エルの宅急便 その日俺達はダボイに来ていた。 色々なレベルの冒険者が集まり、各々の実力に見合った敵と戦っている。 「はう!ごめん!」 情けない声が響いた。 ふと地図をみると、三人程微妙に違う場所にいる。 …またか… 俺は頭を抱えた。 多分主犯格は俺の彼女でもある黒魔道士だ。 奴は天性の方向音痴で、その程度もすこぶる酷い。 修道窟には最近通っていたから、自信を持って先頭を走っていたのだろう… 見事に赤白黒と3色のタルタル魔道士がはぐれている。 おおかたくっちゃべっててどこかで曲がり損ねたんだろう… 幸い途中の道は何もいなかったし、3人とも魔法で姿を隠せる。 俺達は落ち着いてキャンプが出来るように雑魚敵を片付けながら待つことにした。 先頭は一番しっかりした赤魔道士に交代したらしい。 順調にこちらに向かっているようだ。 後少しで到着する。ちょうど俺達の掃除も済みそうだ。 こちらの姿を見つけて安心した3人は、魔法を打ち消してぴょこりと姿を見せた。 手を振りながら走ってくる。 危ないぞ、と注意しようとしたその時 物陰からオークがのそりと巨体を現した。 「!!!!!」 「こっちに来い!」 俺は叫んで、彼女達の方に走る。 「たのむぞ、こっち片付けたら俺達もすぐ行くから!」 仲間達の声を背に受けて駈けつけると オークの太い腕に3人は一瞬で薙ぎ倒されてしまっていた。 一番ダメージを食らった俺の彼女に 慌てて起き上がった白魔道士の娘がケアルを詠唱する。 赤魔道士の娘は、勇敢にも腰のレイピアをすらりと抜いてオークに立ち向かわんとしている。 オークの2撃目が彼女に振り下ろされんとしたその時。 「うちの可愛い魔女っ子達に何さらしとんじゃワレェ!」 間一髪俺はその拳を盾で弾き返した。 「ほら、早くあっち逃げろ!」 ぽかんとしていた3人は、こくこくと頷くと ちょうど此方に走りよってきた仲間の方に駈け寄… 「みゃん」 「きゃあ」 「ぎゃう」 どてっ …こけてるし… 「ぁああああああああああ!もう!」 俺は剣を収めると両脇にタルタルを抱え込んだ。 腕は2本タルタルは3人。 目の前には子犬のような目の彼女。 後ろにはオーク。格下とはいえ殴られると痛い。 とっさに襟元を咥えて持ち上げる。 「ふぎぎぎ〜〜〜」 必死でダッシュ。猛烈Bダッシュ。 俺はやっとの思いで仲間に合流した。おいおい、何笑ってんだよお前ら… 相棒の赤魔道士が笑いながらも手を伸ばして、 猫の子みたいに情けない格好の彼女を受け取ってくれる。 一瞬で背後のオークをボッコにした友人たちが戻ってきて俺の肩をぽんぽんと叩いた。 「ありがとー、こわかったよー」 「お手柄だな」 「お疲れ様です、無事で良かったです…!」 「いやぁ、お前面白すぎて俺思わず写真取っちゃったよハハハ」 「っていうかあの挑発何?ヤっさん?キー坊もあるの?」 「うがぁ〜素敵だわぁ〜アタシも抱き上げられて走ってほすぃわぁ〜☆」 「いや…」 「いやそれは…」 「無理ニャ」 皆にからかわれてムカついたから、 原因となった奴の耳を一通りピロピロしてウサ晴らしをしておいた。 「…帰ったら、たっぷりお仕置きだからな!」 おしまい 色々ゲストさせてみちゃったり。イヒ。