よくよく考えてみれば明らかな挑発であったわけだが、その時の私は冷静に考える思考は持ち合わせていなかった。 軟派で強引で、何より人を見透かしたようなあの眼。落ち着いてきて丁度鬱憤も晴らしたかったところだ。 (聞きにいくふりをして殴ってきてやろうか・・・) 我ながら女らしくないことを考えるものだ。親が知ったら泣くんだろうね。  夜は深けてもジュノは眠らない。  私は表札に『ラインハルト』と書かれたレンタルハウスのドアの前に立っていた。 (でもいざとなると・・・) 少し怖い。  ええい、ままよっとノックしようとした瞬間、ガチャリとドアが開き私は慌てて手を下ろした。 「あ、そろそろ来るころかなと思ってましたよ。」 にっこりと人懐っこそうな顔で微笑むライン。 「ど、どうも・・・」 引きつった笑い顔を作って挨拶。さ、どうぞ。っと私を部屋に招き入れる。  「サンドリアティーはお口には・・・あいませんよね、ミアさんはバストゥーク出身だ。」 話してもいないのに国を当てられる。少し警戒心が強まった。 「あっ・・・話し方を聞いていれば大概分かります。それぞれの国にはそれぞれの発音に多少違いがありますから。」 その警戒心を悟ってか微笑みながらそういった。 「・・・私はお茶をご馳走されに来たわけじゃないっていうのは、分かるよね?」 このまま彼のペースにはめられるとマズイ。そう感じた私はすぐに本題を切り出した。 「あなたは・・・なんなの?」 私は眼光を鋭く、まるで敵を見るような目で彼を睨み付けた。 「リィスの弟のラインハ・・・」 「そういうことじゃない。」 強い口調で問い詰めた。 「何故彼を知ってる?そして何故あの時、その・・私が泣いていたのが彼のせいだってわかったの?」 真剣に問うているのに、彼はカップに紅茶を注ぎながらふふっと笑い、せっかちな人だなぁとふざけた様に私を眺める。 「答えなさい。」 ラインのペースに乗らないように間髪いれずにそういった。  彼は終始微笑んでいた。トントンと床を鳴らし私と対面する形で、イスに腰掛ける。 「あれだけ大きな声を出していたら、話を図らずも聞いてしまった、という人がいてもおかしくないとは  思いませんか?」 どうぞ、と言いながらカップを差し出す。バラの香りがする。ローズティーだろう。 「つまり、あなたは立ち聞きしたっていうことね?」 「自然と耳に入ってくるものを立ち聞きというのなら、そういうことになりますね。」 食えないやつ。ここまでの彼の印象だ。 「何故彼を知っているか。ですが、彼と僕は旧知の仲だ。その彼が柄にもなく叱責していた。これだけで  十分僕は興味を持ってしまいます。」 盗み聞きしたことは、これにて謝りましょう。そういうと立ち上がり深々と謝罪の礼を私に向ける。  「しかし・・・。」彼は続けた。 「しかし彼は罪深い。」 再び座り直し、正面から彼は私を覗き込む。 「好きなんでしょう?彼が。」 「え!?」 思っても見ない、言葉が吐き出された。私が?ルーを?  ふふっと笑い彼はカップを空にする。 「気がついていなかった・・・?僕から見ればバレバレの演技にしかみえなかった。  それに気がつかないでいるルーウェン。彼を罪深いといったのはそこですよ。こんな美しいく、可愛らしい  女性に思われているのに気がつかず、突き放す。なんて愚かなことか。」 「でたらめ言わないで!」 テーブルを思いっきり叩く。カシャンと空になったカップが鳴り、まだ並々と残っていたカップからはお茶がこぼれた。 「・・・かわいそうな事に自分の気持ちにすら気がついていなかったあなたは、本当は彼に謝りたい。許して欲しい。」 うるさい・・・ 「でもあなたのプライドがそれを許さない。彼の前では常に気を張って。すべてを悟られまいと振舞う。」 うるさい・・・ 「そしてその結果、急に現れた一人の女に対しての嫉妬。そこから吐き出される醜い言葉の数々。」 うるさい・・うるさい・・ 「それを大好きな彼に聞かれた。羞恥心と嫌悪感と意地とそして嫉妬。ぶつかり合い、あなたの心を引き裂いてしまった。」 「巻き起こる後悔の念。謝りたいのに謝りたくない矛盾した気持ち。そしてそれすら気がつかない彼の鈍感さ。」 「それらすべてが・・・」 「うるさい!黙れ!!」 グワシャっという音がして、テーブルがへこんだ。  私は立ち上がり肩で息をしている。ラインは、やれやれといった風に呆れ顔で笑う。 「いきり立つということは、すべて図星の証拠。あなたは本来物事を隠すことが出来ない性質でしょう?」 ふふふっと笑う。私はカッと顔が熱くなるのを感じた。 「あなたに何が分かるのよ!!何で私に分からないようなことを分かった風に!バカにするのもいい加減にして!」 「でもあなたは否定することが出来ない。」 「そんなことないわよ!嫌いよあんなやつ!!人の気持ちもしらないで他人ばっかり気にしてるあんな・・・!  ・・・あ・・・。」 自分でいったことに自らはっとした。やっぱり、私は・・・。  あたりが急に静まり返った。私は認めたくない真実に気づき、うつむいてしまった。 ラインは立ち上がり私の近くに歩を進めた。 「あなたは気がついてしまった。心の事実に。でも、もう後戻りできないところに、進んでしまったね。」 耳元で囁かれ、その言葉の重さに私は身を震わせた。 「辛かっただろう。」 「僕が、忘れさせてあげるよ。」  え?っと彼の顔を見上げた瞬間、いきなり唇を塞がれた。すでに顔は目の前にあり、繋がった口に舌が侵入してくる。 「んっ・・・・」 唇、そして舌を吸われ、唾液が混ざり合う。私は硬直し身動きが取れなかった。  顔が離れた。混ざり合った唾液が糸を引く。 「な・・・にするのよ・・・」 辛うじて出せた言葉はそれだけで、すぐさまラインは私の後ろにポジションを取り、着ている柔術着の上から 胸をまさぐり始める。 「いやっ!やめっ・・・やめなさいよ!」 かすかに笑う声が聞こえた。彼の顔は確認できなかった。  思いっきり暴れれば逃げられただろう。しかし力がはいらなかった。それを悟ったのか、もう一度深くキスをすると 左右両方の襟に手をかけするっと柔術着を脱がし始めた。白い肌と、下着が露になる。  私にいやいやする間を与えず彼は下着を取り払った。あまり大きくない乳房。すでに乳首はつんっと上を向いていた。 「やだぁ・・やめてよ・・・ん、あぁ・・」 両手で胸をもみしだく。彼の長い人差し指は硬くなった乳首を執拗に弄り続ける。 「いやぁ・・・!やめて・・ねぇ、おねがい・・・・」  彼は今度は首筋や胸元あたりに唇を這わせ、左手で乳房を、そして右手でわき腹や下腹部、ヘソのあたりを触り始めた。 「んぁ・・!ぁん・・・やめ・・あぁ!」 いつの間にか私の前に彼が移動し、乳首にしゃぶりつく。 「あぁぁ!やぁん・・・・」 自然と涙がながれる。それを見た彼は、涙を舌で掬い取る。 「可愛いよ・・・。大丈夫、心配しないで。もっと気持ちよくなるから・・・」 そういうと今度はまだ脱がされていなかったズボンに手をかけた。 「やっ!だめぇ!」 静止を振り切り、一気に下げられ、身にまともに纏っているのはショーツのみになってしまった。  彼は再び後ろに移動し、両手で胸を弄り、しばらくして徐々に右手を下げていった。 わき腹をなぞり、下腹部のあたりに差し掛かった。 「だめ!そこだけはやめて!いやぁぁぁ!」 その右手の動きを止めようと必死に押さえようとする。が、ビクビクっと電気が走ったかのような感覚に襲われた。 「あぁ!ン・・ふっ・・やだぁ・・・・!」 左手の指が敏感になっている乳首をピンっとはね、摘まれた。  そのせいで私の静止は疎かになり、彼の右手はショーツの中に進入していった。 「んぁ・・く・・・や・め」 「もうココ、こんなに濡れてるんだ・・・。」 「いやぁぁ・・・ウソ・・言わないで・・・」 「ウソだと思うの?」 くすくすと耳元で囁く。彼の指が私のアソコに指を挿入した。くちゅくちゅといやらしい音が部屋に響く。 「あぁぁ・・・やだぁぁ・・・ああ!」 かつてないほどの快感に見舞われ気を失いそうになる。 「アイツとは・・やってたの?」 「あはぁ・・そんな・・・こと・・・」 そして邪魔だな、と彼が呟いたと思ったらショーツに手をかけそのまま剥ぎ取られてしまった。  徐々に徐々に後ろに下がっていく。私達の後方にはベッドがあった。抵抗する力など出ず、私は誘導されるがままに ベットに倒れこんだ。 「きみの綺麗なところ、もっと見せてよ・・・」 そういうと仰向けに寝かせられ、彼は覆いかぶさるようになる格好で私と唇を重ねた。 「ん・・・あ・・んんっ!」  あまりに恥ずかしいからか、体が火照っている。 「可愛いよ・・・ミア」 名前を呼ばれ顔から火が出そうになる。  彼は私の足を広げ、そこに顔を埋めた。淫猥な音がくちゅくちゅと響く。 「やぁぁ、はず・・かしい・・はぁはぁ・・あぁぁ!」 両手で顔を覆い隠す。 「やぁん・・・あぁぁ・・・きもちイイよぉ・・・・」 その言葉をきいたのか、彼はクリトリスに舌を這わせ、丹念に愛撫する。指は膣内をかき回し私を犯していく。 「あぁぁ!・・んぅぅ!はぁぁ・・・」 今度は顔をあげ、右手の人差し指と中指で膣内を弄りつつ、乳首を吸いあげ、噛み、舌で嘗め回す。 「あぁん!いやぁぁ、そんなにされたら・・・・あぁぁぁ!」 「あっあっあっあっ!」 ぐちゅぐちゅと中指が出入りする。愛汁が溢れ、飛び散る。真っ白なシーツ染みができ、広がっていく。  彼は左手で私の髪を撫であげ、首筋や胸元にキスをした。っと、急に右手の動きが止まった。 「えっ!?」 息があらく、目には涙が溜まっている。そして・・・私は無意識に腰をくねらせていた。 「自分から腰を動かして・・・結構淫乱なのかもね、君は。」 「いやぁぁ・・・そんなこと言わないで・・・」 「中もひくひくいってるよ・・・」 「やだぁ・・・あぁはやく続けて・・・・ねぇおねがい・・」 彼は意地悪そうに笑うと今度は親指と人差し指でクリトリスを摘み上げる。 「あぁぁ!いいよぅ・・・気持ちイイ!!」 左手は丹念に胸をもみしだき、硬くなった乳首をさらに攻め続けた。 「あん!やぁん、あ、あ、はぁ、はぁん・・・あぁぁ!」 「も、もう・・だっ・・いっちゃあぁぁ!」 激しく身を捩じらせ私は絶頂に至った。  次に目が覚めたのは朝だった。私は裸でベットに寝転んでいた。シーツには無数の染みができている。 ぼーっとする頭で、はじめにイッたあとのことを思い出そうとしたが、なぜか覚えていない。 (・・・しちゃったのかな・・やっぱり) 天井を眺め思い出そうとしてみるも、やはり思い出せず考え続ける。  ふと後ろのドアが開く音がした。 「目が覚めた?」 ラインだ。彼はもう着替えている。 「ふふっ・・可愛かったよ、昨夜・・・。」 「ねぇ・・・あのあと私やっぱり・・・・」 確認するのが怖かった。でももやもやが残るのはいやだ。はっきりさせたい。  彼は私に近寄って耳元で静かに囁く 「よっぽど、たまってたのかな?自分から上にのってきたりして・・・」 そして笑う。  私は火が出るかと思うほど顔が熱くなるのが分かった。恥ずかしすぎて私はシーツで顔を覆い隠した。彼の顔が見れない。 そしてそれ以上に物凄い罪悪感に苛まれた。思えば思うほど、ルーに対して申し訳なく思えてくる。 確かに彼と付き合っていたわけではない。そうではないが、謝りたい気持ちでいっぱいだ。 もちろん、こんなことをシたなんて、言えるはずもないのだが・・・。  すぐさま脱ぎ捨てられたままになっていた柔術着を着て部屋を出ようとする。 「せめて朝のお茶でも、一緒・・」 言葉が終わらないうちに彼の部屋を飛び出した。そして・・・ 「うわっ」 聞きなれた声だ。いつも喧嘩ばかりしていた、あの。 「あ・・・・・・」 ルーウェン・・・。と・・エネミ!?  彼の隣には、昨日私が罵倒した、白魔道士の娘の姿があった。私は状況が飲み込めずただただ唖然とするだけだった。 「お前・・なんでこんなとこから」 ルーはドアの表札を見る。と同時に中からラインが現れる。 「おや・・・やぁ、ルーウェン。久しぶりだね。」 「・・・あぁ。」 明らかに怪訝な顔になるルー。 「・・しばらく見ないうちに大分ご盛んみたいだね。ふふっ」 ラインはルーの隣にいるエネミを見下ろし、にやりと笑ってみせる。エネミはそれに気がつき少しうつむく。 「そんなんじゃない。」 淡々と言葉を返す。が、いつもの彼とは幾分か違うような気がする。 「それより・・・お前たち知り合いだったのか?」 ルーは私と、そして隣にいるエルヴァーンに問いかける。 「わ、私は・・・」 言葉に詰まる。なんていっていいのか分からない。 「僕たち、付き合ってるんだ。」 え!?コイツ何ていった!?私は驚いて彼の顔を見上げる。 「そうか。」 ルーの表情が変わる。いつもと違う。ぜんぜん・・ 「それよりも・・・ルーウェン。」 ラインがルーとエネミに近寄り、おびえたエネミの頬に手をかける。彼女の体がびくっと硬直する。 ラインは正面から彼女の顔をじっと見つめ、にやりと笑うと 「大切なものは、ちゃんと掴んでおかないと・・・『また』、指の間からすり抜けていってしまうよ?」 「やめろ!」 エネミにかかっているラインの手を引き剥がしたルーの顔は、私がはじめてみる彼の憤怒の形相だった。 「ははは、冗談だよ。さ、ミア。行こうか。」 呼ばれた私は、反射的に彼についていくしかなかった。 「ラインハルト。」 「なんだい?」 「忘れはしないからな。」 「おやおや。珍しく熱くなってるね。まあいいや。それじゃまた合おう。」 二人は振り向きもせず何がなんだか分からないやりとりをして、互いに反対の方向へ行ってしまった。  「・・・ルーウェンさん?あの・・大丈夫ですか?」 ラインハルトとミアと別れてしばらくした後、エネミはルーウェンにそう話しかけた。 「・・・ん?なにが?」 上の空と言った感じのルーウェン。さらに彼は彼女と目をあわせようともしない。 「だってさっきミアさんが・・・」 男の人と一緒にいたから・・と言いかけたがそれはいいたくなかった。 「ミアさん、全然目を合わせてくれませんでした・・・やっぱり私、嫌われちゃったのかな。。。」 独り言のように呟き肩を落とすエネミ。 「・・・ねぇ、聞いてますか?ルーウェンさん。」 「・・・・え?あ。ごめん、なに?」 「・・・もういいです。」 さらにしょぼくれた顔になる。それを見て天井を仰ぎ髪を掻き毟るルーウェン。 「そういえばあの人は、いったいどういう関係・・・あ、ごめんなさい私また無神経に・・。」 「・・・あの人ってさっきのエルヴァーン?」 「はい・・」 彼女は頷き、ルーウェンの顔を見る。見たこともない表情を浮かべる彼を見て、またうつむいた。 「昔からの・・・いや、なんでもない。」 考え込むように、ジュノの居住区を歩く。そのすこし後ろを、エネミが追いかけていく。 今日は雨が降りそうだ。 ツヅク @ナ梨 ***あとがき。*** エロハズー(pдq)(ぉ ていうか計画性がなさすぎるからまたツヅクだyp 皆様、いったいどのへんまでならついて来て頂けるんでしょうね^^; 何となく次回予告っぽいもの エネミたん暴走(ぇ そして何故このテキストにはエルとヒュムしか出てきていないのか。 その辺はまぁ憶測で。 ちなみに、いま一番動かしにくい人はリィスさんとルー君です(笑