月は弛緩した躯と揺らぐ思考でぼんやりとものを考える。
自分は今何処にいるのか、そして一体自分に何があったのかを。
記憶がぽっかりと抜け落ちている、というよりは思考にもやがかかったかのように、
物事をうまく考えられない。
目を開いて、ゆっくりと深呼吸をする。
深呼吸を繰り返すと、次第に思考がクリアになり、躯の感覚が戻ってくる。
下になっている方の頬が冷たい。
どうやら自分はコンクリートの部屋に転がされているようだった。
だが起き上がろうとして、月は後ろ手を手錠で拘束されていることに気付く。
カチャリ、と寒々しい鎖の音に躯をびくりとさせる。
「な・・・っ」
手首のひんやりとした感触に未知の恐怖で声が震えた。
ふっと頭をあの男が過ぎったが、その考えは即座に有り得ないと打ち消す。
だってあの男は死んだのだ。月が、いやキラが葬った。
・・・・・・では一体誰が? 

「目が覚めましたか」

月の思考を読み取ったかのようなタイミングで声が降ってくるのに月はハッとする。
誰だ、と叫ぼうとするがその声は掠れてしまって、とても弱々しい。
「誰だ、とは随分なご挨拶ですね」とまるであの男のような口調で告げる彼の顔は
急に差し込んだ強いひかりの所為で影になってしまって見えない。
戸惑う月に彼があざけるような笑いを零した。
「私はあなたのご主人様ですよ、夜神月さん・・・いえ、キラ」
そう云って彼が手に持ったものを引くと、月はぐいっと彼の方を向くことになり、
そこでやっと月は彼の首に鎖のついた首輪が嵌められていることに気付くのだった。






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