暁の明星

デビルチルドレン ライト&ダーク
作:

夕暮れのアンカーシティ。
少年が一人酒場の扉を開いた。
いつも騒がしい仲間たちがいる宿泊先からこっそり抜け出し、
夜の街を歩んだ彼の手にはひとつの手紙を握り締めていた。
猥雑とした酒場では彼の存在は非常に浮いていた。
例えるならごみ溜めに白鳥だろう。
特徴的な青い髪の少年は酒場では絶好のからかいの対象だろう。
しかし彼の意志の強きその凛とした目が酒場の荒くれ者たちを黙らせていた。
きょろきょろと誰かを探す彼はバーテンダーの元へ歩いた。
「ここはガキはお断りだ。さっさと帰りな」
「あ、俺は……」
「その子はあたしの招待客なの。今日だけは特別に許してね」
いつの間にか少年の後ろには一人の女性が立っていた。
女性は長い美しい金髪でその胸を強調するへそだしの白いタンクトップを着ており、
その美しさは人間を超越していた。
いや、彼女は人間ではない。
彼女の髪の生え際から生えている二本の牛の角が彼女がデビルであると確信することができる。
その姿を見た少年の頬は瞬く間に紅く染まっていった。
「イシュタルさんのお客さんですか。
それじゃあ、仕方がない。今回だけは特別ですよ。
人の趣味をとやかく言うつもりはないですが……」
「ありがとう、マスター」
振り向いたときに見えた黄金の髪の隙間から見えたうなじが少年の動悸をさらに高まらせた。
「……イシュタルさん」
「なーに?」
「招待状…ありがとうございます」
「ふふ、お礼はいいわよ。
あたしのほうがお礼を言いたいわ。
歌をあなたに聞いて欲しいの、闇の貴公子君」
「アキラです」
「ごめんなさい。お名前を知らなかったから勝手に伝説の人の名前で呼んで…
ねえ、あなたのことをアキラ君って呼んでいいかしら」
「は、はい!」
「立ち話はなんだから、せっかく歌を聴いてもらうのだから特等席に座って」
イシュタルに導かれた席はステージの真ん前だった。
彼女はそのままハーブを持ち、ステージの椅子に座った。
騒然としていた酒場の空気は沈黙に包まれた。
完全に静寂と化した時、ハーブからひとつのメロディが奏でてくる。
彼女の口唇からは情熱的な叙事詩が流れた。
それは英雄への片思いの歌だった。
その歌を聴くとアキラは胸を締め付けられる思いに駆られた。
歌が終わったとき酒場はと静寂としていた。
もっとも次の演目に入ったら再び元の酒場の雰囲気に戻ったが…
アキラの前には二つのグラスが並んでいる。
そのグラスには紫色の液体に満たされていた。
芳醇な香りが鼻孔をくすぐるが、彼の目には女性しか入っていなかった。
「あたしの顔に何か付いている?」
「いえ、そ、その、ただ……」
慌ててアキラは顔を下に背ける。
しかし、その視線の先には服の胸元から見える白い肌がさらにアキラをあせらせることになった。
「…そのきれいです」
「うふふ、おばさんにお世辞を言っても得をすることなんかないわよ」
「お世辞ではありません」
グラスを置いた彼女の手が艶めかしかった。
「うれしい」
紅い口紅で色付けられた唇が次の言葉を突然発した。
「恋人とか好きな人とか居るの?」
アキラは甘酸っぱいジュースを噴出しそうになった。
「………い、居ません!」
「そうなの?
…ふーん。
あなたの仲魔にかわいいデビルが居るみたいけど、
てっきり付き合っているのかと思ったわ」
「か、彼女とはそういうことはありません」
「そうなの?彼女はあなたに好意を持っているように感じられるけど〜」
「ただお互い時の鎖の欠片を探すという同じ目的があったから仲魔になっているだけです」
「そうなんだ。なら、あたしがアキラの恋人になってもいいのかしら?」
アキラの手からグラスが静かに落ちる。
紫色の液体がアキラの服を染めていく。
タオルで拭こうとするもののもうすでに染みになっていた。
「すぐに洗えば染みは残らないわよ」
気が動転したアキラにはイシュタルの妖しげな笑みには気づかなかった。
「大丈夫よ。ここの宿にはいつでも洗濯してくれるわ。
そうね。洗濯終わるまであたしの部屋に来ない?」
「洗濯はどれくらい掛かるの?」
「はい、2時間あれば乾燥まで終わります」
「そう。洗濯終わったら知らせなくてもいいからドアの前に置いて頂きませんか。その代わりチップははずむよ」
「はい、では2時間後に」
「アキラ君。二時間で洗濯終わるわよ。
ねえ、最近水浴びしていないでしょ。あたしの部屋にはお風呂があるのよ。
砂を洗い落としたら?」
「は、はい。そうします」
タオルを羽織っただけの下着姿のアキラはこれ以上イシュタルに裸身を見られないためにバスルームに入った。

バシャン
頭からお湯をかぶる。
「何で俺こんなにドキドキしているんだ」
(ゲイルがいたら合理的でないなといわれるな)と思ったそのとき、ドアが開いた。
「その理由、私も聞きたいわ」
そこに立っていたのは手に持つタオルで前を隠している全裸のイシュタルだった。
「イシュタルさん、何で?」
「背中を流してあげようと思ったの。そんなことよりどうしてドキドキするの?」
「わ、わかりません」
イシュタルに背中を拭かれながらアキラは精一杯答えた。
「ふーん、戦いのときや仲間たちと話しているときを見るとアキラ君ってもっと冷静な男の子だと思っていたわ。
でも、こんなアキラ君もかわいい」
どんどんとアキラの顔が赤くなっていく。
「なぜだが昔から知っている匂いがイシュタルさんからしてくるからです。自分でもわからない。…まるで母親のような…」
イシュタルの手が止まった。
「母親ねえ…男の人が死ぬまで忘れられない女性は母親と言うのは本当みたいね」
「ごめんなさい。そういうつもり言ったわけでは…」
「別に気にしない。でも、今は私のことを恋人として見てくれない」
イシュタルは胸を押し付けるように手を回し、彼を抱いた。
「えっ、その…」
「迷惑なら一晩だけの逢瀬でのいいのよ」
「でも、俺はまだ子供です」
「もう十分大人よ」
「でも俺は恋人とか良くわからないです」
「なら教えてあげる。女が惚れるかっこいい男にしてあげる」
ゆっくりと彼女の石鹸のついた左手がアキラの胸からお腹のほうに沿っていく。
と同時に右手はアキラの左の乳首を摘まみ弄んだ。
耳の裏に息を吹きかけながら喋った。
「どう、気持ちいい?」
「……は…はい…」
「ふふふ、うれしいわ。これは愛撫と言うの。体のいろんなところにある性感帯を手や舌などを使って刺激するのよ。
こういう風に…ハグハグ……耳たぶをやさしく噛んだり、さらにここをこうやって舐めてあげたり………
首筋もこうやって舐めてあげると…」
アキラはイシュタルの一つ一つの行動そのたびに身を悶えていく。
そしていつしか左手がアキラの大切なところまで辿り着いた。
「いい、アキラ。いい男と言うのはね、女を喜ばせることができる男のことよ。こういう愛撫は愛を育むためには大切のことよ。
今あなたが感じたところを良く覚えておくといいわ。そこは女の人の性感帯でもあるのよ」
「…は…い………」
「あら、まだ被っているのね。少し痛いかもしれないけど、ちょっと我慢してね」
硬くなっているアキラのものの皮をゆっくりと剥がして行く。しかし、それまで受けた快楽によってアキラには痛みをあまり感じなかった。
むしろスースーと爽快感さえ感じていた。
「よく我慢したね。でもこれからもっと気持ちいいことするからもっと我慢してね」
ぬるぬるとしたイシュタルの手が激しくアキラのをしごき始めた。
初めて与えられた快楽にアキラは耐え切れず射精してしまった。
「随分と出たわね。でも、次はもうちょっと我慢して。女の人を満足させないで一人だけ満足するのは駄目のことよ」
「…ごめんなさい」
「今日はいいのよ。でも、これからあなたが愛する人のためにちゃんと覚えておきなさい」
彼女は桶でお湯を汲み取り、アキラの汚れを洗い流した。
「そうね。ここで続きを教えるのは味気ないわね。ベッドにいきましょう」
アキラの体を拭いていたタオルを置き、放心しているアキラの足と背中を持ちあげた。
「本当だったらあたしがこうやってベッドに運ばれて欲しいけど、仕方ないわね」
ベッドに明を降ろしながらいたずらっぽく微笑んだ。
「もう元気になったみたいね。それじゃ、あたしのとっておきなことをしてあげるわ」
豊満なその胸でアキラのを挿み、身体を揺らした。
アキラの口からは嗚咽がもれる。
さらにイシュタルは彼の先端を咥えた。
ジュルジュルとまるでアイスクリームを舐めるかのように味わっていた。
アキラのが口の中で膨大し今にも出そうになったそのとき、
「イシュタルさん、止めて下さい!!」
驚いた表情でイシュタルはアキラの紅潮した顔を見た。
「後もう少しでいくのに、何で止めるの?」
「俺ばかりでなくイシュタルさんにも気持ち良くなって欲しい!」
「フフ、やさしいのね。やっぱりあたしの思ったとおりいい男だわ。
…ならまずキスからして」
目を閉じて待っているイシュタルの唇を軽く触れた。
「こういうキッスではないの」
イシュタルはアキラの頭を掴み、そして深い愛のキスをした。
アキラの口の中では異物が暴れまわった。
しかし、それは不快なものではなく心地よいものだった。
イシュタルの唇が離れたとき、熱い余韻がアキラの身体の奥に残った。
「これが大人のキスよ」
その言葉で理性の壁が完全に崩れ、情熱に任せてアキラは乳児のようにイシュタルの胸にしゃぶりついた。
まだまだなれていないアキラの愛撫だったが、イシュタルはアキラの熱情に燃えていった。
苺のように紅く硬くなっていくのがアキラの舌でもわかった。
「う、ハア、アキラ…………今度は…もっと下を…」
アキラは言われるがまま、顔を下のほうに進めた。
そこには彼にとって少しグロテスクな女陰があった。
しかし、それは畏怖すべき美であった。
「綺麗です…」
「ねえ、見て。あなたに見られるだけでどんどん溢れてくるの。…ねえ、触って」
「…はい」
「そこは大陰唇よ。…ハゥ……そこは小陰唇よ。…それを…上に……辿ると…陰核という…あなたのそのもの
と…似たようのもの…よ。…そこは特にデリケートだから…やさしくあつ…ア…かってね…」
「はい」
まるで買ったばかりのおもちゃを遊ぶかのように夢中になってイシュタルのものを触り続けた。
そして、顔を近づけ彼女の突起を舐め始めた。
「…ア…アキ…ラ……そん…なとこ…ろ…舐めなくて…いいのよ」
「ペチャペチャ…イシュタルさん…に気持ちよくなって欲しいから」
「…本当に……やさしい…人…ね」
たどたどしい舐め方ではあったもの確実イシュタルを高まらせた。
「……うぅぅぅぅ………」
「………どうしたのですか…」
「ちょっといっちゃった。気持ち良くなってどうにも言い表せなくなっちゃうのよ」
「良かった…もしかして、とんでもないことをしてしまったかと思いました」
イシュタルの熱視線がアキラの膨張としたそれに突き刺さる。
「もう我慢できそうにないわね。アキラ、あたしの中に入れて…」
大胆に足を開き、指で入りやすくなるように拡げた。
「ねえ、早く!」
懇願される必要もなくアキラは早く挿れたかった。
目標を定め、ゆっくりと腰を沈め、そして無事に入った。
アキラにとってそれは今まで経験したことがない奇妙な感覚だった。
自分の身体全てが温かい物の中に入ったという錯覚してしまった。
それから記憶があまり定かではない。
いろいろ教えてもらったと思う。
しかし、ただひたすら腰を動かし、本能の赴くまま精を彼女の中に流しこんだことしかアキラは覚えていなかった。
気がついたとき、アキラは息も絶え絶えにイシュタルの横で寝ていた。

「気持ちよかったよ」
イシュタルの聖母の様な微笑がアキラを現実に引き戻される。
彼女のあそこから自分のものが出ているのを見て急に羞恥心が出てきた。
「お湯を浴びたら…」
彼女の言葉はアキラにとってありがたかった。
汗を流し、頭のもやもやを払いのけようと努力した。
彼女はタオルを羽織っており、ドアの外においてあったアキラの服を差し出した。
「そろそろお別れの時間ね。楽しかったわ」
「…イシュタルさん、その…」
「あなたにはあなたの大切な仲間がいる。…そして、いつか戻りたい故郷がある。
今日のあたしとのことは一晩だけの逢瀬よ。
ほら、あなたの大切な人たちがあなたを呼んでいるわ」
窓からはゲイルとスクルドがアキラを探す声が聞こえてくる。
「帰りなさい、あなたの仲間たちの下に…」
感情を抑えた少し冷たい声でイシュタルは言った。
「きっとあなたならヴァルハラを何とかできるわ」
アキラは何もいえなかった。
「そうだ。最後にひとつ教えることがあったわ」
その瞬間、アキラの唇に暖かい感触を感じた。
それはさっきしたキスではなく挨拶のようなキスだった。
「女の子は好きな人とするキスが好きなのよ。これは絶対に忘れないでね」
それが別れの言葉だった。

宿を出たアキラを待っていたのはゲイルとスクルドだった。
「アキラ!!どこに行っていたのよ」
「一人で帝国軍がうろうろしているところを歩くとは合理的ではないな」
「ごめん。ただ聴きたい歌を聴きに行こうと思ったら、足がここに運んでいたんだ」
「まったく、心配させて…」
スクルドの声にはすこし震え声が混じっていた。
よほど心配していたのだろう。
「アキラ君!!また、あたしの歌を聴きに来てね」
イシュタルが宿の窓から顔を出して手を振っていた。
スクルドの顔には少し戸惑いの表情が出ていた。
「はい!またいつかみんなと来ます!!」
そして、アキラたちは街の中に消えた。

「どうじゃ、わしの弟子は」
イシュタルの後ろから突然声が話しかけた。
「イワサウラスね。相変わらず神出鬼没だこと」
その視線の先には岩の甲羅を持つ亀型のデビルがいた。
「せっかく古い友人が歌を聴きに訪ねてきたというのに言うことはそれだけか?」
「じゃあ、あたしの歌の感想ぐらい言って欲しいわ」
「相変わらずの美声じゃ。しかし、何でわしの武勇伝を歌わない。歌っているのはおぬしと闇の貴公子の恋歌ばかりじゃ」
「あなたのその姿を知っていて武勇伝なんて歌えないわ。………彼は本当にあの人に似ているわ」
「そりゃ、そうじゃ。闇の貴公子の力を継いだのだから。でもいいのか?彼を引き止めるなりついていくなりしなくても」
「彼はあたしが恋した闇の貴公子ではないわ。彼には彼の仲魔がいる。あたしの出る幕ではないわ」
「彼になら任せられると思うか?」
「アキラならヴァルハラは大丈夫だと思う。一晩といえどもあたしが愛した人ですもの」
「そうじゃのぉ」
「それでもつらいことになると思う。特にあの女神にとって…願わくはいい思い出が残ればいいわね」
暁の明星を見つめながら、彼女は祈った。

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あとがき

DチルL&Dの44話「カードで砂漠を乗り切れ!」のイシュタルと頬が赤くなったアキラを見て、書いた作品です。
イシュタルが闇の貴公子の仲魔だったと勝手に設定付けました。
お姉さまキャラが何も知らない男の子に性の手ほどきというシチュエーションというだけでハァハァ
この後、ランダ、スクルドとアキラの話が続く予定です。

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