星降る丘の日が暮れる。誰かがガサゴソと草むらをかき分けている。 Yoran-Oran「目撃情報が集中しているのはこの辺りなのだが、誤りだったか……? いやいや、必要な情報はまだ集まっておらん。判断を確定するのは早計か。」  そこにいたのはウィンダス三賢者の一人、ヨランオラン博士だった。何かを探して いるようだが、様子からするとまだ見つかっていないみたいだ。 Yoran-Oran「仕方ない、もう日も沈む。暗い闇の中での活動は得策ではない。今日の 捜索は打ち切って帰るとしよう。」  そう考えたヨランオランに声をかけてくる者がいた。 Koru-Moru「おや、ヨランオランではないか。どうしておぬしがここにおるんじゃ?」  言葉の主はコルモル博士。同じく三賢者の一員だ。厄介な相手に出くわした、と ヨランオランは思った。 Yoran-Oran「うちの若い研究員から報告があってな、マンドラゴラのルーツを知る 手掛かりが掴めそうなのだ。君こそ何故ここにいるのかね?」 Koru-Moru「うむ、ワシはこの丘に降ってくるという隕石を探しておったんじゃ。 もしかしておぬし、拾ってはおらんかの?」 Yoran-Oran「そんなものに興味は無い。ではコルモル博士、私はそろそろ失礼する。」  にべも無く答えると、ヨランオランはデジョンを唱えて帰る用意を始める。 Koru-Moru「待て! ワシがあれだけ探しても見つからないんじゃ。さてはおぬし、 ワシとモジジちゃんの仲を妬んで持ち逃げするつもりじゃろう!」  コルモルがヨランオランの肩を揺さぶる。そのせいでデジョンの詠唱が中断された。 Yoran-Oran「なんだ、その出鱈目な論理展開は! 単に君の目が節穴だというだけでは ないかね!?」 Koru-Moru「節穴とはなんじゃ! 節穴とは!」  星降る丘、Twinkle Tree 秘密基地。 Tit「Tom隊長、事件です!」  偵察担当のTitが双葉に着いたリボンをヒラヒラさせながら駆け込んでくる。 Tom「皆まで言うな。あの近所迷惑な連中のことだろ。」  Tomは既に首まで地面に埋まっている。いつもなら、こうなると何をしても起きないの だが……今日に限っては違うらしい。 Tat「ZZZ……。」  Tatは立ったままで見事に熟睡している。よくこの状況で眠れるなとTitは思わず感心した。  Tomはピョコンと土から跳び出すと、Tatをはたいて叩き起こした。 Tom「俺達の快適な安眠のために! Tit、Tat、出撃だ!」 Tit「らじゃです!」 Tat「漏れを起こしたのは誰でつか?」 Koru-Moru「だからおぬしがここにいること自体、怪しいと言っておるんじゃ!」 Yoran-Oran「私はここらに大きなマンドラゴラが出没すると聞いて探しに来たまでだ! 君のように意味も無くフラフラしてる奴と一緒にしないでくれたまえ。」  二人は相変わらず口喧嘩を続けている。いつの間にか空は星々で覆い尽くされていた。 Tom「よくあれだけ大声が出せるもんだな。」 Tat「あなたでつね? あなた、漏れを起こしますたね?」 Tit「それはさておき、あの人……Tom Tit Tatを探してるようですよ。」  マンドラゴラ達はヒソヒソと言葉を交わす。だが、それを聞き咎めた者がいた。 Yoran-Oran「そこの君、もしや大マンドラゴラを知っているのか?」  それに対しコルモル博士は気付かなかった様子。ヨランオランが他所を向いて 話し出したのを見て呆れている。 Koru-Moru「おぬしが虚空と会話する才能の持ち主だったとは知らなかったぞい。」 Yoran-Oran「妄想爺にそう言われる覚えは無い!」  一方のマンドラゴラ達もヨランオランの反応には驚いたようだ。 Tom「あいつ、俺達の言葉が解るのか?」 Tit「どうやらそのようですね。」 Tat「( ̄□ ̄;)ノなんでやねん!」 Yoran-Oran「私がマンドラゴラ研究の第一人者というのは伊達ではないよ。」 Koru-Moru「ほれ、また宙に向かってブツブツと……。」 Yoran-Oran「君は黙っててくれたまえ!」  ヨランオランはコルモルを無視して三人のところへ寄ってくる。 Yoran-Oran「あの大マンドラゴラはTom Tit Tatというのですか。良ければ会わせては 貰えませんか?」 Tom「まぁ、呼べなくも無いが……。」 Tit「どうするです?」 Tat「何をするつもりなのかと問い詰めたい。小一時間問い詰めたい。」  そのとき、興味津々といった面持ちでコルモルも後ろから近づいてきた。 Koru-Moru「おや、リボンを着けたカブとは中々可愛いではないか。」 Yoran-Oran「カブではない、マンドラゴラだ!」 Tit「う〜、離すです!」 Tom「とっとと寝かせてくれ……。」 Tat「また〜りしる。ぐ〜。」 Yoran-Oran「ふむ、いつまでもここで立ち話というのもなんだな。私の家に来るといい。」 Shantotto「オホホホ! ヨランオラン博士、お邪魔してますわ!」 Yoran-Oran「な、シャントット博士? どうしてここに!?」  ヨランオランが扉を開けたとき、三賢者のもう一人、シャントット博士がいつの間にか 自宅の中にいた。  それを見てコルモルがニヤリと笑う。 Koru-Moru「ほほう。さてはおぬしら、デキておるな?」 Yoran-Oran「それは無い!」 Shantotto「ありえませんわ!」  同時に強く否定する二人。 Tat「タル子タン、(*´Д`*)ハァハァ……。」 Yoran-Oran「おや、シャントット博士が気に入りましたか?」 Koru-Moru「言っとくがこやつはバーサンじゃぞ。」 Shantotto「レディに対して失礼ではないですこと? また石像に変えてしまいますわよ!」  ここでヨランオランはゴホンと咳払いをする。 Yoran-Oran「ところでまだ私の質問に答えてないが……。」 Shantotto「あら、あなた鼻の院の前院長でしょう。何か面白いオモチャはないかと物色しに 来たのですわ。」 Yoran-Oran「それなら鼻の院に直接行け!」 Shantotto「でも向こうはルクスス院長が久々に帰ってくるらしく、バタバタしてたから 自粛したのですわ。その点、年中暇なあなたの所なら迷惑にはならないでしょう。」 Yoran-Oran「十分迷惑だ! それに私をコルモルみたいな暇人と一緒にするな!」 Koru-Moru「ワシが暇人じゃと!? ワシは文通に校長にツボ研究にと忙しいんじゃ!」  三博士が口角泡を飛ばす激論を繰り広げる陰で、マンドラゴラ達はヒソヒソと相談をする。 Tom「何がなんだか……。ところで連中、さっき鼻の院とか言ってなかったか?」 Tit「怪人AkeとOmeを作った所ですね。」 Tat「悪の秘密結社だ罠。」  だが、やかましい会話を続けているにも拘らず、ヨランオランには聞こえたらしい。 Yoran-Oran「私達を悪の秘密結社呼ばわりとは……随分なことを言いますね。」 Koru-Moru「そうか? シャントットなら女幹部が立派に務まりそうじゃぞ。」 Shantotto「あまりふざけたことばかり言ってると……わたくし、ブチ切れますわよ!」  三博士はまた喧々轟々と口論を始める。 Tom「とりあえず……このままでは話が進まん。敵決定ということで戦うぞ!」  タイミングが悪い感は拭えないが、三人は博士達の前でいつものポーズを極める! Tom「貴様ら、キャラ濃すぎだ! 俺達の出番が無くなるだろ!」 Tit「隊長ぉ〜、もしかしてそれが本音だったんですかぁ〜?」 Tat「もうだめぽ。植物戦隊ドラ(#゚Д゚)ゴルァ!マン見参!」  毎度の如く種子を投げると、Tatの合図オン実ーからシュボッとTom Tit Tatが 跳び出して来る。 Yoran-Oran「おお、これが噂の大マンドラゴラか!」  捕まえようとしたヨランオランの脇をすり抜け、Tom Tit Tatはシャントットに まっしぐらに向かう! Tit「あれ……鼻の院の関係者は今の人ではなかったです?」 Tom「さてはTat、お前趣味で動かしてるだろ!?」 Tat「o(≧∇≦o)(o≧∇≦)oキャーキャー!」  Tom Tit Tatの両手がポフポフとシャントットを殴りつける。 Shantotto「オホホホ! この程度の攻撃、痛くも痒くもありませんわ!」 Koru-Moru「それはいいが、おぬしも少し恥じらいというものを持ったらどうだ?」  シャントットは下を向いた。よく見るとTom Tit Tatは、自分の平らな胸の上を ペタペタと触っている。 Shantotto「……ぶっ殺す!」  目の前の奴を張り倒して、すぐさま魔力を両手に集める。風が吹き荒れ、大地が震え、 強大なエネルギーが収束する。 Yoran-Oran「待て! 落ち着くんだ!」 Koru-Moru「いいぞ、やってしまえ!」 Shantotto「わたくしに失礼をはたらく奴は……こうなるのです!!!」  シャントットの両手から灼熱の業火が放たれる! 紅蓮の嵐が荒れ狂い、辺りを爆炎 で包み込んだ。  煙が晴れたとき……ヨランオランの屋敷は瓦礫の廃墟と化していた。 Shantotto「あら、わたくしとしたことが。やりすぎてしまいましたわね。」 Yoran-Oran「おのれ〜! 修理費用は何から何までお前名義で付けさせてもらうぞ!」 Koru-Moru「ワハハ、ザマーミロじゃ。日頃の行いが悪いせいじゃな!」  しかしそのとき、瓦礫の下からボロボロになったTom Tit Tatが這い出してきた。  Tom Tit Tatは光合成の構え……! Yoran-Oran「まだ動けるのか……。」 Shantotto「オホホ、往生際が悪いですのね。」 Koru-Moru「ついでに今は夜じゃぞい。」  同じく瓦礫から這い出してきたTatは、ピッ!ピッ!と両手を星空にかざしてこう唱えた。 Tat「マンド〜ラ、マンド〜ラ、スペ〜スピ〜ポ〜\( ̄0 ̄)/」  そのとき星空の彼方でピカッと輝くものが見えた。  かと思った次の瞬間!  ジグザグの軌跡を残しながら、銀色の円盤が夜空を駆け抜けてきた! Tat「キタ━━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━━!!!!!!」  未確認飛行物体はTom Tit Tatの上空にピタリと静止する。そして真下に向かって ズビビビビと虹色の怪光線を発射した!  光は次第に広がっていき、そして何も見えなくなる……!  辺りが再び静寂を取り戻したとき、そこには元気な姿のTom Tit Tatが踊り回っていた。 しかも、破壊されたはずのヨランオランの家まで、元通りに復元されている。  海千山千の三博士も、流石にこれを見て絶句した。 Koru-Moru「今のは……何じゃ……?」 Shantotto「……。わたくしの魔法など効かないとおっしゃるのですね……。」 Yoran-Oran「やめろ! はやまるな!」  シャントットの目つきが変わった。先程より遥かに多くの魔力を呼び集める。 天が裂け、地が砕け、星の大樹も怯えたように木の葉を揺さぶる。 Shantotto「……ぶっ壊す!」  シャントットが腕を振り下ろすと、天空から轟音を上げて巨大な隕石が飛来する! 熱と圧力を持った大質量兵器が重力に導かれて急落下! 激突の瞬間、爆発の閃光と 共に石の区の一部が消し飛ばされた……! Shantotto「ふぅ……。これですっきりしましたわね。」  かつてヨランオラン博士の家があった場所は、今やクレーターの底になっていた。 さらに隕石は、隣にあったコルモル博士の館もついでに押し潰してしまっていた。 Koru-Moru「こら、ワシまで巻き込むとは何事じゃ!」 Yoran-Oran「あれほど……やめろと……。」 Shantotto「オホホホホ! ごめんあそばせ!」 Tit「今回の相手は、強すぎましたですね。」  Titの全身は真っ黒に焦げている。お陰で辺りには香ばしい匂いが漂っていた。 Tom「無茶苦茶だ……。」  Tomは包帯でグルグル巻きにされている。さながら、怪人ミイラマンドラといった感じだ。 Tom「ところで……そいつは誰なんだよ?」  TomはTatが連れて来たものを指差す。それは、水色の肌をしたマンドラゴラだった。 ???「コヨコヨッ、コヨッ!」 Tat「宇宙人ですが何か?」