 「戦争があったし、あたしたちの世代は両親いないのなんて当たり前だったよね? 育ててくれたパパとママには感謝してるし、あたしは二人を誇りに思う…でも…」 『家族とかそういうのがハナにとっては特別なのに』 「でもどこかでこう思うあたしもいる…あたしはエドの家を、血統を汚してしま…っっ」 言葉は最後まで出なかった。 噛み付くようなキスでハナの口を塞いだ男は、血を吐くような悲痛な声で叫ぶ。 「馬鹿野郎…家が…血統がなんだよ…!そんなもん関係ねぇよ!」 「エド」 「お前今までそんな事考えてたのかよ。俺の事もっと信じろよ…」 「エド…エドごめんなさい…ごめんね…あぁ、お願い」 泣かないで… 背伸びをして男の首に抱きつく。 小さな手で銀髪を梳いてやりながら、ハナは必死で彼の名前を呼んだ。 「お前を拒絶する家なら全部捨ててやる…エドヴァルドなんて名前いらねーよ…エドでいい、お前だけの」 「まるで駄々っ子だわ…でも、それも悪くないかな…」 あたしだけの。 そっと呟いた紅い瞳は上がり始めた花火が映りこんで複雑な色を放っていた。 涙に濡れた頬にそっと唇をよせ、小さな舌を這わせて微笑む。 「俺は本気だぞ…」 「うん…うん。ありがと…」 どちらからともなく唇を重ねる。 顔の角度を少しずつ変えて、深く舌を絡める。 小さな口腔内を存分に味わった男が顔を離すと、どちらのものかわからない唾液が細い糸をひき、 街の灯りにきらりと光った。 「はぁ…は…あ…や、だめ、エドこれ以上は…やだよ」 悪戯な男の手が背中のボタンを片手で器用に外していく。 「やめて…人が来るよ…あ、ん」 「大丈夫…鍵、しめちゃったから」 「そんな、バカぁ、ひゃうっ」 上半身が夜気に晒されて、敏感になった胸の突起を男が口に含む。 舌先で転がされて、ハナの身体の奥からうずうずとした感触が沸き起こってきた。 「や…んんっ…」 柔らかいベロアのスカートに隠された太ももに指が這う。 男の膝の上に跨って無防備になった秘部を布の上から撫でられる。 布地越しからも愛液がしっとりと滲み出てエドの指先を濡らしていった。 「ハナ、すごいよ、ほら」 耳元でからかうように囁いて、一旦横抱きにしてショーツを一気に引き降ろす。 「じゃま、こっちも脱いじゃえ」 「やだ…いや、あぁっ」 両足を抱え込んで露になったそこを灯りに照らす。 蜂蜜でもぶちまけたかのように濡れた花弁が、花火の上がるたびにてらてらと反射した。 指を一本挿し込みぐちゃぐちゃと掻き混ぜると、泣き声のような悲鳴が上がった。 「やだぁ、ああっ、あ、ひぅうっ」 楼の一段下に人の声がする。 見晴らしがいいので鍵のかかっていないそこにやってきたらしい。 ハナは慌てて身体を起こして着衣を整えようとするが男の手がそれを許さない。 「人、きちゃったよ…やめよ、ね」 「見えないから大丈夫だよ。皆向こう見てるし…ほら、立って、ちゃんと持ってな」 子供に言い聞かすような口調でたくし上げたスカートを持たせる。 自分に跨る様に立たせて濡れて緩んだスリットを押し開いて今度は2本咥え込ませる。 「いや、いや、やめてぇ、あ、あんっ」 「ハナが好きなのはここだよな、ここ突くとイッちゃうんだもんな」 指をぐっと曲げて奥を押し上げると、暖かいものがじわじわと新たに涌き出てくる。 陰核を滑った指で捏ね、体内の指をゆっくり上下させてやる。 ハナの膝が、がくがくと震えていまにも倒れ込みそうなのを片手で支え、尚も指で嬲ると 悲鳴と共に膣口から愛液が勢い良く噴出し、エドの手と石畳にぱたぱたと滴る。 「すっげ…ぐちょぐちょじゃん、お前」 「許して、もう、やだぁ…あ、ああーっ…」 大きな声が出てしまって思わず口を塞いだハナの手を、後ろに回させてエドが笑う。 「花火の音で聞こえないさ。…俺にちゃんと聞かせろよ、ちゃんと挿れてやるから」 「やだ、やだぁ、あ、ああ、挿れないでぇ」 馬乗りになった状態でずぶずぶと男の物が挿入されてく。 嫌々とする仕草とは裏腹に、エドが腰を回して突き上げる度に彼女の膣はより深く飲み込もうと蠢いていく。 「うくぅぅ…あ、ああ、あ、あたってる、やだっ…死んじゃう」 「…すっげー…気持ちいいよ…やべぇ…俺もイキそ」 愛液は男の腿までたれ、濡れた音がそこらに響いて 下まで聞こえるのではないかという感覚にハナは気絶しそうになった。 口を塞ごうとも後ろ手に拘束されたままで 上を向いて喘ぎ声と涎を流すしかない。 「ああっあ、あ、エド、エドっ…ひゃあ、ああんっ…い、あああ」 「く…あ、…ハナ…だ、出すぞ…っ」 一層大きな花火があがる中  ハナは胎内に射精されながら絶頂を迎えた。 つづく