胸を包み込む暖かな指が、器用に動いて服をたくしあげる。 路地に差し込む白い光にさらされて、あたしの頬がカッと熱くなった。 「やめっ……恥ず……」 乳首の先から響いてくる痺れが、声をかすれさせてしまう。 「綺麗だよな」 「ななななにがよ?」 「……の、カラダがさ」 耳に口を寄せ、彼が熱っぽく囁いた。 「ヤだ、もう……離して……」 胸を隠そうと身体をよじると、再び抱きしめられて、口を塞がれる。 深く舌を差し入れられ舌を吸われて、強く抱き締められて抵抗もままならずに。 その巧みな愛撫に思わず力が抜けてしまい、そんな風に翻弄されている自分が悔しくて、 泣きそうになる。 「……好きだよ」 彼が言った。 「ずっと、こうしたかった」 前髪が触れあうほどの至近から、彼の深い焦げ茶の瞳が覗き込んでいる。 その顔がとても真剣で、言葉につまる。 「好きだ」 再び、はっきりとした言葉が耳に届く。 我慢できずに、涙がこぼれた。 「ずるいよっ」 彼の胸にしがみついているあたしの髪を、暖かい手が優しくなでる。 「そんな風に、言われたら、あたしっ」 鼻がつまってうまく喋れないのがもどかしい。 「ごめん」 告白されて、謝られて、自分の気持ちに気づいて、でも実力行使する卑怯モノなんか、 認めたくなくて。 なのに拒絶できない自分がなおさら腹立たしいのに、そんな気持ちも彼は全部、解って るみたいで。 唇が頬に触れる。キスと一緒に涙を全部吸ってしまう。 「順番が、逆じゃない」 掌が乳房を這う。指先が先端を挟み込むように、くにくにと蠢く。その刺激が気持ちよ くて、思わず息がもれる。 「んン……ずるい……よ……」 彼の頭が下がっていく。唇が、首筋を通って鎖骨に落ちる。胸に、触れる。 「ごめん。でも、好きなんだ」 「……うん」 彼が乳首を含んだ。舌の上で転がされる快感にあたしは身体を震わせる。 「んっ……あっ……」 いつの間にか、彼の右手がショーツに差し込まれていた。 慣れた手付きで指先が下腹部を這い、容易にそこへと辿り着く。なんだかそれにも腹が たつ。 「ん……ふっ」 そんな意思とは裏腹にあたしは鼻にかかった甘い声を漏らしていた。 繁みを梳くようにして、割れ目に指が潜り込んでくる。思わず腰をひくあたしの動きを 壁に押し付けて封じ、指先は易々と侵入する。 「あっ……やっ……」 「うわ……すごい濡れてるよ」 その事に気をよくしたのか安心したのか、彼の動きが大胆になる。快楽に屈してしまう 己の身体に、あたしは唇をかみしめた。 掌全体が陰部を覆う。指先が蠢き、襞を割って肉芽を捕らえる。もっとも敏感な部分を 巧みに刺激され、あたしは身を仰け反らせた。 「あ……あ……ああっ」 膝が、挫けそうになる。身体を支えるために、彼の首にすがりつく。 彼は後ろから手をまわし、あたしの尻を撫で回して揉みしだいて、秘部への刺激を再開 する。 くちゅくちゅじゅぶじゅぶと濡れた音がする度にあたしは悲鳴をもらし、喘いだ。胎内 をかき回される快感に頭の中が熱くぼんやりとしてくる。 「あっ……うんっ、んあっ、あっ、ああっ……」 「このまま君に、入ってもいいかい?」 愛撫の手を休めることなく、彼が耳許で囁く。嫌だ。こんなとこで。こんな、路地裏で。 「嫌」 耳には競売前の喧噪が届いている。いつ人が入ってくるとも知れないこんな場所で抱か れるなんて、嫌。 あたしはせいいっぱい首をふる。 「いやぁ……」 刹那。彼の指が深く突き上げた。奥の、その部分をぐりぐりと容赦なく攻めたてる。 「んああっ! あああっ! いやああっ!」 叫びだしたい程の感覚が身体の奥底に宿る。愛液がぴゅっぴゅっとしぶくのを自覚する。 それは下着を濡らし、なお溢れて太股を伝う。 がくがくと膝が震える。這いのぼってくるその感覚をあたしは必死で否定する。が、別 の指がむき出しにした肉芽を攻めるに至って、あたしは彼に屈服した。 「だめっ! だめぇっ! あああああああああっ!」 必死で彼に抱きつく。あたしは全身を支配する痙攣と快楽に身を任せるしかなかった。 「あふ……」 くったりと弛緩したあたしの身体を片手で支えて、彼があたしのショーツを脱がせる。 「ごめん、ちょっと我慢できそうにないや」 壁に背中を預けさせ、片脚を抱え上げる。ぼんやりとした視界に入ってきたソレはグロ テスクにいきり立つ凶器。 「いやぁ……」 彼の肩をつかむ。押し退けようとしてるのか身体を支えようとしてるのか、自分でも自 覚もないままに。 再び涙がこぼれる。その涙に口をつけながら、彼があてがう。イったばかりの敏感な襞 が擦られてあたしは悲鳴をあげる。 「お願い、やめてったら……許して」 そんな声をまるっきり無視して、彼がはいってくる。 「ひああああああっ……」 「くぅっ……」 あたしの声と彼の声が重なった。 胎内を強引に押し開いて入ってきた熱いものが、最初から激しく動いて、あたしを犯す。 「あぅっ! あぅっ! あぅっ! ああっ!」 踵が浮き上がる程に激しい抽送に、なすすべもなく翻弄される。 「なか、すごいよ。気持ちいい……。からみついてくるみたいだ」 彼が囁く。噛み付くように、彼の口が唇を塞ぐ。荒く息をつきながら舌を入れ、激しく 吸われる。唾液が溢れ、咽を伝う。 「ふンっ あふっ! ひっ! ああっ! ひあっ!」 抽送は、続いている。浅く、深く。肌同士がぶつかりあう音と、湿った水音が遠くから 聞こえる喧噪と混ざりあう。 快感と苦痛が入り交じった感覚に歯を食いしばる。徐々に、沸き起こる熱い感覚に、思 考が麻痺する。 「くっ……だめだっ」 半ば朦朧としかけた意識の中に彼の声が割り込んだ。尻を支えていた彼の手が結合部に のびる。擦られて充血したクリトリスを、きゅぅと挟みつける。 「やぁああああああああ!」 強烈すぎるその刺激に、あたしは悲鳴をあげた。 突き上げられる腰は一際激しく子宮口をえぐる。熱い感覚が胎内で炸裂する。突き抜け る快感に視界が白く反転。意識が遠のく。 「あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」 がくがくと痙攣する身体に苦鳴を上げながら、と二度目の絶頂を迎え、あたしの意識は 闇に沈んだ。 「なによっ! もう! 馬鹿!!」 レンタルハウスに怒声が響き渡る。 「ごめん、強引なのは悪かった。あやまるから」 「知るもんですか! もう絶対に許さないんだから!!」 怒りは、当分おさまりそうになかった。 @しらかん